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「打放しコンクリートと共に」 その(45)

 今回は「建築保全」1991年7月号、special edition / 外装の補修・改修例「補修・改修の計画から保全まで」の後編(最終回)「2.改修工法の選定」をご紹介します。

2.改修工法の選定
現在の建物のイメージを失うことなく創建当初の性能に戻し改修後の維持保全が長期間期待できること。施工に関しては日常業務への支障がなく,人命の安全性と周辺環境への悪影響がないことが挙げられた。そのほか工法の材料についての諸条件は次のとおりである。
(1)打放しコンクリートに付着した各種の汚損物質を表面を害することなく洗浄または除去可能である。
(2)修整用モルタルは耐久性があり,鉄筋やコンクリートとの付着が良好で一体化し乾湿・温令や材料自体に
有害な変形がない。
(3)仕上塗材は塩分・水やガスなどの腐食要因を遮断する性能を有している。
(4)長期のフリーメンテナンスが期待できること。
(5)意匠性の復元と超耐候性の付与が可能である。
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1)施工の詳細
(1)素地調整:あらかじめ打放しコンクリート全面にサンドペーパーをかけ,次に高圧洗浄機を用い200kg/cm2の圧力水をかけて全面洗浄した。
(2)NY-606コンクリート強化剤の含浸塗布:洗浄後のコンクリートの乾燥確認のうえ,NY-606コンクリート強化剤をローラー刷毛にて含浸塗布した。2回に分けて,第1回目塗布乾燥後2回目を施した。平均塗布量は400g/㎡であった。
(3)鉄筋露出箇所の処理:鉄筋のかぶりが少ない箇所は,鉄筋周囲の斫りを深くし,かぶり厚を確保し調合樹脂モルタルが10mm以上付け送りが出来ることとした。鉄筋の錆は,ワイヤブラシにより除去し,直ちに特殊防錆材を入念に塗布し,NY-調合樹脂モルタルにより2~3回充填塗り込みをした。
(4)クラックの処理:幅0・2mm以上のものはすべてUカットした。クラック幅により,それぞれ深さ10~30mm程度Uカットし,内部清掃後プライマー塗布,ウレタンコーキングを底部に充填した。ウレタンコーキングの表面に硅砂を散布し,NY-調合エラスティックモルタルを充填塗り込みした(DD-エラスティックシス工法)。
(5)NY-調合樹脂モルタル表面修整:表面劣化部および欠損補修箇所を躯体コンクリートの表面に合わせた調合樹脂モルタルにより,表面修整を施した。
(6)打放しコンクリート面の若返り色合わせ,型枠模様の造成NY-調合樹脂を基材とした打放しコンクリート表面色合わせエラスティックフィラー塗材を2回にわたり施し,乾燥養生後,専門職人により特殊刷毛を用いて型枠模様を復元造成した。
(7)表面防水固定処理:超耐候性付与のためトップコートNY-9090アクリルシリコン樹脂系を2回全面塗布した。

2)施工後の保全状態
 施工後1.2か年経過したが,目視による調査結果は,表面の防水塗膜,ひび割れや汚損は認められず,降雨時の表層トップコートは完璧なまでその防水性能を保持している。特にひび割れ補修後に再発することの多いバイパスクラックもなく,ひび割れ補修材の柔軟追従性能が効果を挙げている。過去施工後の追跡調査では最初に欠陥として表れるものがバイパスクラックであることから1.2か年経過した現在新たなひび割れが発生してないことは耐久性付与の観点から充分期待できるものである。
 アクリルシリコン樹脂系NY-9090の超耐久性を支えるNY-エラスティックフィラーは躯体コンクリートの温令乾湿による挙動伸縮に追従する性能を有し信頼性をより高いものとしている。なお吉田工法では10年間の保証制度と経年劣化および保全状況を把握するため11年前より2~3年ごとに追跡調査を実施している。
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 次回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」をご紹介します。

 さて、この年1991年の重大トップニュース(国外編)1月6日、イラクのフセイン大統領がクウェートからの撤退拒否を表明しました。これを受け15日、国連のデクエヤル事務総長がイラクにクウェート撤退を求める声明を発表しましたが、イラクがこれを拒否したため、米軍54万人を中心とする28カ国からなる多国籍軍がイラク攻撃を開始しイラクも徹底抗戦を表明、湾岸戦争に突入しました。2月27日、多国籍軍はイラクのクウェート解放を確認し攻撃停止。そして3月、イラクは安保理による停戦決議を全面受諾し停戦協定が締結されました。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
by pikayoshi72 | 2008-11-17 07:26 | ブログ


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