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「打放しコンクリートと共に」 その(101)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は、建築技術2006年6月号特別寄稿「打放しコンクリートのリニューアル」読み切りでお送りします。
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はじめに
 予測される東海地震に備え,平成16年度静岡県庁西館耐震改修工事に合わせて,外壁打放しコンクリートの耐久性・安全性の付与および美観と意匠性の回復を図るため,リニューアルを実施した。ここに,その事例を紹介する。建物の概要は次のとおりである。

劣化現象
 本建物は築後31年経過,外壁打放しコンクリート表層面は紫外線,酸性雨,炭酸ガス,温湿度変化などの自然現象や大気中に拡散された各種の化学物質に加え,挙動・震動に起因した劣化外力を受け,中性化をはじめとしてひび割れや鉄筋腐食など表層面を著しく汚損摩耗した状況を呈していた。同時に美観と意匠性の喪失に留まらず,躯体の損傷にまで及びコンクリート片の剥落など安全性が脅かされるまでに至った。

劣化現象に対する調査
 県では東海地震に備えて,耐震化工事と併せて経年劣化した外壁打放しコンクリートのリニューアルを計画した。本計画の実施に先立ち,外壁全面にわたり外観目視法に基づき調査した。
 調査項目は,ひび割れ・亀甲状ひび割れ・コールドジョイント・鉄筋の露出・モルタルの浮き・欠損・ジャンカ・Pコン跡・木屑の9項目とした。調査結果に基づいて,発生原因の推定および劣化状況の調査結果を項目別に整理集計し,劣化損傷箇所を図面上に記録した。これらを纏めて,調査結果報告書を作成した。調査結果の一部東面外壁の劣化損傷箇所を図1に示す。
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改修システム
 本改修工事に適応した打放しコンクリート若返りシステム(吉田工法)のフローチャートを図2に示す。
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 工事はフローチャートに示された工程に従い施工した。最初に打放しコンクリート表層面の高圧洗浄,表面強化処理,欠損部のはつり露出鉄筋の防錆処理など躯体の補修強化を施し,表層面の復元,美観の回復後にトップコートには耐久性の高いアクリルシリコン樹脂を塗布した。これらの7工程のうち,主要ポイントは次の2工程である。中性化したポーラスな表層面に,表面強化処理剤の含浸塗布である。珪フッ化物を主成分とした浸透性水溶液で塗布することによって,中性化したコンクリート中に含まれる炭酸カルシウムと反応し,不溶性のフッ化カルシウムが生成される。花崗岩のように結晶化しコンクリートの空隙が充填密実となり,躯体コンクリートの強度と防水性が付与向上される。次は工程4に示された生地調整である。劣化損傷したコンクリート表層面は汚染物の浸透と付着などにより黒ずみ,本来のコンクリートの色相は喪失している。このようなコンクリートの色相を回復させる生地調整工程は,コンクリート表層面の健全化と美観の回復に寄与し,甦らせる重要な工程である。

 おわりに
 本工事に供した打放しコンクリート若返りシステムは,1975年に開発され幾多の改良を加え今日に至っている。遡ること1989年,静岡県庁舎東館(地下1階・地上18階・12,100㎡)は,このシステムで施工した。以降17年経過したが劣化現象は見られず,打放しコンクリート表層面の維持保全状況は良好でメンテナンスフリーである。本工法による施工は500物件余を数え,45万㎡に及ぶ実績を有している。
 なお当社は,ISO9001(品質マネジメントシステム)とISO14001(環境マネジメントシステム),並びにOHSAS18001(労働安全衛生マネジメントシステム)の三つを統合したマネジメントシステムに基づき施工を実施している。
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 次回は、月刊建築仕上技術2006年7月号、特集:外壁汚れ防止・除去技術の最新動向「打放しコンクリート・光触媒仕上げシステムについて」を、お送りします。

 さて、この年の重大ニュース、9月26日、小泉内閣が総辞職し、阿部内閣が発足。組閣は[総理]安倍晋三、[総務]菅義偉、[法務]長勢甚遠、[外務]麻生太郎(再任)、[財務]尾身幸次、[文部科学]伊吹文明、[厚生労働]柳沢伯夫、[農林水産]松岡利勝 (後に自殺)、[経済産業]甘利明、[国土交通]冬柴鉄三(公明)、[防衛]久間章生(後に辞任)、[規制改革・行革]佐田玄一郎(後に辞任)。

 それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
by pikayoshi72 | 2009-12-14 07:20 | ブログ


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