第二十四話 コンクリートこぼれ話 「まとめ」

 60年前の日本。
ある廃墟と化した市街地の展望、その実態は、まのあたりに見た人でなければ理解出来ない殺風景でした。
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復興の槌音と共に姿を現した鉄筋コンクリート建築、未来永劫その偉容は変えることなく続くと信じられ、誰もがそんな思いを胸に抱いていたと思います。
 ところが戦後復興のかけ声と共に未だ嘗て体験したことのない公害の出現、成長経済の影にかくれて、その被害は自然環境を脅かし、生活環境にまで拡大。
時同じくしてコンクリート建築にもその病魔は静かに浸透していきました。
公害のない良好な生活環境の確保に国をあげて取り組むなど、数々の被害をもたらした公害は大きな社会問題となりました。
 こんな社会の生活環境に遅れること10年余り、コンクリート建築に想像すらしたことがない公害に端を発した劣化因子の顕在化、そうです!コンクリート破壊への序曲です。
徐々に拡大する劣化損傷の表面化、かのコンクリート神話は崩れコンクリート老化(劣化)の始まりといわれ注目される様になりました。
その病魔は酸性雨に始まり中性化、塩害、アルカリ骨材反応そしてカビ。
これらは生活環境に同居して浸食するなど、互いの劣化損傷に寄する因子と手を組み、コンクリートの内外を加速度的に損傷を与えてきました。
この公害、発展途上国では過去の日本とほぼ似た様な被害をもたらせ、環境破壊へと動きを加速させています。
コンクリートの汚れや老化(劣化)現象は環境悪化のバロメータといえますね。

 傷み病んだコンクリートは、羅病した人間と同じ、軽微なうちに手当をして回復させることが一番、そして再発しない様に傷口は手当して、再発防止の保全処置が大事。
 こうした色々な老化(劣化)現象を見ていくと、健全強固なコンクリートも人間と似た生命が宿っていると思えますね。暖かく見守ってあげることかなぁ。
来年は打放しコンクリートの生涯と歴史にまつわるお話でスタート。
この半年ありがとうございました。
よいお年をお迎え下さい。
ご多幸をお祈り申し上げます。
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# by pikayoshi72 | 2005-12-26 07:34 | ブログ

第二十三話 打放しコンクリートの老化について“あれこれ” 「カビ」

 緑におおわれた快適空間、新鮮な空気を胸一杯吸って身も心も洗う朝の散歩、静かに佇む打放しコンクリート造りの美術館、かもしだす雰囲気は自然との同化。
【打放しコンクリートだけが醸し出す佇まい】と、いえます。
ところがこの見事に自然環境にマッチした打放しコンクリート、日射の少ない北面の外壁は、劣化を呼び起こす藻類の付着と黒ずんだ荒れた肌。
南面とは打って変わった北面は陰湿で不快の様相そのものです。
この藻類、塵やほこりがコンクリート表面に付着し、それに藻類の胞子がくっついて雨水や排ガスなどから栄養分を吸収、藻類に適した環境化で増殖するそうです。
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最初緑色の藻類は乾燥すると黒色化して死んでしまいその黒色化した死骸はカビの栄養源となります。
 カビの繁殖は酸素、水分(湿潤状態)と適温(15℃~27℃)に恵まれて増殖していくといわれています。
このカビの本名は眞菌(シンキン)といいます。日頃聞くことのない名前ですね。
コンクリートにとってカビは美観を阻害し、健全なコンクリート表面を斑な黒色で汚染し建物としての価値を著しく落としてしまいます。
 藻類の付着からカビへ、こうした打放しコンクリート表面の汚れはなるべく早く処置することが大事です。
何故かといいますと、コンクリートの中性化が始まるからです。前にもお話ししましたが、中性化はコンクリートにあっては万病の基となるからです。
カビの防衛策はあるか、ということになりますね。
心配はいりません。
打放しコンクリート表面から水分、雨水の浸入を防ぐための防水処理をすればOKです。
 何んだ!簡単じゃあないかとなりますが、この防水、種類が多く、しかも各々耐久性が異なっていて
早いものでは半年位で防水効果がなくなってしまうのもあります。
諦めることはありません、10年以上もつものもありますから。
但し、予算と睨めっこして選択することです。
勿論カビが付着拡大した後でも、回復対策はありますからご心配なく。

 次回は今までのまとめとします。
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# by pikayoshi72 | 2005-12-19 07:39 | ブログ

第二十二話 打放しコンクリートの老化について“あれこれ” 「凍害」

 寒冷地特有の凍害、そのコンクリートの劣化症状にひび割れやそれに付随して起こす剥落・崩壊など知られていますね。
但し、温暖地ではデスクワークのレベルかなあ。
打放しコンクリートの外壁に亀甲状(亀の甲の模様)のひび割れを見たことがありますね。
それから庇、軒先、ベランダやパラペットの鼻先に現れた長手方向のひび割れ、これが原因でコンクリートの表面を浮かせてしまったり、それから白いはな垂れを起こしたりして見苦しいものにしてしまう困りもの。
この凍害、凍結したり溶けたりの繰り返しが多い程劣化症状が進行するんだそうです。
そこでよく知られている凍害の原因をお話します。

 前回にもお話したと思いますが、コンクリートは吸水性があること、つまり、コンクリートに内在する毛細管、“コンクリートは呼吸しています”と聞いたことありません?
生コンクリートが乾燥固化することにより練り混ぜた水が外部へ蒸発したあとに生じた現象、空気や水分の流通毛細管と言えるかなあ。
その毛細管に浸透した雨水(水分)が、温度低下によって氷に変わる時、体積膨張(水が氷になると体積が増える)によってコンクリートを破壊させてしまうこと。
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 それから既にご存知のコンクリートの劣化原因である塩害、アルカリ骨材反応、乾燥収縮や中性化なども凍害の原因の一つとされています。

建築以外の土木の構造物では、寒冷地に使用される凍結防止剤の散布、これに起因して道路に付帯したコンクリートの表面がスケ―リング(表面のモルタル部分がフレーク状に剥離して砂利が出てしまっている状態)を起こすとされています。

 この様なことが原因となって凍害は、生活環境を守る土木、建築物に大きな影響を与えることになるんです。
暑さも寒さも自然現象とはいえ、対応はなかなか難しいですね。

 次回は最も身近な「カビ」についてお話しします。
お楽しみに
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# by pikayoshi72 | 2005-12-12 07:41 | ブログ

第二十一話 “打放しコンクリートの老化についてあれこれ” アルカリ骨材反応

 むき出しの打放しコンクリートを襲う塩害、日常海辺で繰り返される劣化現象、こんな風なことを目の当たりにすると今まで気に留めなかった自然現象の脅威に目が醒める思いですね。
ところが外にもあるんです。
コンクリート劣化原因の双璧といわれる塩害に次いでアルカリ骨材反応、このアルカリ骨材反応のお話をします。
 塩害によって引き起こされるひび割れ、その多くはコンクリート中の鉄筋が腐食膨張してひび割れを起こすことは前回お話の通り、ところがアルカリ骨材反応は読んで字の通り、コンクリート内で反応して表面に網目状のひび割れとなって表れるものです。
しかもそのコンクリート表面が赤褐色や黒褐色などの汚れを伴っているのも塩害にはない特徴です。
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このアルカリ骨材反応を引き起こす原因はコンクリートを作る上で粗骨材といわれる砂利のかわりに
輝石(きせき)安山岩(あんざんがん)(アルカリ反応性鉱物含有)という砕石を使用することにあるようです。
日頃聞いたことがない難しい名前ですが日本で最も普通に見られる火山岩で噴火によって地下の深いところより地表に流出したもので、安山岩や玄武岩などの類だそうです。

 アルカリ骨材反応による劣化の症状は、コンクリート中の粗骨材(輝石安山岩)の破断で起こります。
その破断した表面には白色の物質や球状のガラスの様なものが見られます。
専門家の説では輝石安山岩の粗骨材とコンクリート中の高いアルカリ性の水が反応を起こして反応性骨材粒子にアルカリシリカゲルが生じ、そのアルカリシリカゲルが水を吸収して
反応性骨材粒子となって、それが膨張してコンクリートにひび割れを起こすのだそうです。
これをアルカリ骨材反応といわれています。

 日常生活に無縁のもの、化学の知識がないと分かったとは言えませんね。
思い出しました、アルカリ骨材反応が良く知られる様になったのは20年位前、NHKの放送番組「コンクリートクライシス」で広島のある大型マンションの劣化損傷の実例を放映された頃からです。
山陽新幹線の高架コンクリートの一部が破断脱落したことなどが報道されよりよく知られる様になりましたね。
 
 ご理解出来ましたでしょうか?
次回は“凍害”についてお話ししたいと思います。
お楽しみに
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# by pikayoshi72 | 2005-12-01 15:15 | ブログ

第二十話  “打放しコンクリートの老化について、あれこれ” 「塩害」その3 対策について

何事もなく過ごす快適な日常生活、知られざるところで忍び寄るコンクリートの老化現象。
考えてみれば人間も一面に於いては同じ様なもの、そんなことを思いながら少しでも長生きするためのお話。
老化というより劣化の方が適切かも?

 コンクリート中への塩分(塩化物)が入り込む経路は二つ、コンクリートを作る時に使う海砂や混和剤、もう一つは海岸近く立地した建物に海水飛沫や海塩粒子がコンクリート表面に付着し中へ浸透していく場合でしたね。
最初のコンクリートを作る時の塩化物の混入については生コン屋さんか建築屋さんでしか対応できませんから知識として憶えておくしかありません。
二つ目の海塩粒子などのコンクリート表面への付着、そして中への浸透、この様な作用の繰り返しで、中の鉄筋が腐食膨張してコンクリートにひび割れを起こします。
これを遮断すれば延命効果はあるといわれています。
その外、表面から侵入する酸素、炭酸ガス、水分など、コンクリートを劣化させるものにも対応できますから効果的といえますね。
 もうひとつの難題、コンクリート中に侵入してしまった塩分を完全に抜き取ることは出来ないこと。
こうして考えてみると塩害対策の主目的はコンクリートの保護と塩分による鉄筋の腐食防止対策につきると思います。
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すでにコンクリート中に入ってしまった塩分には、水と酸素の侵入を遮断して、鉄筋の腐食を少しでも遅くするといったことしか方法はないといわれています。

 それでは実際に劣化損傷したコンクリートはどんな修繕方法があるか簡単にお話します。
先ず水洗して少しでも塩分を洗い流すこと、ひび割れから浸透した水分で腐食した鉄筋のサビをしっかり取り除いてしまうこと。
次に防錆処理をしてからひび割れ箇所や傷んでいるところを合成樹脂モルタルで修理します。
この様な下仕事をしてから始めて遮断するための塗膜材を塗る、つまりコンクリート表面を被膜して外部からの影響を受けないように遮断する方法です。

 こんなことが塩害に対する主な対策かな?
こんな事後対策をする前に、予防対策は無いものか考えてみることが大事ではないかとおもいますが?

次回は“もう一つの老化(劣化)、アルカリ骨材反応について”おはなしします。
お楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-11-28 07:40 | ブログ

第十九話  “打放しコンクリートの老化について、あれこれ” 「塩害」その2

海砂を使い始めたのは何時頃か調べてみましたら、今から40年程前からと分かりました。
1986年当時の資料によりますと、海砂を使用した割合が多い地域は北海道、中国、四国の瀬戸内海地方と九州地方だそうです。
特に昭和33年(1958)から40年(1960)にかけて造られた名神高速道路、40年(1960)から44年(1964)にかけて造られた東名高速道路。
この当時はまだ川砂が主体だったそうですが、40年(1960)の後半頃から全国的に高速道路の工事が行われた頃を境に川砂から海砂を使用したコンクリートが増加したとのことです。
北海道にあっては、海砂の外に寒冷地といった地域の環境に対応するために、コンクリートに塩化物を多量に含んだ混和剤が使われていたそうです。
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ついでにもう少し原点に戻って調べましたら、コンクリートのご本尊であるセメントにも塩分が含まれていたとのこと。
但し、この原因は燃料を重油から石炭に転換してから石炭に付着した塩分がセメントの焼成過程で混入したとのことです。
その外に海岸地域で地下水を利用して製造した場合、塩分がコンクリートに入り込むことがあるとされています。

 まとめてみますと、コンクリート中に含まれる塩分(塩化物)、セメント、海砂、混和剤、練りまぜ水(海水)からのものと、海からの波しぶきや潮風によるものではないかといわれています。
 この恐るべき塩害、前回でお話したように打放しコンクリートは、コンクリートそのものが、剥き出しのため直接劣化損傷は避けられません。
最も被害を受けやすい建築物であり構造物ですね。
そこで塩害対策の大切さが浮かびあがって来ます。

次回は“効果的な塩害対策について”をお話しします。
お楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-11-21 07:30 | ブログ

第十八話  “打放しコンクリートの老化について、あれこれ” 「塩害」その1

 遮るもののない大海原、絵画にテレビに背景の主役として広がる海辺の景観、四季を通じていいものですね。
果てしない巨大な海、夏には多くの人々が戯れる素晴らしいところ。
そのところからもたらされる塩害、今回はこれに焦点をあててお話します。

 最初に、コンクリートは表面が多孔質(小さな孔が無数にあいている)のため塩分(塩化物)が付着しやすく、しかも雨水によって洗い流されにくいだけでなく浸透しやすいという欠点を持っています。
海からの波しぶきや潮風に吹き付けられたコンクリート表面には塩分が付着し、コンクリート成分と反応し一部は次第に浸透してコンクリート中の鉄筋を腐食させてしまいます。
前にもお話した様に、鉄筋は腐食すると2倍余りにも膨張して、ある日コンクリートはひび割れを起こしてしまうんです。

 次にコンクリートで出来ている生活基盤、例えば道路、鉄道、港湾、電気・ガスの施設、そして住宅など数え切れません。
ところが早いものは出来上がってから10年位で塩害を引き起こす事例があります。
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そこで塩害を引き起こす元は何かといいますと、大まかに言って二つあります。

コンクリートを製造する時、つまり生コンに塩分を含んだ砂(細骨材)や混和剤が使用された場合と、海岸近くで常に海水飛沫や海塩粒子がコンクリート表面に付着して、次第に内部へ浸透して行く場合です。
この二つはお互いに影響し合って、コンクリート自身の劣化とコンクリート中の鉄筋を腐食させてしまうことです。
前回でお話した中性化は雨水と炭酸ガスの浸透によってでしたね。
それが原因となって鉄筋を腐食させコンクリートにひび割れを起こしてしまう。
塩害も流れはよく似ていますが、その元は塩分によって起こされるところが異なっています。
しかも中性化との違いは、塩害はコンクリート自身を老化させてしまうことです。
そのひび割れからは雨水と炭酸ガスに塩分が加わり浸透し、益々傷口は大きくなってコンクリートの破壊に繋がっていきます。

 固いお話ばかりですいません。
次回は「塩害」その2、塩分入りコンクリート。
お楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2005-11-14 07:36 | ブログ

第十七話  “打放しコンクリートの老化について、あれこれ” その2 中性化

 老化現象の代表的症状“ひび割れ”前回はひび割れにまつわる大まかな症状をお話しました。
よく考えてみると日常生活に密着したところで起こっている。
打放しコンクリートを壊し揺るがすその元を知ることは、長持ちさせる上で大事なことだと思いましたのでもう少し詳しくお話します。
何故って?打放しコンクリートに限らず全てのコンクリートで造られた建物は大なり小なりほぼ似たことが見られますので、今回は中性化!前回でもお話しましたがもう一度我慢して下さい。
この中性化、中学校で学んだ記憶を呼び戻して下さい。リトマス試験紙を使って赤になったら酸性、青になったらアルカリ性、そんな経験ありませんか。
コンクリートは強いアルカリ性(PH13)です。
そのコンクリートが空気中の炭酸ガスと接触するとPH8.5~10程度になってしまうんです。
これを中性化したといわれています。
中性化したからといってコンクリートが弱くなってしまうことはありません。
しかし、安心は禁物、この中性化、繰り返しの雨水と炭酸ガスの侵入で次第にコンクリート内部へ少しずつ進行していくんです。
 困った事にこの中性化がコンクリートを支えている中の鉄筋にまで進んでしまうと、鉄筋がさびない様に保護している皮膜(不動体皮膜)が破壊されてしまうんです。
厳密に言うとPH11位からサビ腐食が始まるといわれています。
 そこで前回お話した様な老化現象の始まり、そうです鉄筋のサビによる膨張、そしてその圧力でコンクリートにひび割れを起こします。
更に拡大するとついにコンクリートが破壊され剥落してしまう、ということになります。
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小さなひび割れだと思って、そのままにしておくとこの様になります。
何事も小さなうちに手当してあげることですね。
 今回は日頃縁のない単語が出てきてすみません。
打放しコンクリート老化現象の原因その2、中性化のお話をしました。
お分かりになりましたでしょうか。
次回は海辺に吹き荒ぶ潮風、塩害についてお話しします。
お楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-11-07 07:32 | ブログ

第十六話 “打放しコンクリートの老化について、あれこれ”

 酸性雨、炭酸ガス、紫外線、有害物質、どれもこれも
日常生活で意識せずに接しているものばかり。
毎日が避けて通れない生活環境の実態ですね。
人間健康でいられるのが一番の幸せ、だけどこんな生活環境の中では、よほど努力しないと病気になってしまいますよ。
 そうです、打放しコンクリートも全く同じ、ほっとけば人と同じ様に病気になります。
何故って?言い遅れましたがコンクリートは外見上固くて、半永久的に長持ちすると思われていますね。
しかし、そうではないです。
何故かと言いますと、一見丈夫そうですが、コンクリートは水を吸う性質があります。
雨が降ると白っぽいコンクリートが濡れると黒くなりますね。
雨水を吸い込んでいる印です。
 その次、コンクリートはアルカリ性です。
あの酸とかアルカリとかのそのアルカリです。
アルカリ性ですから酸性雨にあったら中性化してしまいますよ。
しかも長い年月、酸性雨にまみれていると次第にアルカリ性から中性化へ、そして酸性へと移行してやがて酸性のコンクリートとなってしまいます。
実際には酸性コンクリートになってしまった事例は聞いた事はありませんが、もう一つ、コンクリートは固まる時に収縮する現象があるそうです。
 これが曲者、それが因(もと)でひび割れができることです。
ひび割れからは雨が浸み込み、浸み込んだ雨水(酸性雨)はコンクリートを支える中の鉄筋を錆びさせてしまいます。
しかも鉄は錆びると膨張して、その圧力で廻りのコンクリートにひび割れを起こしてしまうんです。
ひび割れが出来てしまうと、雨に濡れて浸みていく程度ではおさまりません、雨漏りの原因にもなります。
この繰り返しで錆はどんどん膨張して元の太さの約2.5倍位までなるとか。
些細なことと放置していると廻りのコンクリートがひび割れから拡大してコンクリート片となって、剥落することも稀ではありません。
もうこの状態になったら雨漏りどころではありません、頭の上からコンクリートの欠片(かけら)が降ってくることになります。
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 堅固で頼り甲斐があると思っていたコンクリート、意外に雨に弱い、こんな一面があります。
ご存知でしたか?
第十六話 “打放しコンクリートの老化について、あれこれ” 、、、まだまだ続きます。
お楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2005-10-31 07:47 | ブログ

第十五話  ノンクリート打放しボード・外断熱タイプ

 生活環境の改善、こんな言葉が色々な分野でいわれていますね。
今年の代表的なものが“クールビズ”
小泉さんのノーネクタイはテレビや新聞で毎日目にしたことです。
建物も夏はクールビズ、冬はウォームビズといったところが、身近な生活環境の改善といえるでしょうか。
そこで、「ノンクリート打放しボード・外断熱タイプ」、本題に入ります。
堅苦しいお話ではありませんので肩の力を抜いて楽な姿勢でどうぞ。
 ノンクリート打放しボード・外断熱タイプの仕組みとそのメリットを簡単に説明します。
ノンクリート打放しボードに使用されるボード(基材)は、窯(カマ)を使って粘土や無機材料などを原料にして高い温度で加工して作る窯業製品の一種。
身近なものに茶ワン(陶磁器)やガラス、セメント、煉瓦などとふる里は一緒です。
そこで造られたボードに先ず吸水防止のためにNY-Aシーラーという防水材をタップリ塗ります。
次にNY-ヒートカットの塗布です。これが外断熱ボードの主役です。その断熱メカニズムは、太陽熱の遮断です。
つまり、NY-ヒートカットは特殊な熱反射顔料とセラミックを配合、日射による熱源である近赤外線を反射・散乱させて太陽熱の吸収を防ぎ高い断熱性を発揮する。ここのところがミソです!
そのあと、打放し意匠の形成と耐久性をもたせるためのフッ素樹脂防水で完了。
今までの工程を図にしてみました。
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 そのメリットは特に夏です。
太陽光によるボードの表面温度の上昇を遮断し、室内が高温にならないので、冷房が効率よく効(キ)きます。
それだけではありません、NY-ヒートカットは保温材としても働くため熱空調率を高めることです。
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 外断熱の特長は前にもお話した様に、内部結露がなくなり湿気によるカビやダニの繁殖を抑えること、身近な生活環境の向上にこんなに多くの貢献が期待されます。
もう一つ、建物を構成する色々な建築材料は、太陽熱による熱膨張で劣化のスピードが速くなるといわれていますが、熱遮断の効果、これも大きなメリットです。
本当にそんな効果があるのか?と感じるのではないかと思って、外断熱タイプの効果を比較試験したものを図にしました。ご覧下さい。
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           従来品と外断熱タイプの比較試験
 従来品のノンクリート打放しボードと新開発の外断熱タイプにランプを照射し、表面温度の測定をしました。
結果、従来品は15分で57.8℃に達したのに対し外断熱タイプは46℃で、11.8℃の差が出ました。従来品に比べ断熱効果が高いことが分かりました。
どうでしたか、“ノンクリート打放しボード・外断熱タイプ”生活環境向上の一助として頑張ります。
 次回は、「打放しコンクリートの老化について、あれこれ」をお話しします。
お楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2005-10-24 07:45 | ブログ

第十四話 ニーズに応えて

 ノンクリート打放しボード・外断熱タイプの開発スタート
 ヒートアイランド現象、地球温暖化、北極海氷山の溶解、こんな言葉が日常生活に耳慣れて来ましたね。
今年に入り巨大ハリケーン、台風、津波と世界各地で異常気象から発生する風水害の来襲、と思いきや、今度はパキスタンとインドの大地震!この先どうなるのかなあ?といったところが今日この頃。
少しでも地球環境の改善になればと思いついたのが、“ノンクリート打放しボード・外断熱タイプ”
先回ご紹介した打放しボードに新技術。
温暖化する地球環境の改善に僅かの貢献になればと思いついた新技術。
枠を拡げていうとこうなるか?少し大袈裟過ぎるかなあ。
 ところでこの新建材は先回ご紹介した打放しボードに断熱機能を付与するだけのこと。
なーんだ簡単じゃないか、と直感的に納得。が、どっこい、これがなかなか厄介であったとは、取り掛かって始めて分かった。
打放しボードに「断熱材を処理すれば」が甘かった。結果は打放しボードが塗装合板に化けてしまった!
打放しボードに打放しが無くなったら機能は別にしても外見は唯の羽目板。
 地球温暖化などと大風呂敷を広げた発想が悪かった。
もう少し身近なものの改善として、再出発となる。
もう一度原点に戻って、打放しボードと断熱についての仕組みを御浚(オサラ)い。

打放しボードに備わる各種の機能はそのままでプラス断熱効果。その前に大事なことがあります。
そうです、その断熱方法。
断熱には内断熱と外断熱がありますが、日本では内断熱が主流。
最近この内断熱が見直しされ、外断熱の良さが浸透、脚光を浴びてきました。

 難しい科学的なことは棚に置いて、内断熱と外断熱のメリット・デメリットについて簡単にお話しします。
まず建物の断熱目的は、外気による室温の上下作用を防ぐため。ご存じでしたか?
コンクリートの外壁でお話すると、屋外が冷えると同じ様にコンクリートが冷やされるのが内断熱。
ところが外断熱方法は屋外が冷えても断熱材が保温の役目をしてコンクリートを冷やしません。
そこのところが大きな違い、そればかりではありません。
絵をご覧下さい。
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 内断熱は困ったことに冷えた外壁コンクリート内側に結露することです。
結露するとコンクリートは湿気を吸水して、やがてカビやダニの繁殖のもとになります。
押入などがカビ臭いいやなにおいがしてくる、それですよ。
もう一つ、内断熱は内側に断熱材を取り付けるため、その分室内が狭くなることです。
 打放しボード外断熱タイプをご理解いただくために、ここまでのことは簡単な基礎知識として大切なことと思いましたので。
一寸前書きが長すぎたかなぁー!本題は次回にします。
今回のことを頭の片隅に仕舞っておいて下さい。また、来週まで
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# by pikayoshi72 | 2005-10-17 07:37 | ブログ

第十三話 写真で見る「ノンクリート打放しボード」

材料や機能といった堅苦しいお話しは前回で終わりとして、今回は見て楽しむ写真で
ご紹介します。
 ノンクリート打放しボードの代表的なものを前回ご紹介いたしましたが、その外建物の形状によって色々なデザインにマッチした「ノンクリート打放しボード」が採用されています。
 取りあえず最近竣工したものをご覧下さい。
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共同住宅のリフォーム重厚感を演出したボード(D-1タイプ)
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珪藻土仕上げに塗装とボードとの組み合わせ(E-1タイプ)
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金属パネルとボードとのコンビネーション(D-2タイプ)
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本格的打放しサイズで構成された施工例(D-2タイプ)
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コンクリート調パネルとタイル調パネルとのコンビネーション(E-1タイプ)
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遊技場の外壁を飾る打放しボードによる重厚感あるデザイン(Cタイプ)

如何でした?手軽に重厚感ある打放しボードのご紹介、手前味噌すぎたかなぁ!
次回は打放しボードの環境対応型その開発ストーリーのお話し。
お楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2005-10-11 07:46 | ブログ

第十二話  ノンクリート打放しボード

 鉄筋コンクリート作りの打放し建築意外と表面は花車(きゃしゃ)であったとは、“人は見かけによらない”と言うではありませんか?
風雨、日光、湿気など、こんな自然現象に耐えていくには、コンクリートと言えども表面の保護が大切。
今まで無かった幾つかの機能を備えた打放し新建材の代表格“ノンクリート打放しボード”(以下打放しボード)の続きをどうぞ。

厳しい自然現象に影響されることなく健康体を保持するための努力することは人も建物も同じ。
そのためには、この様なコンクリートの劣化作用を跳ね返す保護材を表面に塗って耐久性をアップすること、当たり前ですよね。
そこで打放しボードに打放しコンクリートの表面保護する手法の導入が打放しボードのポイント。
打放しボードが備える劣化対応機能は外見では分かりません。
どうしてって?
ボード表面の処理材以外はすべて透明材料で、その処理材はコンクリート色そのものです。
ですからコンクリート色を隠蔽してしまう材料などは使えません。
そうです、すべて透明でなければいけない訳はそこにあります。
ですから、外見だけではどの様な仕組みで劣化対応機能が備わっているか全くと言っていい位分かりません。
そこで、打放しボードの色々な機能の説明をします。

 ボードは、サイディング系の材料で出来ています。
この材料は吸水する性質を持っています。
吸水は漏水、パネルの変形原因にもなります。
しかも日射を受けないところは水分の蒸発がゆっくりのため湿潤状態になりやすく、カビの発生原因となります。
もうお分かりになりましたね。
ボードそれ自体を吸水しない様にすることです。
これが第1の保護機能。
ボード表面はコンクリートの表面とは違います。
当然のことですが、これをコンクリート色への衣替えを2回塗布。
これが第2の機能。
第3は斑模様の形成です。
比較的気がつかないところ。
最後は長持ちする防水と汚れ防止機能付与で終わり。

 これらの機能はボード表面を打放しコンクリート表面に仕立てる大事な要素。
その全てを満たして始めて“ノンクリート打放しボード”となります!
よりリアルな打放しボードとするための必須条件が透明材料でなければならない理由は、ここにあります。
このように積み重ねられた各々の機能は、外見では全く分からないため詳しくお話しました。
くどかったかなあ?
あっ!忘れてました。このボードの打放しならではの特徴をお話しします。
1.ボードの大きさは3尺×6尺(910mm×1820mm)、この大きさは本物の打放しコンクリートの型枠サイズ。
2.リアルな打放しコンクリートの意匠性を形成するPコン。
これらの特徴は打放しコンクリートの外見上、不可欠な要素です。

打放しボードの真価は、小さな店舗や住宅でも簡単に打放しコンクリート調建築が出来ること。
しかも、快適空間の実現、更に長期にわたる耐久性が打放しボードには備わっていることです。
 これぞ“ノンクリート打放しボード”の真骨頂です。
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 今までお話した打放しボードの備えた各機能の成果をまとめると、こんな風になります。
1.手軽に打放しコンクリート調の小規模建築が出来る。
2.ボード自体が吸水しないため室内の湿気が少ない。
3.湿気によるカビやダニの繁殖を抑制。
4.快適空間の実現
5.フッ素樹脂の防水効果が大きく長期耐久性が向上。

 どうでしょうか、打放し新建材の多機能ぶりは!
次回は、その打放しボードを建物の写真でご紹介します。
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# by pikayoshi72 | 2005-10-03 16:14 | ブログ

第十一話 打放しボード作りあれこれ

 小規模の打放しコンクリート、出来上がってみれば極めて簡素で誰でも簡単に出来そうなもの。
ところが出来上がるまでに費やすエネルギーは携わった人でなければ分からないところ。
こんな簡易な造形が、多くの人々の共感を呼びつつもかくされた数々の労苦の成果が未だ正しく評価されないところが摩訶不思議。
この日の目を見ない困苦痢吐(コンクリート)。
この困苦の造形プロセスを気楽プロセスへ、がボード発想の原点!

 本物を醸し出す人造大理石、陶器に勝るプラスチック設備製品など、コストと耐久性など勝るとも劣らないものばかり、これらみな工場生産。
打放しコンクリートもこの発想を拝借ということでスタート。
取り敢えず外装と内装に的を絞り基材のボード選定から開始。
続いて打放しコンクリートの生命である表面の意匠性、30~40年前までは杉板が主流。
その後、時代の変転で台頭してきた廃棄物問題、続いて地球資源の保護へと変転、杉板からベニヤ板へと合成材が主役を、間もなく現在の合成樹脂塗装合板が、打放しコンクリートに最も相応しいものとして君臨、現在の代表的な意匠として馴染まれています。
あ!忘れていました。
鉄道や高速道路の高架、あの梁・柱は鋼製スチール型枠が主流です。
つまり合計四種の意匠となります。

 建物の内外装を打放しコンクリート調にするための条件、先ず基材であるボードをコンクリートと見間違える様なものにすることです。
意匠性は木製型枠としました。
何故かって?言いますと、鉄製の型枠模様は金属特有の冷たさがあるためです。
これでボードの意匠は本実(ほんざね)と塗装合板によるデザインに決まり。

 さて、内外装ボードのうち、内装用についてお話を続けます。
内装では壁・天井などに多く使われています。
しかし、一般的には壁が圧倒的です。
生活空間の中で最も人肌に触れ、しかも室内を冷暖房することで密閉されるため、色々な汚れが壁について目立つようになります。
一番大事なことは、壁についた汚れを簡単に拭き取ることが出来ることです。
次は外装用打放しボード。
40年余り携わった打放しコンクリート建築現場、そこから生まれた仕上げ方法。
その改良生成された仕上げ技術の転用で、打放しボードが生まれました。
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内外装打放しボードをまとめてみますと、

その1、
・基材のボード本体に吸水防水性
・セメントを主体とした無機質+ポリマーをコーティング
・打放しコンクリートと同一サイズと同調意匠
・ 汚れが簡単に拭き取れる(内装用)
・フッ素樹脂防水による超耐久性防水(外装用)
噛み砕いていいますと、ボード表面を覆う色々な材料は打放しコンクリート仕上げで使う材料と同一のものですから、当然、表面はコンクリートそのものといった質感と感触があります。

その2、 打放し意匠の造形。
コンクリートの表面は一見灰色を呈していますが、斑模様が全体に拡がっています。
これが意匠性を醸し出しています。
しかも、その模様には同じものはありません。
言いかえれば自然を最も意識されたデザインと言えましょう。
打放しボード意匠の生成は、手馴れた職人さんの手によって作られます。
何故かって?
機械による意匠生成は、どうしても単一デザインの繰り返しとなりがち。

その3、 打放しコンクリートの意匠性、
その最もたるものが同じ表面を形成する意匠がないことです。
ものの価値は“同じものが世界に二つとない”こんなことを聞いたことがありませんか?
考え方によっては特異な建材といえますね。
忘れていました、このボードの正しい名称は「ノンクリート打放しボード」です。
内外装ボードは、今お話した様な今までにないいくつかの要素を備えた新建材です。

 次回は、打放し新建材についてもう少し詳しくご紹介します。
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# by pikayoshi72 | 2005-09-26 07:48 | ブログ

第十話  ノンクリート打放しボードの誕生秘話

 今まで遠い昔話でごめんなさい。
話を現実に引き戻して、このところ“話題沸騰”の打放しコンクリート内外装ボードのお話をします。
 ところで打放しコンクリートがおしゃれなブティック、モダンな店舗や住宅、まさかこんな分野まで浸透するなど全く思ってもみませんでした。
IT技術によって瞬時のうちに世界中に受発信が出来るなど半世紀前には想像も出来なかったことです。
この様な変化のうねりの速さは、生活環境にまで影響を与えることは当然ですよね。

 さて、打放しコンクリート建築は大きくても小さくても、コンクリートが固まるまでの時間は同じ、ところが打放しコンクリートは小さなもの程、手間がかかる。
そんなところが木造建築との違いかなあ。
実例でお話しましょう。
銀座、新橋、新宿と繁華街に展開する某居酒屋さん。
小さな店づくりを短期間での工事、一遍に大勢の職人さんが入り乱れての突貫工事、“時は金なり”を地で行く様な凄まじいもの。
壁面を打放しで!先ず鉄筋、次に型枠の組立、そして生コンの注入、あと固まるまで待つ。
それから型枠のバラシと、手数の掛かることこの上なし。
手数がかかればお金もかかる、しかも例の不具合の有無、あれやこれやで徹夜作業の連続と相成る。

 こんな苦労にさいなまれて木造建築なみのスピードで打放しコンクリート建築が出来ないものかと考えて思いついたのが“ノンクリート打放しボード”この名前は後でつけたもの。
打放しコンクリートと同じ質感をボード上に表現出来れば文句なし!
過去40年余りの打放しコンクリート表面の仕上げ技術を活用すれば全く同じ質感が出来上がることは当たり前のこと。
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 住宅会社は内外装材を工場で作ったボードを使用していることが多いですね。
外壁も内装の壁も金具で留めたり、釘で打ち付けたりで、アッ!と言う間に出来上がり、こんな話や経験をしたことがありませんか。
 新築住宅の超スピード施工、昔は湿式と言って壁を土でこねて塗るなど手間ヒマがかかり大変でした。
その事を思えば何と速いことか、驚くばかり。
しかも、この壁を生コンを使って打放しコンクリートで作る現状は、湿式工法を通り越して、困苦痢吐(コンクリト)そのものですよ(困って苦しみ下痢をして吐く)、とこじつけてみました。一寸例えが強烈だったかなあ!

 こんなことがノンクリート打放しボード誕生のエピソードでした。
次回は、“ボード作りのあれこれ” お楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-09-20 07:46 | ブログ

第九話  打放しコンクリートの老化について

 ある有名建築家の手になる打放しコンクリート、その容姿は建築自体が美術品として評価されるハイレベルなもの。
その名声は海外まで響くものだった。が、10数年の月日の経過は、その様相を一変させるものとなってしまった。
一説に風化は自然の摂理、逆らうことは無益と。
この様なケースは打放しコンクリート建築には当然のこととされて来たのが、ほぼ20年前位まで。
その原因と様相の変貌ぶりを辿ってみました。

 1960年代の打放しコンクリート建築は、第1、2、3話などで、お伝えした様に、不具合とされる修繕工法が未熟であったこと。
当時のコンクリート保護材料、中でも最も重要な防水材の耐用年数が短かったことと、打放しコンクリートはコンクリートのもつ自然な表情に対して修繕や防水工法はそれを阻害するものとされている一面がありました。
 つまり何等手を加えない、ヤリッ放しコンクリートが、最も大切なこととしていた時代でした。
前にもお話した様に、不具合の修繕技術が、未だ手探りの時代でしたから当然のことでしょう。
当時、自動車や工場から排出される汚染物質の増加で、空からは酸性雨が降りそそぐなど、今思えば自然環境破壊の時代でした。
こんな環境の中、打放しコンクリートは身を削りじっと耐えていた。と、いったところです。

 ご存知のようにコンクリートはアルカリ性です。
このアルカリ性の打放しコンクリートは酸性雨によって中性化して、おまけに汚染物の付着で黒ずんだなど各地で話題となっていました。
コンクリートが中性化すると内蔵されている鉄筋が錆びてしまいます。
しかも鉄筋が錆びると、その体積が7倍位まで膨張し、周りのコンクリートを押し出してしまい、押し出されたコンクリートは下に落ちていきます。
ニュースなどで建物の上からコンクリートの欠片(かけら)が落ちて来たといったことを耳にしたことがあると思いますが、それがそうです。(写真-鉄筋露出)
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それからコンクリートは堅いから水は吸わないと思っているのが普通ですよね、実はコンクリートには吸水性があります。
身近な例で夏暑い時、庭のコンクリートに散水しますね、水を撒くと灰色のコンクリートが瞬時にして黒い色に変わります。
これはコンクリートが水を吸っている証です。

打放しコンクリートの表面に何十年も繰り返し酸性雨にあったら傷んでしまうのはあたりまえですよ。
これでコンクリートの老化する原因が少し理解されたと思います。

 先にお話した様に、老化現象を抑えるには、この吸水性を防止するための防水材が不可欠、当時は「シリコン樹脂」などといって打放しコンクリートを保護する防水材が少なく外国から輸入されたものが主流で、あがめ奉ったものです。

 ところがこの防水材、額面通りの長期の防水性能が無かったことが打放しコンクリートの老化に繋がった原因の一つといえます。

 今お話したような様々な影響を受けて、新築時の灰色の打放しコンクリート、その偉容は汚染物で黒ずみ、ありし日の面影は消え失せ、欠片(かけら)の落下で鉄筋が顔をのぞかせているといった光景、これが正に打放しコンクリートの老化現象と言えましょう。
こんな姿を目の辺りにすると、あの強固で頑丈な打放しコンクリートも何となく頼りない哀れなものにしか思われませんね。

 こんないくつかの打放しコンクリートを保護する技術が当時未成であった為、十分な手当が行き届かず弱点となって多くの人々の夢を破り、その容姿は次第に少なくなっていきました。

 何か、もの悲しい話になりましたが、このようなことを教訓にして改良改善され適切なメンテナンスを施すことで、現在は飛躍的な耐久性が実現されていますのでご安心を。

 次回は、今までの昔話から一服して
目前の「ノンクリート打放しボードの誕生秘話」をご紹介します。
お楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2005-09-12 07:48 | ブログ

 第八話 打放しの知識を深める

 神業と人間業の二つを標榜、期待と想定の狭間に揺れる打放しコンクリート。
無垢(ムク)の仕上がりが最終地点。
とは言え目前にした不具合は多種多様な欠陥症状を呈し、各々に適応した方法を考え乍ら進めなければなりません。

 ところで修理を要する不具合にはどんな欠陥症状があるか、遅ればせ乍らご説明します。
いろいろありますが、代表的なものをピックアップしました。

1.豆板(ジャンカともいいます)
 コンクリート表面に砂利が露出して空洞が出来たもの。(下部写真)
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2.気泡(ピンホールともいいます)
 コンクリート表面に空気が残存したために出来た小さな穴。
ピンホールでも大きなものは10㎜内外のものもあります。(下部写真)
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3.表層剥離
 一寸むずかしい名前の不具合ですね。
滑らかな表面が剥離して、ザラザラな表面となってしまったもの。     (下部写真)
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4.コールドジョイント
 いよいよ佳境にせまって来ましたね。
専門用語ですから一般には知られていません。
一例で説明します、コンクリートの壁を想像して下さい。
その壁の中央を横断し、しかも大きな筋や段差がついている状態です。
中にはこのコールドジョイントを境にして上下のコンクリートの色が全く異なったもの、例えば上側が白色で下側が黒色となってしまったものもあります。(下部写真)
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5.ピン角の欠け
 コンクリートの柱で説明します。
最近では柱の四隅を直角にすることが多い様です。
この直角な四隅の角の部分が欠けた状態をいいます。

6.錆汁
 コンクリートには中に鉄筋が入っています。
この鉄筋がコンクリートを打設する前に、 雨に降られたりすると、錆びてしまいます。
その錆が降雨の時錆汁となって、下のコンクリートの 表面に流下していきます。
その時に表面に錆汁が染みこんで付着した状態をいいます。
この錆汁は洗っても取る事は出来ません。(下部写真)
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 打放しコンクリートの不具合の代表例は、ほぼこんなところかと思います。
念のため新築時に見られる修理を要する不具合であることをお忘れなく。

 時、あたかも新幹線の開通(1964年)に引き続き、
東名高速道路の建設が最盛期を迎えていました。
高架の支柱や側壁の不具合に対処する為、参加させていただきました。
土木関係では新幹線の参加に続く快挙と喜んだものです。
新技術として少し認知されたかなあ?と思ったのもこの頃でした。

次回は打放しコンクリートの老化について。

お楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2005-09-05 07:52 | ブログ

第七話 (仕事探し第二弾)

二つの難題
その一
 神業の打放しコンクリート技術?によって無傷の打放しコンクリートの出来上がりが当たり前とされた時代(第六話で紹介済み)。とは、言うものの出来具合によっては、もって行き処のない自己結果責任、その無念さは胸に秘めたままだそうです。 
この立ちはだかる原則と建前、知ってか知らずか、或いは暗黙のルールか?
正々堂々とまかり通る、といった当時の流れ。
不幸にして現れた修理箇所、その無念を晴らすお助けマンと自負するが、どーも、失敗をエサにする奴と、お互い心証穏やかならずも。
そうは言っても取り壊してやり直すことを思えばはるかに合理的。
彼我の事情はザーッとこんなふうかなあ・・・・・。

その二
 そんな、こんなの事情を抱えて、表立って口には出せないゼネコン業界の雰囲気。
打放しコンクリートには大なり小なり修理ヶ所は出るものと認知しつつも対応処置なしの建前先行・・・・。
とは言うものの望みは高く“良い品質”をスローガンに、言うは易く行うは難し。
丁度、水上歩行のように、右足が沈まないうちに左足で、それを継続すれば水面を歩けるハズ、そんな理屈と同じか?
不足の事態の準備がないため無理算段。
この二つの難題解消がポイントと思いました。

 こんな難題を抱え時代背景を身に感じ存在感を意識し乍らの仕事探し。
あれもこれもうまくいかないもんだなあー、とつくづく感じました。

 仕事には賃金が・・・高い技術にはプラスアルファーが・・・、これ現代の仕組み。
不可能と考えられていたいろいろな事が、社会に有為に働くことによって存在価値が出てくる。
抱えた二つの難題も同じ事。
神業は希なこと、何事も不測の事態の想定と対応処置が大切、といったことは常識。
打放しコンクリートの難題、そうです!建前を考え直すこと。本音が常識となる。
この常識が苦難の道、この先何年かかるか。積み重ねるしかないか!
あれもこれも時間との戦い、「不遇に嘆く。」と、よく言われました。

 “石の上にも三年”とは辛抱のたとえ、悪戦苦闘の三年はおろか、6年の歳月を掛けやっと打放しコンクリート表面の仕上げ方法を完成。・・・1965年
同時に打放しコンクリートに拘わる本音に迫る。
こんなツールを引っ提げてやっと仕事にありつけた。

 かえりみれば伝統と実績が皆無と言える無手勝流の一人相撲。
長かったその心境は
“上を向いて歩こう 涙がこぼれない様に
         思い出す春の日 一人ぼっちの夜”
三振、手ぶらの帰り道、こんな心境でした。

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 時まさにベトナム戦争激化このことを思えば命に別状無し、こんな事に支えられつつその激しさは新聞で毎日報じられていました。


 次回は題して、“打放しコンクリートの知識を深める!” お楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-08-29 07:41 | ブログ

第六話(仕事探しの巻)

 コンクリート三つの難題、何とか実用化への問題解決はしたものの、長い年月と失敗の連続だっただけに、その喜びも一入(ひとしお)でした。
そのうれしさも束の間、地方では、打放しコンクリートは僅か、言いかえれば物件が少ないため仕事に事欠く始末。
世の中、“一難去ってまた一難”
これも人生の避けて通れない道か?
よく考えてみれば地方だから少ないだけ、大都会では両手に抱えおおせない仕事がある筈。
と、気づき暗夜の日々にパット光明がさした!とはいえ一喜一憂の日々、この先大丈夫かなあ~?こんな想いでした。

 取り敢えず、近くの都会、そうです!名古屋。
東京・大阪も考えてはみましたが、交通費と要する時間の負担が大きいなど、厳しい台所事情と経済原理からして順序を経て展開していこう!、、、と、
ごく常識的な発想でスタート。

 当時通信の横綱は固定電話、しかも市外は長距離電話、と言った時代、今の若い人には分かるかなあ~?。あとは電報と速達郵便、
小泉改革の根源はここにあったとは。
ITなど夢にも出てこなかった時代でしたから。
これは自分だけのことか。

 打放しコンクリート建築はその殆どが公共大型工事。
最近の様にブティックやオシャレな住宅に取り入れるなど全く無かった時代でした。
と言うことは、大手ゼネコン(総合建設会社)が打放しコンクリート工事の殆どを占めていました。
ここから仕事をいただくこと、言うは易く行うは難し。
何故かって言いますと無言で漂う年功序列の業界、企業規模からして比較にならない小さな我が社、こんな大きな会社が相手にしてくれるだろうかと、いつもゼネコンの玄関先で二の足を踏んでいました。
意を決して突入するも、如何せんビジネスの基本である会社の信用度、知名度、技術力など、どれをとっても不足。
そのどれもこれもが落第点!剣もホロロ、高鳴る心臓は恐怖を呼び起こし見事、敗退を噛みしめることの繰り返し。
甘かったなあ~。反省と田舎者の悲哀が一身をかけめぐる。
しかも、更に大きな衝撃をうける羽目になるとは・・・・・トホホ。
これも思ってもみなかったことの一つ。

 打放しコンクリートは、一面に於いては手探り工事、眼で見て進める仕事(これが普通)とは大きく異なることは先にお話した通り。
手探りだけに型枠で囲まれた中のコンクリートの出来具合は型枠をはずすまでは分からない。
ここが最も理解が難しいところ、何故かって!?
現実には予期しない修理が発生することは避けられない事なんですけど・・・・。
ここで更に大きな衝撃とは・・・・・・説明します!
つまり、こういう事なんです。
打放しコンクリートは修理を要する不具合ヶ所を出さないこと故に、修理代は予算として計上されません。
言いかえれば、目隠しの一発勝負でありながら完璧な打放しコンクリートであることが、求められるのです。
修理を要するものは、取り壊して再度やり直すのが原則だったそうです。
何故なら下手な施工と技術力は自分持ち、結果として不具合が出るのは「身から出た錆」。
「修理は自己責任で当然!」と、言った具合。
建前が本音に化けたとはこの事か!
面子と修理代の皆無を背負った当事者は、逃げ場なし、と言ったところ。
ない袖にすがる仕事探し。
打放しコンクリートの前途に暗雲が垂れこめた、こんな風に思えました。

 二つの難題を抱えての船出、漕ぎ着けた開発の成果も、喜びも、一挙に吹き飛んだということでした。

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 時まさに、「東京オリンピック」が開催され「新幹線」が開通、1964年、光と闇を実感!
暗い話で終わってしまいました。
次回は“仕事探し-続編”、お楽しみに!?
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# by pikayoshi72 | 2005-08-22 07:34 | ブログ

第五話(わが茨の開発ストーリー)  

 コンクリートの直感的イメージ。
人間で例えれば堅物、一面においては頼りになる、
そんな感じがしますが、一方どうにも厄介な代物であったとは、、、、、。
知れば知るほど迷路に入り込んでしまったのか!
肌に触れるコンクリートの表面を直すだけの事なのに。
 何をつまらない事に失意を催しているのか、他人からみたら変人扱いされるかも、、、、、、。
いや、小泉総理のことではありませんヨ。

 三つの難題
 その一
 コンクリート本体とくっつかない修理用モルタル、縁結びは、はりつける仲人を探すこと。
昔から日本には「のり」という接着材がありました。
身近なものに木製の風呂桶や米びつなどには使われていたとの話、これがヒント、、、、思いつきました!
コンクリートを接着する材料を探せば良いだけのこと、業界の垣根は既に取り払った自由な発想、これで打開するしかないと腹をくくりました。

 ところで、ご当地浜松は、自動二輪の発祥の地、先回も話しましたよネ。
それに伴った資材のお店が沢山あります。
勿論接着材料を扱う専門店、その一つに合成樹脂を取り扱う店はありましたが、コンクリートに適したものは皆無。
考えてみれば、当時コンクリートに使う樹脂など需要は皆無でしたから無理もないと諦めかけていましたが、機械に使われている合成樹脂であればコンクリートも機械も固いことでは一緒、そこでやってみなければ分からない(遠州弁でいうと”やらまいか”精神)と、無謀にも多種多様な合成樹脂を塗りつけたり、混ぜ合わせたりしてやってみました。
これも専門知識を持たない人間のなせる技。
勿論失敗、僅かな光明が見出せれば何でも試したものでしたが、こんな初歩的で無謀な開発方法でも、実際にやってみることで得がたいノウハウが生まれ、その一部は現在に至るも大事な技術として生き続けているなど思ってもみなかったことの一つ。
 物事はどういうわけか、一つ上手くゆくと次も、、、、と、逆に裏目に出ると次も、と言った流れがあるようで、これを運・不運と決めつけるのは自分自身の心にあるのかなあ!と思ったりもしました。
何故かって!"失敗は成功のもと"こんなことわざを自分流に解釈、数々の失敗の積み重ねこそ幸運への近道だ!と気持ちを奮い立たせて来たことなど、今思うと無神経な楽観主義者だったのかなあー?と、感じています。

 解決すべき問題点
 その二。
 モルタルの色を本体と同じにすること、コンクリートの表面をよく見るとグレーしかもまだら模様を呈しています。
同じ建物であっても、その表面は微妙に色が変化しているんですよ。
”そんなにジー”と、見たことない、それが普通です。
 話を先に進めます。
 修理モルタルが乾いてしまうと色が変わってしまう、何故って?
コンクリート本体と同じ調合の修理モルタルを使ったからですよ。
同じ材料で修理すれば同じ様になる。
こんなことは子供でも分かる理屈が、コンクリートではこの道理が通らないところ。
解決方法は簡単、乾いたら同じ色になる様にセメントと砂を調合すればよい、と言ったことでほぼ上手くいきました。
これは道理が通った"押して駄目なら引いてみな"なんて演歌があったじゃないですか、あれですヨ。

 その三に移ります。
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 穴のあいたコンクリートに合成樹脂入り修理モルタル。
 その二でお話した、本体に合った色で違和感のない様に調合したモルタルで、しかも乾燥後もピッタリ合った修理跡。
これですべて良しとはいかないところに問題が、、、、何かって?
湿気の多い日や、雨に濡れたりすると何故か修理モルタルは黒ずんだり白くなったり、人間で言えば赤くなったり青くなったりというところ。
人間は自然にもとに戻りますが修理モルタルは変わったままなんです。*写真有り
これでは修理になりません、むしろ穴のありかをここぞとばかり指差している反抗者そのもの、これには閉口しました。
この解決策は道理に従い湿気や雨から修理モルタルを保護すること。
これは道理にかなった唯一のものだった、、、、かな?
 季節は折しも真夏の最中、クーラーなどありません、粗末な実験室。
扇風機が唯一暑さを凌ぐ救いの神、忘れ難き想い出の一コマ。
こんな環境でも不思議なことに一日過ぎるのが速いことに驚きました。
何故って!早く結果を出したいと夢中で、しかも焦っていましたから。
時は金なりと言うではありませんか。
勿論、工事現場を往き来しながらのこと。

 1959年の打放しコンクリート現場での切っ掛けをスタートに修理モルタルの実用化まで6年余り、こんなにかかるとは考えてもみませんでした。
唯一、止めようと思った時、一抹の可能性が思い留まらせる、こんな繰り返しでした。
打放しコンクリート表面肌を悩ませる三つの問題は、ただ、ひたすらやってみることで、何とか目処がついたかなと自己満足しているところです。

 長々とお付き合い頂き、ありがとうございました!

 次回は題して”仕事探し”、お楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2005-08-16 08:07 | ブログ

第四話

 伝統技術の継承者、左官さん。
1959年当時は建築ブームの最中、どの分野の職人さんも引っ張り凧で、ヨン様の元祖、左官様といわれ、モテモテで修理など見向きもされない状況だったですよ。

 思い出しました、この年全国一斉にメートル法への切り替えがありましたっけ。
分かり易く、しかも生活の合理化だけでなく、国際化の幕開けの様に感じたなあ。
一般家庭では電気洗濯機、テレビ、電気冷蔵庫が台頭、三種の神器と奉られ、電化時代の花形でしたっけ。

 ところで打放しコンクリート建築の本格的登場は、大まかには戦後のこと。
今思えば不良箇所の修理方法は、左官さんの伝統技術の中には全くなかったのはあたりまえ。
何故って、打放しコンクリート建築そのものが無かったから。
歴史を学ぶ大切さを今知ったでしたよ。
頼りにした左官さんが上手に直せないことは無理ないことですよね!

 その後は解決策が何も無い手探りの毎日。
甘くみた罰か?今更泣き言いっても始まらないと鼓舞して、修理方法の挑戦の幕が切って落とされたといった悲壮な気持ちでしたっけ。
試行錯誤しつつ、焦点を打放しコンクリート素肌の復活に絞ったですよ。


 技術の伝承のない新分野と思えば、垣根はないも同然と決めて打放しコンクリートの原点であるセメントと砂からスタート。
もう一つ忘れていた大事なこと、穴のあいたコンクリートにモルタルをつめ込んでも、コンクリート本体とは縁が切れていること、見た目にはくっついている様にみえますが、実際にはついていないことがわかりました。
これは雨もりの原因となりますよ。

 このことから修理に使うモルタルは、先ず本体とくっつくこと。
モルタルの色が本体と一緒であること。
後日モルタルの色が変色しないこと。
この三つが出来ないと打放しコンクリートの素肌の復活にならないことが、ハッキリしました。
これからが茨の道の始まり。

 三つの問題
 その一、本体とくっつくモルタルであることは、当時の左官技術では出来ませんでした。
本体にくっつけるためには、本体をシゴイて表面をザラザラにしてモルタルを押し込むといった方法です。
この方法では、本体と縁が切れていますから雨が降った時、隙間に雨が滲み込んで漏水となってしまいます。

 その二、モルタルの色が本体と同じであること。
第二話でお話した様に本体と同一のセメントと砂でありながら乾いてしまうと違う色になってしまうので、修理した箇所が際立って目立ち素肌の復活とはほど遠いものとなることです。
その原因は分かりません。

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 その三、その二でお話したモルタルの色が本体と同じであることですが、乾燥後同じ色に納まったと安心していても、後日、次第に色が変わっていくことと雨に濡れることでも変色してしまうことです。
そのメカニズムは分かりませんが、この三つの難関を突破しないと、打放しコンクリート建築は素肌が仕上げ、致命的なものになりかねません。生き物のお世話をするより難しい物言わぬ個物か?

 少し専門的になり過ぎたかなあ。
しかし、コンクリートの知られざる一面とご理解していただくことと、堅固で丈夫なものと思いがちですが、こんな微妙な性質をもっていることを知ってもらい見ていただき、使っていただくと視点が少し変わってくるかも。
塗料では塗ったあと色が変わることは滅多にありません、経年劣化以外はね。

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 退屈なお話ですいません。
思い出しました!この頃、ご当地浜松では当時、かの有名な世界企業、本田技研の故本田宗一郎さんが初めて作ったポンポン(オートバイ)が登場。
旧軍隊が使っていた無線機用発電機の小型エンジンを改造し、それを自転車の三角フレームに取り付けたポンポンが市中を闊歩し、市民の羨望の的でしたよ。
ポンポンの由来はエンジンの排気音が丁度ポンポンと聞こえたことだそうです。

 次は、わが茨の開発ストーリーをお楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-08-08 09:02 | ブログ

第三話

 穴のあいた打放しコンクリート建築、普段この段階では見ることは出来ません。
 何故って?かくしている訳ではありません。
 作業現場は殆どシートや塀が立てられて、外から見えない様な場合が多いですよ。
大きな工事になると出入口にはガードマンがいますよね、目的は中で作業する人達と周りの人々の安全と事故防止のためです。
不出来な穴のあいた打放しコンクリートをかくす為ではないことをくれぐれもお忘れなく。

 こんなお話しをすると打放しコンクリートは、すべて不良品なのか?なんてことにつながりそうですが、そこは技術者の腕のみせどころ。
そうは言っても透視出来ない手探り作業である以上、神のみが知る幻世(現世)の残された一手法とも言えるかなあ。

 何か横道へそれてしまったかな、ハンドルを元に戻して打放しコンクリートの不良品の修理に常識と理屈では通らない現代の不思議物語を聞いて下さい。

 打放しコンクリート建築現場、シートで囲われた作業場の一場面、ご想像出来ますか?型枠をはずしたところ打放し表面には不良品につながる穴(巣穴)、アバタ、そして流入生コンを邪魔した鉄筋が表面の素肌を直撃、不良品の誕生シーン。
野球で言えば 0対0 の最終回に満塁ホームランを許した敗戦投手の心境かなあ、これは現場に携わった人にしか分からない心に与える衝撃。

 今までの話は、この修理に関心をもち、何とか出来ないかなあーと、思った私の40年余り前の出来事の一こま。
これが切っ掛けになって現在があると言ったところです。
その切っ掛けで、この打放しコンクリートの不良品を修理して、本来の素肌に出来ないものか6年余り思案に明け暮れしていたんですよ。

 初期この修理に最も適した人は誰?そうです、セメントに最も親しんでいる左官屋さんですよ。
その人に頼めばいい、上手に修理してくれるから心配ご無用と対応処理に絶大な期待を持っていたですよ。
そこで登場したのが伝統技術の承継者、経験50年余りの左官さん、打放しコンクリート不良箇所の素肌の復活にかけて意気揚々の出番、これにて一件落着と相成る筈が、どっこい、そうは問屋が卸さないと言うことなんです。
その実相をお話ししましょう。

 修理の要点は、お分かりの様に繕ったところが違和感のないものにすること不良箇所を元の素肌にすることですよ。
意気揚々として取り掛かったくだんの熟練左官、修理箇所に合わせて材料を調合、無事工事完了と相成る。が、後日見るも無惨な出来栄え。
この実相をふまえ何人かの熟練左官の登場なるも全く同じこと。
打放しコンクリートの修理の不思議はここが原点ですよ。


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 つまり、生コンクリートと同じ様に調合した材料で修理するも、全く上手に出来ない。
そればかりか、不良箇所はここぞとばかり示威するごとき際だって見える修理跡。
これでは修理どころか、不良品をより強調する結果となってしまうんです。
打放しコンクリートの修理は、まさに理屈や道理ではおぼつかないことが分かったんですよ。

 物事の行きづまりには、もう一度原点に帰ることと言われますよね。
ところで生コン、やわらかなコンクリートが時間の経過を経て固くなる。
この生命の誕生、流し込みと生成課程が自然環境の影響受けて、生まれも育ちも一緒であっても、素肌の出来具合が違ったものとなってしまう不思議な代物。
人間の兄弟とあまり変わらないところが似ているなあーと、思ったですよ。と言うことが分かるまでに6年余りの歳月がかかりましたんです。
この不思議な現象が分かっているから、道が開けてきたみたい。
ふところは火の車、当然のことですよ。
失敗の連続でしたからね。

 この原点回帰で始まる打放しコンクリートの素肌にせまる難行苦行のスタート、不思議解決への遠い道程の第一歩かも。
時、1959年伊勢湾台風で死者、行方不明5000人を超える被害にあった年。台風の被害に比べれば失敗の被害は取るに足らないと思い直して続けることにしたですよ。

 次回をお楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-08-01 08:38 | ブログ

第二話

 こんにちは、今日は打放しコンクリート建築についての基礎をお話しします。

 日本で最初の打放しコンクリート建築物を作った人は誰だと思います?
ヨーロッパ人でなくアメリカ人のアントニン・レーモンドさん。
作品は「霊南坂の家」1924年(大正13年)。
今から81年前、今は取り壊されてありません。
昭和天皇が結婚された年、ご存知でしたか。
その前年には関東大震災があったんですよ。
話が古すぎるかなあ。
戦後、その門下生の方々が打放しコンクリート建築を続々と全国各地に作ったといったところです。

 ごたぶんに洩れずこの地方都市にも公共建築物には打放しコンクリートだ!と押し寄せてきました。
1959年、浜松に隣接の村役場、近代化のシンボルとして、庁舎は打放しコンクリート建築。
地元建築会社では初めてのことだったそうです。

 これが打放しコンクリートとの最初の出会。
実に46年前、天皇陛下が正田美智子様と結婚された年ですよ。
今お住まいの新御所は打放しコンクリートとタイル張り。
お手伝いさせていただきました。
平成5年のことです。

 打放しコンクリートは生コンと言ってやわらかなコンクリートを建物の形状に従って作ります。
その形状を支えるものを型枠と言って、大工さんが組み立てていきます。
その型枠は殆どが木材で、流し込んだコンクリートが固まってから型枠をはずします。
これで打放しコンクリートの出来上がり。

 その型枠をはずすことによって、固まったコンクリートが現れます。
後先になってしまいましたが、型枠の中にはコンクリートを支える鉄筋が縦横に入っています。
この鉄筋をかいくぐって、生コンが入っていきます。
ところがこの鉄筋が邪魔をして、型枠内部の隅々まで生コン入って行かないことがしばしばあります。
生コンクリートが満たされない部分はコンクリートに穴があいた状態になります。

e0030813_8115189.jpg
あたりまえのことですよね。
穴のあいた建物は不良品です。
不良品は修理をしなければいけません。
型枠へ生コンを流し込む時点では、型枠の内部の状況は見ることが出来ません。
言い換えれば手探りと言ったのが打放しコンクリート建築の泣きどころかなあ。

 この様なことを頭に描いてもらって、最初に言ったこぼれ話の本題へと入っていきます。
基礎編はこれで終わり、忘れていたことを途中で思い出すことがあるかも。
次回は理屈では通らない作法に挑戦するストーリー!

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# by pikayoshi72 | 2005-07-26 08:09 | ブログ

第一話

 こんにちは、今日初めてブログを立ち上げます。
 よろしくおねがいします。
 私のブログの話題はコンクリートこぼれ話、身近で知っているようで
知らないものの一つ、これを過去46年前にさかのぼって時系列に従
ってお話したいと思います。

 ところでその張本人は何歳?申し上げます、本年72歳。
「吉田 晃」こと私は浜松でコンクリート建築関連の会社を経営してい
ます。
長くやっていますと経営だけでなく、コンクリートの研究も手がけまして、
68歳で大学院へ通ってしまうという人物です。

 はじめに“こぼれ話”の舞台を簡単に説明します。
実は、コンクリートでも打放しコンクリート(建築)にまつわるお話なんですよ。
 最近、おしゃれなブティックやモダンな住宅に打放しコンクリートが使
われていますね。
何となく落ち着いた雰囲気を醸し出すところがいい。
この打放しコンクリートは、実はヨーロッパ生まれで僅か100年前に誕生。
石造よりコンクリートの方が色々な建物が作りやすいからとのこと。
初期の日本ではコンクリートの材料は安いし、仕事も大雑把でいい、
こんなところがコンクリートの取り柄だったとは分からないものですね。

 考えてみるとビルもごく最近のことですね。その一方で有名な設計者の
方々は打放しコンクリートを使っての芸術作品がいっぱい。
NHKのニュース前に時々登場する代々木体育館などその代表作。
ところが、昭和50年代には、この大雑把な仕上げの打放しコンクリート、
その粗さが嫌われて沈没。
その訳は緻密な日本民族の繊細な気質からでしょうか。

 この粗さが災いとなり、本ブログのコンクリートこぼれ話と繋がるとは、
何が基でこうなるのとは人生妙味といったところかなあ。
お話する打放しコンクリートのこぼれ話、第一話基礎編。

次回をお楽しみに。
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# by pikayoshi72 | 2005-07-20 14:50 | ブログ