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「打放しコンクリートと共に」 その(107)

 こんにちはpikayoshi72です。

 今回は、コンクリートテクノ 臨時増刊号 美しいコンクリート2006年9月号「4-②建築物としてコンクリートを創る技術」の第3回、「3.1基本構想」から「3.2補修材料の開発、2)強度等の性状」までをご紹介します。

3.補修・再生に供する材料および工法の開発
3.1基本構想
 打放しコンクリート建築の不具合について実態調査した。その調査結果から、表層面の仕上げにかかわる材料・工法の開発が不可欠であることを述べた。これを受けて、補修・再生に供する材料および工法の開発をすることとした。開発に先立ち、次の①~④の諸点を満たすものとした。
①欠損部、脆弱部の除去後の躯体コンクリート表層面に耐久性向上の強化を図る。
②欠損部、脆弱部の除去後、それぞれの部位に密実で耐久性のあるモルタルを埋め戻す。
③補修面色合わせの後、型枠斑模様を造成し、打放しコンクリート素材としての意匠性の向上を図る。
④トップコートにより諸工程の保護、表層面の汚染防止、防水性能を付与する。
これら一連の構想を図示すれば図-12のようになる。
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3.2補修材料の開発
 前項の構想に基づき、補修・再生に供する材料の開発を①~④の工程別に検討した。結果を以下に示す。
(1)躯体コンクリート表層面の強化
 躯体コンクリート表層面の未中性化部分の水酸化カルシウムおよび中性化部分の炭酸化カルシウムに注目した。すなわち、下記の化学反応式にもとづき、珪フッ化物を主成分とする無機質系浸透剤を塗布含浸することでセメント硬化体の緻密化が図られてコンクリート表層面が強化される。
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 そこで、上記のことを確認するために1)、2)の実験を試みた。
1)セメントペースト硬化体の細孔径分布
 中性化した水セメント比50%のセメントペースと供試体について、塗布含浸前後の細孔径分布を測定した。結果を図-13に示す。塗布含浸前の細孔径容積(図中TPV)83㎟/gが塗布含浸することで78㎟/gに減少している。つまり珪フッ化物を主成分とする無機質浸透剤の塗布含浸により硬化体が緻密化したことが示された。
2)モルタルの強度および中性化
 コンクリート躯体表層面のモルタルを推定した水セメント比60%の供試体について、塗布含浸前後の強度および中性化について実験した。また耐久性の観点から硫酸溶液中浸漬後の強度についても求めた。結果の一部を表-4に示す。
「打放しコンクリートと共に」 その(107)_e0030813_7191353.jpg

塗布含浸により強度の向上、中性化速度係数の低減および耐久性の向上が示された。
 以上1)、2)の実験から珪フッ化物を主成分とする無機質系浸透剤を塗布含浸することで躯体コンクリート表層面の強化が図られることが確認された。
(2)欠損部、脆弱層除去部へ埋め戻しモルタル(充填モルタル)
 欠損部および脆弱層除去部に埋め戻す充填モルタルは、躯体コンクリートとの付着性および耐久性を左右する材料だけに、その性能は高いものでなければならない。そこで、ここでは樹脂モルタルを検討対象とした。すなわち、付着強度・圧縮強度・曲げ強度・中性化・吸水性状・塩分透過性および細孔径分布の6項目の実験から、充填モルタルの性能をとらえることにした。
1)充填モルタルの調合
 充填モルタル(アクリル樹脂系ポリマーディスパ-ジョン使用)の調合を作業性の観点から検討した結果、セメント:珪砂(FM2.69)=1:3、ポリマーセメント比=10%、水セメント比=54%のものが適切であった。
2)強度等の性状
 実験結果を表-5~7、図-14~17に示す。
「打放しコンクリートと共に」 その(107)_e0030813_7195153.jpg

図中および表中には、比較検討のためにプレーンモルタル(セメント:川砂=1:3、水セメント比=54%)についての試験結果も併記した。なお、いずれも気中養生した供試体(4×4×16㎝)である。
 表-5の付着強度試験結果によれば、充填モルタルの付着強度はプレーンモルタルのものより大きく、また、材齢の進行に伴い付着強度が増大していることがわかる。材齢5年ではプレーンモルタルの3倍の強度が得られている。
 図-14によれば、充填モルタルの初期材齢における圧縮・曲げ強度の発現は多少遅いものの、その後材齢3年程度までの強度発見は著しく、プレーンモルタルの強度に比べ大きい。表-6の結果から充填モルタルの中性化深さは0㎜で中性化抑制効果ある。吸水率の経時変化を示した図-15によれば、充填モルタルの吸水率はプレーンモルタルと比較して著しく小さい。
 図-16において、充填モルタルが塩化物の進入に対して抵抗性能がすぐれていることが示されている。以上のように、ここで開発した充填モルタルの有効性は表-7および図-17の細孔分布の測定結果における密実性からも裏付けられた。

 次回は、コンクリートテクノ 臨時増刊号 美しいコンクリート2006年9月号「4-②建築物としてコンクリートを創る技術」の第4回、「(3)表層面の色合わせおよび型枠模様の造成」から「3.4まとめ」をお送りします。
お楽しみに!

 さて、この年の重大ニュース、11月5日、イラク、フセイン元大統領に対しシーア派住民虐殺の「人道に対する罪」で死刑判決が言い渡され、12月30日、サダム・フセイン元大統領(69)の 死刑執行はバグダットで絞首刑とされ、処刑場面の録画が一部テレビで放映されました。

 それでは次回をお楽しみに!
打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
by pikayoshi72 | 2010-01-25 07:22 | ブログ


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