こんにちはpikayoshi72です。
今回は、光アライアンス2003年10月号、特集:光触媒の応用「打放しコンクリート光触媒仕上システム」を2回に分けご紹介します。 本日は最終回「3.打放しコンクリート光触媒仕上げシステムとは」、「4.おわりに」をご紹介します。 3.打放しコンクリート光触媒仕上げシステムとは 光触媒には、打放しコンクリートに不可欠な防水機能はなく、しかも防水材として多く採用されている高耐久性フッ素樹脂やその他有機質防水材に光触媒を塗工した場合、紫外線エネルギーにより励起した酸化チタンはその強い酸化力でフッ素樹脂などの有機質防水材を分解し、防水機能を喪失させる。この様な有機質防水材を保護し、光触媒の機能を付与する技術と浸透型無機質防水材をベースとした光触媒仕上げシステムで構成される。何れも打放しコンクリート仕上げの質感を保持しつつ防水性、防汚性にセルフクリーニング機能を具備した工法である。 3-1.光触媒仕上げシステムの3タイプ 打放しコンクリート光触媒仕上げシステムには、STEP1・STEP2と無機質防水材からなるNY-バリアコートとの組み合わせの3タイプがある。各々を組み合わせることにより、コンクリート表層面に強固な防水層を形成する。NY-バリアコートを除き、STEP1・STEP2の工程に無機バインダーをコーティングし各々にトップコートの光触媒を塗工する。この積層工程によって、防水性・防汚性・セルフクリーニング機能が付与される。 3-2.NY-バリアコートの特長と性状 NY-バリアコートは粘度と表面張力が水より小さいためコンクリートに深く浸透し、コンクリートの遊離石灰、シリカ質と反応して、内部の空隙を疎水性無機質結晶で充填し緻密化する。緻密化した疎水層は雨水の浸透を防ぎコンクリートに強固な無機質防水層を形成する。 NY-バリアコートの性状を表-1に示す。 3-3.光触媒仕上げシステムの基本原理とセルフクリーニング機能 光触媒仕上げシステムの基本原理とセルフクリーニング機能を図-4に示す。 3-4.打放しコンクリートに於ける光触媒の機能と応用 光触媒の塗布面に紫外線が当ると光触媒反応が起き酸化力により塗布面に接触する有機物を分解する。例えば有機物としてカビ、細菌、藻、ウイルス、油脂、車の排気ガス、タバコの煙とヤニ、VOC、悪臭(アンモニア)などである。 光触媒反応は酸化チタンを消費しないので反応による酸化力は減退しない。したがって、反応は半永久的に継続し酸化力による浄化機能も持続することになる。 光触媒のコーティングの膜厚はせいぜい1μm程度であり、塗膜に接触しているカーボン、油煙、細菌類真菌類などは光触媒による分解であるため、薄膜であってもその機能を十分発揮することができる。 一般的に都市部での建築外壁面の汚れは、油脂分とともにカーボンなどが付着した汚れが多く、光触媒によりこの油脂分が分解されて汚れ成分の付着力が弱められ、雨により洗い流される。また、光触媒の二酸化チタン薄膜中には銀や銅も存在している。したがって、光触媒の働きだけでなく銀イオンや銅イオンによる殺菌・抗菌作用も利用されている。そのため、光が照射されない場合でも殺菌・抗菌作用が期待できるとされている。 新築又は経年劣化した打放しコンクリート仕上げに於いてSTEP1及びSTEP2を施した後、無機系材料によるバリア層を設ける。すなわち、STEP1・STEP2の仕上げ防水材は有機系塗膜であるため、直接光触媒を表面に塗布すると防水塗膜が光触媒の作用を受けて分解されてしまう。したがって、無機系材料による保護塗膜(バリア層)を設け、光触媒を塗工仕上げとする。 3-5.光触媒の性状 打放しコンクリート表層面に施した光触媒とフッ素樹脂系の親水性の比較を写真-3に示す。光触媒は表層面に馴染んでいるが、フッ素樹脂は水玉となっている。 光触媒表層面に太陽光が照射されることによって、表面に水酸基が発生し親水性となる。水の接触角は10~30°と極端に小さくなり、水玉にならない〔図-5〕。 この水が光触媒の作用で分解された汚染物の間に流れ込み、セルフクリーニング機能が生じ付着した汚染物が流れ落ちる。この光触媒反応は酸化チタンを消費しないため、反応によって酸化力は減退しない。すなわち、半永久的に酸化力による浄化機能は維持される。 3-6.打放しコンクリート光触媒仕上げシステムのフローチャート 打放しコンクリート光触媒仕上げシステムのフローチャートを図-6に示す。 1)打放しコンクリート仕上げシステムSTEP1・2の工程完了後、無機バインダーを塗工する。NY-バリアコートは表層面不具合を修整消去して後、塗工する。NY-バリアコートは防水層を形成し、且つ無機バインダー機能を果たす。 2)無機バインダー及びNY-バリアコートの乾燥確認の上、光触媒を20~50g/㎡を吹付塗工する。 4.おわりに 長年の課題であった打放しコンクリートの高耐久性付与は、STEP1・STEP2によりほぼ解消したといえよう。しかし、深刻化する都市部の環境悪化に伴う汚れの付着は必然的な事象として、避けて通ることが出来ないものとされていた。特に打放しコンクリート表層面の著しい汚れは資産価値を減少させるため、美観と資産価値を維持するために定期的なクリーニングが必要でそのコスト負担は大きなものであった。 本システムを構成する光触媒によって、汚染物の分解作用と親水性によるセルフクリーニング機能は、打放しコンクリート建築に対してその果たす役割は計り知れないものがある。今日まで打放しコンクリートの宿命とした汚染物の付着が、光触媒の実用化によって、美観の維持だけでなく打放しコンクリート建築の資産価値と周辺環境の向上に寄与する点からも画期的なことといえるではなかろうか。 次回は、防水ジャーナル2004年10月号きれいな外壁仕上げの方法と題して、(RC造・事務所の場合) 「打放しコンクリート外壁における光触媒仕上げ」お送りします。 さて、この年の重大ニュース、11月29日、情報収集衛星2機を載せたH2Aロケツト6号機が補助ロケットを分離できずに軌道をそれたため、地上からの破壊信号で爆破され、12月9日には1998年の打ち上げ後、エンジンや電源系の故障が続いた日本初の惑星探査機「のぞみ」の火星周回軌道投入が断念された。宇宙開発に一体いくら費やしたんでしょうか! それでは次回をお楽しみに! 打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ! #
by pikayoshi72
| 2009-10-19 07:00
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こんにちはpikayoshi72です。
今回は、光アライアンス2003年10月号、特集:光触媒の応用「打放しコンクリート光触媒仕上システム」を2回に分けご紹介します。 本日は第1回「1.開発の背景」「2.システムの概要」をご紹介します。 1.開発の背景 打放しコンクリートは、国内外の著名な建築家により歴史的な建造物に多く採用されてきた。その背景はコンクリートが持つ素材としての重厚感と簡素な造形の美しさが卓越していることにある。 こうした素朴な仕上げにも拘わらず打放しコンクリート建築の施工においては、やり直しのきかない一発勝負で、建設にあたり万全の施工管理と、細心の注意を払ってしても、不具合の発生は避けられないことにある。 とりわけ表層面は仕上げ面であるため不具合の発生は、打放しコンクリートの生命である表層面の意匠性を損ない、 しかもそれらに起因した汚れの発生と耐久性の低下が指摘されている。このような観点から打放しコンクリート表層面は、意匠性や耐久性に関わる極めて重要な部位といえる。 現状においては不具合に対応した補修、経年劣化に適応した再生技術など、幾つか方法はみられているが、不具合が発生した後にそれらの部分のみの補修を行うなど、確立した技術とは言い難いのが現状である。しかも最近の環境汚染による打放しコンクリート表層面の汚れの付着は著しく、竣工後数年で意匠性まで阻害する例など美観の維持保全上大きな問題として提起されている。 このようなことを背景に、新築時脱型直後の表層面に生じた不具合と劣化外力を直接受け、劣化進行の起点となる汚染物の付着に注目し、避けて通ることの出来ない打放しコンクリート表層面の不具合と経年劣化に対応した補修・再生の技術・工法を開発した。次いで、それらの結果を踏まえて打放しコンクリート表層面の汚染防止を目的に意匠性、耐久性の観点からの汚染防止システムを検討し、打放しコンクリート建物の汚染防止に対応させた光触媒仕上げシステムを具現化した。 新築打放しコンクリート建築に不可欠な不具合対応工法及び経年劣化により発生した不具合に対し、これらの補修・再生後に施す汚染防止工法が、今回紹介する打放しコンクリート光触媒仕上げシステムである。 脱型直後より一貫した打放しコンクリート補修・再生工法に光触媒をドッキングしたもので、打放しコンクリートに要求される恒久的な美観の維持が目的とされる。汚染防止機能付与による美観の確保は維持保全上に於いて画期的なもので、美観保持を期するフリーメンテナンスの具現化は、打放しコンクリート建築に求められていた至要課題に対し革新的な付加技術として期待されるものである。 2.システムの概要 打放しコンクリートは、躯体そのものが仕上げのため、他の建築施工の作法とは大きく異なる。つまり、型枠に打設されたコンクリートそのものが仕上げとなり、一般建築に施される脱型してから表層面を装飾し仕上げとする工法とは一線を画する。すなわち、手を加えない表層面にその特異性と施工上の難しさがある。 打放しコンクリート光触媒仕上げシスムに不可欠な補修・再生工法の流れは次のようである。打放しコンクリート建物のライフサイクルを設計・施工・維持保全に大別し、それに対応すべき表層面の仕上げシステムの概要を図−1に示す。 図中に示されるように、施工中から竣工までに施されるべき仕上げをSTEP1、築後の経年・改修期に施すべき仕上げをSTEP2と呼ぶこととして分類している。以下、それらについて述べる。 2−1.STEP1 フローチャートを図−2に示す。 ここで意図した仕上げ技術は、脱型時点の不具合の補修から耐久性向上のための表層面仕上げまで一貫性を持たせ、設計施工段階で予測不可能な表層面の事象やジャンカ、コールドジョイント、色ムラなどの不具合写真1−6の発生に対しても合理的に対応処置するものである。 図中には、主な使用材料と作業内容を併記している。 特に不具合部の処理においては、不具合部を健全部に合わせて修復する。すなわち、打放しコンクリート表層面に点在した不具合に対して、その各々に不具合箇所周辺の生地色に適合する材料を供し、不具合箇所の痕跡を残さない材料・工法により健全化し、打放しコンクリートの表層面と違和感のない美観を確保するものである。 最終工程での表層面仕上げでは、耐候性防水材の塗布による表層面の長期的維持と耐久性の向上を狙いとして施される。 2−2.STEP2 フローチャートを図−3に示す。 築後の経年劣化写真7−10の程度に応じて分別している。 すなわち、劣化が軽度の場合には、汚染物の除去を主とした素地調整の上で表層面仕上げを施し耐久性を付与する。これに対して、中度・重度の場合には珪フッ化物を主成分とした強化剤をコンクートに塗布含浸して表層面の強化を図り、次いで劣化部を充填材により処理する。重度の場合は、さらに中性化抑制材を塗布したのちに、型枠模様を復元し、長期的維持と耐久性の向上の観点から最終工程での表層面仕上げを施す。 以上、打放しコンクリートの誕生からリニューアルに至る過程で表層面に生じる各種の不具合に対し、STEP1及びSTEP2による対応技術について報告した。これらの技術・工法の共通点は、不具合ヶ所を違和感のない補修とし躯体と一本化させることにある。 素材感が生命である打放しコンクリートは補修・再生によって質感を損ない、設計意図が喪失する様なものであってはならない。STEP1・STEP2によって、打放しコンクリートに拘わる保護・再生の技術的問題点は解消し得るといえるが、深刻化する環境問題は打放しコンクリートの美観の維持に新たな課題として提起されている。 すなわち、築後間もなく発生する汚れの付着である。表層面が意匠である打放しコンクリートは、汚れの付着によって素材の生命である意匠性が阻害され美観の喪失を招き資産価値の低下に繋がる。 特に都市部での打放しコンクリートの外周壁の汚れは、油脂分とともにカーボンなどが付着したものが多く、その汚れは加速度的に拡大することにある。 この様な事象に対応した新技術・工法として、「打放しコンクリート光触媒仕上げシステム」が挙げられる。打放しコンクリート表層面の汚れに対し自浄作用を付与したセルフクリーニング機能を有したフリーメンテナンスの新工法である。 次回は、光アライアンス2003年10月号、特集:光触媒の応用「打放しコンクリート光触媒仕上システム」の最終回「3.打放しコンクリート光触媒仕上げシステムとは」、「4.おわりに」をお送りします。 さて、この年の重大ニュース、10月25日、開発費725億円もかけ打ち上げた環境観測技術衛星「みどり2号」が、電源系統の故障から音信不通に陥り、打ち上げからわずか10ヵ月で運用断念に追い込まれてしまいました。何という無駄遣い! それでは次回をお楽しみに! 打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ! #
by pikayoshi72
| 2009-10-12 07:07
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こんにちはpikayoshi72です。
今回はを月刊建築技術2003年8月号テクニカルビュー「セルフクリーニング機能を持った外断熱打放しALC外壁」を読み切りでご紹介します。 ■セルフクリーニング機能を持った外断熱打放しALC外壁 ニチエー吉田は、ALCパネルの外壁の打放しコンクリートフェイス仕上げに特殊な外断熱モルタルを用いた外断熱・防水・セルフクリーニング機能を備えた新工法、「ALC打放しフェイス外断熱仕上げシステム」を開発した。 同工法は、ALCパネルに熱伝導率の小さい同社の「NY-外断熱モルタル」を重ね、さらに付着した汚れを降雨で除去する作用を持つ「NY-セラクリーン」を重ねたものである。 ■外断熱とセルフクリーニング機能を兼ね備える 同工法の外断熱・セルフクリーニング仕上げは、ALCパネルにNY-8090シーラー、NY-外断熱モルタル、NY-Eフィラー、型枠模様、NY-9090(防水)、NY-セラクリーン塗膜を施したものである。これにより従来の内断熱ではALC外壁が外気に直接さらされているため、外壁が外気温に同調することで結露が発生し、カビが生えやすいなどの問題があったが、外断熱とすることでこれを防止することが可能になった。また、外壁表面に仕上げを施すので、一般にポーラスナ打放しALCの表面を密実なものとすることができ、高い耐久性と防水性能の向上を持つものとしている。 セルフクリーニング効果は、メチルシリケードを特殊な加工で加水分解した無機コーティング材で、塗布すると常温で無色透明の親水性薄膜を形成し、付着した汚れを降雨で除去するNY-セラクリーンによるものである。同剤を一番外側のトップコートとして施すと親水性の薄膜となり、水との接触角が小さくなるので水が表面に広がりやすくなる。これにより雨水による汚れの除去が可能となる。 同様にセルフクリーニング効果を発揮する光触媒は、有機材料に直接塗布ができず、また汚れを除去するために水(雨)のほか、紫外線(日光)照射が必要となるのに比較して、同剤は、有機材料に塗布が可能かつ日光に関係なく水のみで効果を発揮するので方位に関係なく使用できるといった長所がある。 次回は、光アライアンス2003年10月号、特集:光触媒の応用「打放しコンクリート光触媒仕上システム」をお送りします。 さてこの年、11月29日、イラク北部を車で移動していた在英大使館参事官、在イラク大使館3等書記官が襲撃、殺害された。日本人外交官2人がCPA(連合暫定施設当局)に出向し占領行政の一翼を担っていたという事実はほとんど報道されていませんでした。 それでは次回をお楽しみに! 打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ! #
by pikayoshi72
| 2009-10-05 07:20
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こんにちはpikayoshi72です。
今回は月間建築仕上技術2003年7月号特集:打放しコンクリートの仕上工法最新動向を4回に分けご紹介します。本日はその最終回「6.打放しコンクリート光触媒仕上げシステム」、「7.おわりに」をご紹介します。 6.打放しコンクリート光触媒仕上げシステム 光触媒には、打放しコンクリートに不可欠な防水性はなく、しかも防水材として多く採用されている超耐久性フッ素樹脂やその他有機質防水材に光触媒を塗工した場合、紫外線エネルギーにより励起した酸化チタンはその強い酸化力でフッ素樹脂などの有機質防水材を分解し、防水機能を喪失させてしまう。そこで打放しコンクリート仕上げの質感を保持しつつ防水性、防汚性にセルフクリーニング機能を付与した工法が打放しコンクリート光触媒仕上げシステムである。 本システムは、打放しコンクリートの保護・再生システム(STEP1・STEP2)と組み合わせることにより、防水性、防汚性、高耐久性プラス、セルフクリーニング機能を具備したもので、打放しコンクリートの最新仕上げ技術である。トップコートにコーティングされた光触媒に紫外線が当たることによって活性酸素が形成され、その分解力と降雨によって表層面に付着した汚れを洗い流し除去する。この汚染物の分解とセルフクリーニング機能を有した光触媒を積層した新仕上げシステムである。 6-1 光触媒仕上げシステムの3タイプ 打放しコンクリート光触媒仕上げシステムには、STEP-1・STEP-2と無機質防水材からなるNY-バリアコートとの組み合わせの3タイプがある。各々を組み合わせることにより、コンクリートの表層面に強固な防水層を形成する。NY-バリアコートを除き、STEP1・2に無機質バインダーをコーティングし各々トップコートに光触媒を塗工する。この積層工程により、防水性・防汚性・セルフクリーニング機能が付与される(写真9)。 6-2 光触媒仕上げシステムの基本原理 光触媒仕上げシステムの基本原理を図8に示す。 6-3 NY-バリアコートの特長と性状 NY-バリアコートは粘度と表面張力が水より小さいためコンクリートに深く浸透し、コンクリートの遊離石灰、シリカ質と反応して、内部の空隙を疎水性無機質結晶で充填し緻密化する。 緻密化した疎水層は雨水の浸透を防ぎコンクリートに強固な無機質防水層を形成する。 NY-バリアコートの性状を表1に示す。 6-4 光触媒の性状 打放しコンクリート表層面に施した光触媒とフッ素樹脂系の親水性の比較を写真10に示す。光触媒は表層面に馴染んでいるが、フッ素樹脂は水玉となっている。 光触媒表層面に太陽光が照射されることによって、表面に水酸基が発生し親水性となる。水之接触角は10~30°と極端に小さくなり、水玉にはならない(図9)。 この水が光触媒の作用で分解された汚染物の間に流れ込み、セルフクリーニング機能によって付着した汚染物が流れ落ちる。この光触媒反応は酸化チタンを消費しないため、反応によって酸化力は減退しない。即ち半永久的に酸化力による浄化機能は維持される。 6-5 打放しコンクリート光触媒仕上げシステムのフローチャート 打放しコンクリート光触媒仕上げシステムのフローチャートを図10に示す。 1)打放しコンクリート仕上げシステムSTEP-1・STEP-2の工程完了後、無機バインダーを塗工する。NY-バリアコートは防水層を形成し、且つ無機質バインダー機能を果たす。 2)無機バインダー及びNY-バリアコートの乾燥確認の上、光触媒を20~50g/㎡を吹付塗工する。 7.おわりに 長年の課題であった打放しコンクリートの高耐久性付与は、STEP-1・2によりほぼ解消したといえよう。しかし、深刻化する都市部の環境悪化に伴う汚れは必然的な事象として、避けて通ることが出来ないものとされてきた。特に打放しコンクリート表層面の著しい汚れは資産価値を減少させるため、美観と資産価値を維持するためには、定期的なクリーニングが必要である。 光触媒によって生ずる自浄作用の防汚性、セルフクリーニング機能は、その果たす役割は計り知れないものがある。今日まで打放しコンクリートの宿命とした汚染物の付着が、光触媒の実用化によって、美観の維持だけでなく建物の資産価値の観点からも、画期的なことといえるのではなかろうか。 次回は月刊建築技術2003年8月号テクニカルビュー「セルフクリーニング機能を持った外断熱打放しALC外壁」を読み切りで、お送りします。 さてこの年、最後の重大ニュースは、2月1日、米スペースシャトル・コロンビア号が大気圏再突入時に空中分解、搭乗員7人全員が亡くなりました。NASAは8日コロンビア号空中分解の原因をシャトル左翼の断熱材損傷が直接原因と、最終報告をしていました。 それでは次回をお楽しみに! 打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ! #
by pikayoshi72
| 2009-09-28 07:26
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こんにちはpikayoshi72です。
今回は月間建築仕上技術2003年7月号特集:打放しコンクリートの仕上工法最新動向を4回に分けご紹介します。本日は第3回「4.経年劣化対応 打放しコンクリート仕上げシステム・STEP−2」、「5.打放しコンクリート若返りシステムの工程」をご紹介します。 4.経年劣化対応 打放しコンクリート仕上げシステム・STEP−2 打放しコンクリートの表層面は、脱型直後から日射・酸性雨・海塩粒子・温湿度変化等の自然現象とその他化学物質などの化学的作用や挙動・振動に起因した物理的作用を受け、これらに起因して、ひび割れ・中性化・鉄筋腐食や凍害などコンクリート表層面より躯体へと著しく劣化汚損し、意匠性の喪失と躯体の損傷にまで至る(写真5〜8)。 この様な打放しコンクリートの劣化損傷にはSTEP−2で対応する。 4−1 調査診断と選定 竣工後の初期点検(2年以内)及び定期点検(10年以内の周期で実施)によって、経年期における劣化損傷状況の調査診断をし、その結果に基づき再生システムの選定をする。 4−2 調査診断 調査方法は、外観目視法により調査項目は、ひび割れ・露出鉄筋やジャンカなど9項目とする。調査結果に基づいた原因の推定と劣化項目に従い集計表に詳細記録する。 調査項目は下記の通りである。 ひび割れ(0.5㎜未満及び0.5㎜以上)・露出鉄筋・コールドジョイント・ジャンカ・モルタル補修跡・モルタル浮き・木コン跡・欠損 4−3 STEP−2を構成する再生システム 経年劣化した打放しコンクリートの再生技術としてSTEP−2を提案、調査診断結果に基づく劣化度に対応した再生システムを選定する。適用再生システムの概要は次の通りである(図3)。 1)打放しコンクリートFMシステム(劣化度・中度) 打放しコンクリートの表層面が中度の劣化状態で、表層面を活かしつつコンクリート強化剤を含浸塗布することによりコンクリートを内面より強化し、劣化部に対しては、限定消去法で対応し更にトップコート塗膜型に防水材を塗布する。 2)打放しコンクリート若返りシステム(劣化度・重度) 築後15〜30年余りで劣化損傷が重度と診断されたもので、劣化した打放しコンクリートを内外面から補修・再生する。露出鉄筋の防錆処理を始めとする本格的な補修・修整を施し、元設計の型枠模様を復元甦らせ更に高耐久性防水材を塗布する。 5.打放しコンクリート若返りシステムの工程 劣化度に準じた打放しコンクリート再生システム、STEP−2のうちFMシステム及び若返りシステムについてフローチャートに基づき工程の詳細を示す。なお、劣化度・軽度については、劣化損傷がFMシステムに比較し、軽微であることの外、工程は同一であるため割愛する。 5−1 素地調整 (1)コンクリートの表層面を高圧水で洗浄し、汚れやほこり等を除去。 (2)空隙を伴う砂利・アバタは叩き落とす。 (3)表層面に付着した鉄筋の錆及び染みは、ケミカルエースR(当社製)を用い洗浄。 5−2 NY−606表面強化処理剤の塗布 刷毛・ローラーを用いて、1㎡当たり200gのNY−606を含浸塗布する。 NY−606は各種特殊添加剤を加えた珪弗化物を主成分とする浸透性の水溶液で、中性化したコンクリート中に含まれる炭酸カルシウムと反応し、不溶性の弗化カルシウムが生成される反応型無機質系コンクリート強化剤である。 NY−606を含浸塗布することにより、不溶性の弗化カルシウムが固着され花崗岩質のように結晶化し、コンクリート空隙を充填して強度・防水性が向上する。また、酸に対する抵抗性が向上し表面症状が改善されコンクリート自体の耐久性が付与される(図4)。 2CaCO3+MgSiF6=2CaF2+MgF2+SiO2+2CO2 5−3 欠損部の処理 各種劣化欠損部に対する処理方法を以下に示す(図5)。 5−3−1 露出鉄筋部 (1)腐食している鉄筋の周囲を入念に斫り取る。 (2)錆化鉄筋は、ワイヤーブラシ・電動ケレン機等を使用し、錆を除去する。 (3)錆化鉄筋にNY−特殊防錆材を塗布。 (4)NY−7000プライマーを下地部分に塗布する。 (5)斫りの深さにより1〜3回に分け、NY−調合樹脂モルタルを塗り付ける。コンクリートの表層面(仕上面)より1〜2㎜程度下げる。 5−3−2 ひび割れ部(コールドジョイント含む) (1)ひび割れに沿って幅12㎜程度、深さ15㎜程度にU字型の溝を設ける。 (2)Uカット溝部に付着している斫り片、粉塵を刷毛で除去。 (3)Uカット溝底部にウレタンプライマーを塗布。 (4)プライマー塗布後、ウレタンコーキングを充填。Uカット溝底部から5㎜厚とし、充填後はヘラで押さえ下地と密着させて表層面は平滑に仕上げる。 (5)NY−エラスティックフィラーを塗布する。 (6)NY−エラスティックモルタルを充填する。(注:0.2㎜以下のひび割れは、NY−エラスティックモルタルによるシゴキ充填) 5−3−3 既存補修モルタル部 (1)浮きヶ所の既存モルタルは除去する。 (2)刷毛・ブラシ等で汚れ・ほこり等を除去する。 (3)NY−7000プライマーを下地部分に塗布する。 (4)斫りの深さにより1〜3回に分け、NY−調合樹脂モルタルを充填(図6)。 表層面から1〜2㎜程度下げる。 5−4 修整用NY−調合樹脂モルタルのコテ塗り 欠損部を処理した箇所の周辺部との色違いがあるため、修整用NY−調合樹脂モルタルをコテ塗りしコンクリート表層面(仕上面)に準じて平滑に仕上げる。 5−5 素地全面生地調整 (1)表層面の色相調整をする。NY−調合樹脂生地調整材(NY−7000)〔特殊アクリル樹脂系:カラーコート:浸透剤:特殊添加剤〕 (2)ひび割れに追従するNY−調合樹脂生地調整材(NY−8000)〔特殊アクリル樹脂系:カラーコート:浸透剤:特殊添加剤〕の塗布。 5−6 型枠模様復元 カラーコート〔特殊灰汁:浸透剤:添加剤〕及び型枠模様造成具により復元する。 5−7 トップコート 浸水抵抗の高い緻密な皮膜を形成、高耐久性を付与するトップコートNY−8090(9090)を塗布する(図7)。 以上、打放しコンクリートの誕生からリニューアルに至る過程で表層面に生じる現象に対し、STEP−1及びSTEP−2の対応技術について報告した。 素材感が生命である打放しコンクリートは補修・再生によって質感を損ない、設計意図が活かされない様なものであってはならない。STEP1・2によって、打放しコンクリートに拘わる保護・再生の技術的問題点は解消し得るといえるが、最近の環境問題は打放しコンクリートに新たな課題を提示している。 その顕著なものに築後間もなく発生する汚れがある。表層面が意匠である打放しコンクリートは、汚れによって素材の生命である意匠性が阻害されて美観を低下させる。 特に都市部での打放しコンクリートの外周壁の汚れは、油脂分とともにカーボンなどが付着したものが多く、その汚れは加速度的に拡大することである。 この様な事象に対応した技術として、「打放しコンクリート光触媒仕上げ」が上市された。打放しコンクリート表層面の汚れに自浄作用を付与したセルフクリーニング機能を有した新工法である。 次回は月間建築仕上技術2003年7月号特集:打放しコンクリートの仕上工法最新動向の最終回「6.打放しコンクリート光触媒仕上げシステム」、「7.おわりに」をお送りします。 さてこの年の重大ニュースは、10月1日、東海道新幹線品川駅が開業、東京・六本木に六本木ヒルズが開業されました。そして12月1日、地上デジタルテレビジョン放送が東京、大阪、名古屋で放送開始されました。 それでは次回をお楽しみに! 打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ! #
by pikayoshi72
| 2009-09-21 07:49
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