「打放しコンクリートと共に」 その(73)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上技術1996年10月号、特集「打放しコンクリート仕上げに関する技術体系」を3回にわけご紹介します。
本日はその第2回「3.打放しコンクリート仕上げシステム(PEC21)・STEP-1」をご紹介します。

3.打放しコンクリート仕上げシステム(PEC21)・STEP-1
3-1 脱型保護養生
 脱型から開始される打放しコンクリート表層面の保護保全対策は、竣工に至るまでの打放しコンクリートの仕上げに大きな影響を与える要素である。脱型時に生ずる欠損ヶ所は、不用意なバラシ作業によって生じたものである。
 バールのかけ方の配慮不足から角かけ・表層面の摩擦傷・メジや水切りの角かけがあり、その他寸法出しのための墨打ちなどは、後の除去が困難で特に注意を要するところである。
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次に工事期間表層面の保護養生のため、打放しコンクリート表層面をビニールシート等で覆い、保護する方法などが行われているが、シート取付けの手間と風雨に煽られる等作業上の危険性と表層面を緻密に覆う事が難しいなど解決すべき点がある。
 上層階のコンクリート打設の際、流下したセメントノロ、型枠のアクや鉄筋の錆汁は表層面を流下付着し、竣工まで放置されることによる浸透付着は強固なものとなり洗浄によっても完全に除去出来ない。理想としてはその都度洗浄除去すべきであるが、コストと関連工事とのからみで不可能に近い。
 ここに脱型後から竣工に至る間の打放しコンクリート表層面保護管理方法の技術上の問題点が浮かび上がってくる。
 次に打放しコンクリート表層面の汚染防止工法を紹介する。
 上層階の型枠を組付けた段階で下層階の型枠を脱型し、打放しコンクリート表層面に浸透性吸水防止材を塗工する。本防止材は撥水性を有し、上層階のコンクリート打設時に生じる諸々の汚染物に対し付着防止作用があり、コンクリートの乾燥養生に不可欠な毛管空隙を塞ぐことなく気体の透過性が良いため乾燥養生に支障はない。
 また、この工法は打放しコンクリートの表層面を傷めることがなく素材感を失うことがない。従来のシートの養生方法と比較して遥かに作業上の安全性とコストに効果的である。

3-2 補修・仕上げの分類
 現状打放しコンクリート不具合ヶ所の施工分野の位置づけがなく、補修と仕上げについて適切な分類が不明確である。その原因の一つに打放しコンクリートは脱型した表層面が仕上げであって、その素材を生かすために一切手を加えないのが基本で、素材の意匠性を損なうことのない仕上材を塗布することで仕上げとしている。
 現実には完璧な打放しコンクリートは稀で様々な不具合が生じ対応に苦慮している。その一方で築後の経年劣化の進行は速く環境作用を受けて汚染物の付着と損傷の拡大は打放しコンクリート仕上げの大きな課題とされている。
 この二つの問題点から打放しコンクリートの仕上げ技術の重要性がある。
 ジャンカ、コールドジョイント等の不具合の応急処置として補修がある。補修はあくまで、修整・消去仕上げの前段階であって下地工事と位置づけ、仕上げとは本質的に異なることを明記したい。
 打放しコンクリート仕上げの必須条件は、不具合ヶ所を消去し痕跡を残さず且つ打放しコンクリート表層面と一体化させ、最終仕上げ塗材による変色・ムラ・濡れ等の意匠性を阻害する影響を排除したものである。

3-3 不具合ヶ所及び汚染調査
 保護・養生完了後順次、打放しコンクリート表層面の不具合ヶ所の調査を行う。不具合としてひび割れ・ジャンカ・コールドジョイント・色ムラ等があり、セメント、セメントノロ、エフロレッセンスや錆汁など強固な汚れの付着も図面上記入する。
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 不具合及び汚染付着ヶ所を上記リストに従い、大きさ・部位・数量を記録する。

3-4 不具合ヶ所の下地補修
 ジャンカ・コールドジョイントや角かけ等、欠損ヶ所の形状・規模等状況により下地補修材の調合比率を決める。
 下地補修モルタルは付着・引張強度(10㎏f/c㎡以上)が満たされるポリマーセメント、セメントモルタルであれば特に問題はない。補修は左官工によって打放しコンクリート仕上げ面より2~3㎜下げて充填下地形成をする。

3-5 養生
 補修用ポリマーセメントモルタルによる下地補修後十分な乾燥養生が必要である。少なくとも含水率15%以下になるまで養生する。養生不足のまま修整消去仕上げを施すと後日、ひび割れや変色等を引き起こすので注意する。

3-6 表面洗浄
 下地補修とラップして汚染物の洗浄除去を行う。洗浄によって除去出来ないものは、消去技術によるものとする。

3-7 不具合ヶ所修整消去技術
 ここからが不具合ヶ所に対応した打放しコンクリート仕上げ(PEC21)の技術である。打放しコンクリート表層面に散在する不具合ヶ所の修整・消去仕上げ方法を述べる。
 あらかじめ工場生産された6種類の既調合の修整・消去仕上げ材と、同一修整消去材で塗工された6種の選定プレートから構成される。打放しコンクリート表層面に点在した不具合ヶ所周辺の生地色に前述の6種類の選定プレートを比較し、類似色の修整消去材の選定をする。
 従来、職人の熟練度と勘によってその都度不具合ヶ所毎に生地色に合わせた修整材の調合を現場に於いて行っていたが、より精度の高い仕上げの向上と合理性・経済性を求めて開発された新技術である。
 選定された修整消去仕上げ材を下地補修材の乾燥養生を確認の上、打放しコンクリート表層面に合わせコテ塗りする。打放しコンクリート仕上げ面との一体化を計るため研磨材で平滑に整える。

3-8 打放し補修と修整消去仕上げ

(1)補修方法
 打放し補修に使用するポリマーセメントモルタルは、不具合ヶ所の下地工事として施工するため、仕上げ面より2~3㎜下げて充填補修とするが不具合ヶ所の深さが2~3㎜以下であれば、補修の対象とはしない。

(2)補修材の性能
1.軀体コンクリートと密着一体化した調合ポリマーセメントモルタル。
2.ひび割れや収縮が少ない。
3.変色は可。
4.引張強度が10㎏f/c㎡以上であること。

(3)修整消去材の性能
1.不具合ヶ所の表層面と一体化した色調合のポリマーセメントモルタルであること。
2.変色、ひび割れや乾燥収縮がない。
3.不具合ヶ所部分を限定して修整消去し健全部を残す。
4.不具合ヶ所の痕跡を修整消去することにより、健全化し意匠性を復元する。
5.仕上げ塗材による濡れ・ムラ・変色等修整消去材に変化や影響がない。
6.経年変化が?体コンクリート同等以上の性能を有すること。

(4)修整消去
 補修材の十分な乾燥養生後、修整消去材を表層面に合わせコテ塗りとする。

3-9 修整消去仕上げヶ所の型枠模様造成
 修整消去仕上げ後の表層面を復元する。喪失した型枠模様を特殊カラーコート及び特殊器具により造成する。

3-10 浸透性吸水防止材の塗布
 撥水を主目的に実施される防水材の下地工程である。打放しコンクリートの毛管空隙の防水下地として、浸透性吸水防止材Aシーラー(水性・溶剤型)を含浸塗布する(150g/㎡程度)

3-11 塗膜型防水材
 浸透型吸水防止材Aシーラーを塗布乾燥養生後、塗膜型防水材NY-7090を塗布して打放しコンクリート表層面の生地の質感をキープ、最後にトップコート(フッ素・アクリルシリコン樹脂系)を塗布する。
 従来より高耐久性仕上げ塗材の塗布により生ずるムラ・濡れや不具合跡の顕在化はやむを得ぬものとされていたが、打放しコンクリート(PEC21)・STEP-1によって完璧な打放しコンクリート仕上げを具現した。

3-12 高耐久性防水材
 フッ素・アクリルシリコン樹脂に代表される高耐久性防水材は、その性状から打放しコンクリートとの仕上げの相性が良くないため、塗布することで濡れ色・ムラや変色が生じ、打放しコンクリート表層面の不具合ヶ所を際立たせ著しく意匠性を損なう。打放しコンクリート(PEC21)・STEP-1の一貫した新技術によって意匠性と高耐久性付与を同時に可能とした。

3-13 不具合現象の皆無
 打放しコンクリート表層面の不具合の発生が皆無の場合、仕上げ種別に基づいたものとする(STEP-1フローチャート参照)。
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次回は月刊建築仕上技術1996年10月号、特集「打放しコンクリート仕上げに関する技術体系」、最終回
「4.打放しコンクリート仕上げシステム(PEC21)・STEP-2」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュース、住宅金融専門会社(住専)処理案をめぐり、与野党対立のまま国会は3週間空転したが、住専処理の6850億円を盛り込んだ1996年度予算案が5月10日に成立。大手借り口の不動産会社社長らが逮捕されました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-06-01 07:22 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(72)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上技術1996年10月号、特集「打放しコンクリート仕上げに関する技術体系」を3回にわけご紹介します。
本日は第1回「1.はじめに」から「2.打放しコンクリート仕上げシステム(PEC21)」までご紹介します。
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1.はじめに
 『汚れる、冷たい、耐久性が低い、施工に神経を使う、メンテナンスが大変、コンパネ、剥離剤に変わった今も、ジャンカとクラックとコールドジョイントの恐怖に脅かされながら、建築家の心をとらえて離さない。
そして何故か日本的な空間表現を可能とする』この文章は日本建築学会「建築雑誌」92年2月号の扉に掲載されたものを抜粋引用したものである。
 残念ながら既に取り壊されてしまったアントニン・レーモンド(1924年)の霊南坂の家が、日本で最初の本格的な打放しコンクリート建築ではないかと言われている。これを契機に、その後、全国各地の公共建築物に打放しが採用され、1960年代には打放しコンクリート建築の全盛時代をもたらし今日に至った。しかし、この素朴で重厚感を合わせもつ打放しコンクリートの限りない魅力に反して、入念なコンクリート打設にも拘らず、脱型したコンクリート表層面には様々な不具合が生じ、仕上げを著しく阻害する要因となっている。
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 近年、打放しコンクリートの関心の高まりは仕上げ精度の向上と表層面の意匠性の維持保全に重点が置かれ、耐久性のある仕上げ技術が要求されている。
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 築後より始まる劣化現象は、予想外の速さで補修改修を招き、打放しコンクリートのランニングコストを押し上げる結果となっている。この様なことからメンテナンスを要しない高耐久性の仕上げ技術が強く求められている由縁である。

2.打放しコンクリート仕上げシステム(PEC21)
 打放しコンクリートのライフサイクルを設計・施工・維持保全に大別し、打放しコンクリートの生みの親、育ての親に係る21のキーポイントを抽出し、高品質・高耐久性の打放しコンクリート仕上げの実現を目指し、誕生から改修に至るライフサイクルを系統化し、竣工までをSTEP-1とし、築後の維持保全及び改修期をSTEP-2に分類、打放しコンクリート仕上げに係る問題点と対応技術を提起した。
 新築打放しコンクリートの仕上げを脱型からトップコートまで一貫性をもたせ、設計施工段階で予測不可能な表層面の現象やどうしても逃れることの出来ないジャンカや色ムラ、目違い、汚れや欠損などの発生に対し、予め予算的予防処置を講じ完璧な打放しコンクリート仕上げとするため合理的且柔軟に対応可能とした仕上げ技術である。
 次に築後、経年劣化損傷する打放しコンクリート仕上げを美しく老いていくための維持保全と新築時の打放しコンクリートに甦らせる若返り技術、誕生から歴史を物語る老後まで長期にわたる保全管理の使命を果たす維持保全と改修技術をSTEP-2とし、STEP-1とドッキングし体系的に構築したものである。
 最初に新築打放しコンクリート仕上げをSTEP-1、次に築後の維持保全・改修技術をSTEP-2として打放しコンクリート仕上げのLC(ライフサイクル)をシステム対応図に基づいて述べる。
 なお、本稿は打放し仕上げに関する施工技術に焦点を絞り創成期より改修期に至る設計・施工に付随した諸問題は割愛する。

 次回は月刊建築仕上技術1996年10月号、特集「打放しコンクリート仕上げに関する技術体系」 第2回「3.打放しコンクリート仕上げシステム(PEC21)・STEP-1」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュース、集団食中毒病原性大腸菌「O-157」による集団食中毒が日本各地で発生し、患者は9000人を超え死者は11人にもおよびました。7月13日、大阪府堺市で学校給食が原因とみられる食中毒では女児が死亡、患者は5700人を超す被害になりました。

 それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-05-25 07:19 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(71)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は建築技術1995年10月号、特集「コンクリート工事/困ったときのノウハウ集」、「不具合が発生したときの対処、打放し仕上げの補修」を3回に分けご紹介します。
今回は最終回「補修方法」から「大気汚染対策」までをご紹介します。

補修方法
 繰り返し述べてきたことであるが、不具合箇所の補修にとりかかる前、目前の大きな不具合に目を奪われて取り敢えず充填補修に着手する。
現場関係者の心情はよく理解できるところであるが、結果的には二度手間であるばかりでなく、仕上げのための生地肌が確保されていない状態での補修は、補修モルタルの色調合の違いを招くことになり、斫り取り再補修という最も悪い施工となる。
打放し補修は刺身料理と同じで、手を付ければ付けるほど不味くなる。
次に一般的な不具合箇所の補修方法を述べる。

工程タイミング
 補修には躯体に合わせた材料の調合と、施工手順が大切である。不具合箇所に対する十分な知識と経験をもち、それぞれの施工手順に従い施工する。
例えば、調合樹脂モルタル補修後、養生期間を長くおいたため、強度が出過ぎて第2工程である研磨修整ができず、斫り取って再度補修する羽目となる。
そのため環境作用を考慮に入れた補修後の対応処置が、仕上がりの出来不出来に大きく関係してくる。

型枠模様の造成
 補修ポイントは何といっても、不具合箇所補修後の型枠模様の復元であろう。型枠には本実型枠を始めとして樹脂塗装合板型枠、ベニヤ型枠、鋼板型枠やプラスチック型枠などがある。型枠による色調も使用型枠によって異なる。不具合箇所はこの表層模様が失われているため、補修モルタル充填成形後の重要な仕上げとして高度の技術が集中される。
型枠模様造成の色調合には、耐候性の高い数種のカラーコートに合成樹脂を添加し、しかも補修箇所周辺部の型枠模様に連結させ、復元造成し型枠模様を健全部に一体化させることである。

防水材
 打放し表層面の生地肌に防水材を塗布するが、経年後の防水性能の低下によって躯体コンクリートと補修箇所との違いが歴然としてくるケースが多い。これは補修材と躯体コンクリートの吸水性の違いから生じたもので、その防止方法として躯体と補修箇所とは別々に考え、それぞれに防水材の塗布量、塗布回数などを考慮し施工することである。

表情を変えない
 最近は酸性雨が示すように、大気汚染が打放しに対し汚染物の付着と劣化を促進させている。これに合わせて、従来にはない高耐久性の塗材が採用されている。代表的なものに、超耐候性防水材としてフッ素樹脂やアクリルシリコン樹脂などがある。この種のクリアタイプの防水材は、補修箇所を生地肌と一体化させることが困難で、溶剤系のクリア塗膜防水は打放し生地肌を濡れ色にし、しかも補修箇所を歴然とさせ意匠性を著しく損なうため、着色して補修箇所をぼかす方法を試みている。
このため無色透明の浸透性吸水防止材が多く使用されているが、長期性能に乏しくしかも強い風雨には対応し得ず防水性能は低下する。強靱な透明塗膜で、生地肌に変化を与えない超耐候性防水塗膜材による防水性が、打放しには必要不可欠である。
 なお、打放しに採用される型枠はさまざまであるが、本実型枠とベニヤ合板型枠は、仕上げに艶は禁物である。一方樹脂塗装合板型枠と鋼板型枠は艶が特徴となっている。しかし、この艶も型枠脱型後数回の降雨に接するだけで半減する。このため同一建物の降雨に接する外部は、艶が消失し内部と異なった打放し仕上げとなる。
 この対策は、艶が消失しないうちに防水処置をすることである。なお、消失した艶の再生は可能であり、同時に防水性も付与することを付け加えたい。

大気汚染対策
 フッ素樹脂やアクリルシリコン樹脂による打放し仕上げ防水塗材は、超耐候性保護塗材として華々しく登場して以来10年になろうとしている。
浸透性吸水防止材(撥水剤など)にかわる夢の仕上げ防水塗材であったはずであるが、実用化には一部の特許技術による施工を除いては、打放し生地肌を濡れ色にしコンクリートの色合い、質感や意匠性まで損なわれるなどの諸問題が表面化してきた。
また、大気汚染対策の切り札ともされ期待されたフッ素樹脂は、汚染物が付着しやすいというおまけまでついて迷走中という状況である。
コストが安い、施工が簡単という特徴を生かして打放しに浸透性吸水防止材を塗布されているが、最近の大気汚染に伴う酸性雨によって予想を超えるコンクリートの中性化が進み、防水性能の短期喪失は打放しコンクリートの劣化に拍車をかけている。
大気汚染や酸性雨による汚れの付着は、浸透性吸水防止材のもつ撥水性で打放し生地肌の雨水をはじくことにより、汚れの付着を防止できるとされていたが、大気中の汚染物の主役とされる自動車の排ガスなどの油性の雨はむしろ汚れを促している。超耐候性のフッ素樹脂が親油性のため雨水に含まれている油性の汚染物の付着を招いているとも言われている。
 そこで登場したのが親水性高分子防水材で、塗膜表面が親水性(撥油性)であるため、油性の雨水があたっても塗膜表面の汚れを抱いたまま流下して汚れが付着しにくい特徴をもっている。
親水性(撥油性)の防水性能付与した超高耐久性低汚染型エマルションによって打放しコンクリートの美観と耐久性付与が可能となり、これからの打放し建築の保護対策に寄与することが期待される(写⑩)。
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 次回は月刊建築仕上技術1996年10月号、特集「打放しコンクリート仕上げに関する技術体系」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュース、11月1日、東京臨海副都心と都心部を結ぶ新交通システム「ゆりかもめ」が開業しました。新橋-有明間を無人運転する画期的なシステムで、ゆりかもめが開通することにより国際展示場への交通の便が非常に良くなりました。

 それでは次回をお楽しみに!

 打放しコンク リートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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# by pikayoshi72 | 2009-05-18 07:18 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(70)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は建築技術1995年10月号、特集「コンクリート工事/困ったときのノウハウ集」、「不具合が発生したときの対処、打放し仕上げの補修」を3回に分けご紹介します。
今回は第2回「補修のタイミング」から「不具合箇所の取組み」までをご紹介します。

補修のタイミング
 打放しの不具合箇所補修前の流れと概要は、以上のとおりである。次に補修のタイミングについて述べる。
 脱型直後のコンクリートは、まだ湿潤状態で生地肌は濡れ色を呈している。しかし、打放しの位置する方位、部位によって次第に乾燥状態が異なってくるため、補修の着工箇所は注意する必要がある。
 一般的には、コンクリートの含水率8%以下を確認のうえ補修に入るのがベターである。生乾きの状態でありながら工期が迫っているため急ぎ補修をすることによって、補修材の色違いが後日表面化して違和感の著しい結果を招くことになる。このようなことから不具合箇所の補修は、コンクリートの十分な乾燥養生を待って着工することである。

補修材の性能
 打放し補修に求められる補修材の必須条件として、次のことが挙げられる。
1)躯体コンクリートに近い強度や発現があり、緻密性があること。
2)コンクリートの生地肌に整合する調合樹脂モルタルであること。
3)経時変化が少なく、変色がないこと。
4)乾燥収縮がなく、10kgf/㎠以上であること。
5)中性化を抑制する性能を有していること。
6)塩害の侵入・浸透を阻止する性能を有していること。
 主なものとして6項目を示したが、根本的な問題として補修材の調合にあたり不具合箇所周囲のコンクリートの色調が一定でなく、多様な色模様を呈しているため、どの部分に合わせて調合するか整合性を考慮して、補修材の調合をすることが肝要である(図1・2・3)。
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補 修
表層乾燥
 不具合箇所の補修材の色調合の基本であるコンクリートの乾燥養生は、脱型後2週間(夏期)程度、含水率で8%以下としたい。表層面の乾燥レベルの位置付けが、後々の補修に大きな影響を与えることになるので注意しなければならない。
汚染物の除去
 汚染物の除去は生地肌の乾燥とは関係なく、なるべく早期に手をかける方がよい。汚染物が付着してからの経過期間が長いほど、浸透固着する傾向があるため可能な限り早期に洗浄除去することである。洗浄レベルは、コンクリート付着物の一切を除去し表層面は生地肌とする。
作業手順の再確認
 洗浄後、今まで確認されていなかった諸々の不具合箇所が顕在化し、洗浄前の目視調査結果と異なるケースがあるので、再度確認する必要がある。次に不具合箇所の種類、例えばジャンカやコールドジョイントは下地処理を含め補修方法が異なり、その形状・大きさによっては斫りや防水処理を必要とする場合が出るので、補修方法・作業手順を最初に戻して再構築しなければならない(写⑥,⑦)。
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補修内容の確認
 設計者・現場監督者および仕上げ(補修)業者(個人住宅の場合は施主の参加)による、打放し仕上げの細部に至る打合せが不可欠である。不具合箇所は補修することにより消去され、健全部と一体化されるため、補修前は小さなものとして見逃していた不具合箇所が表面化し、思い付きの追加工事となりがちである。
ここで注意しなければならないものは、小さな補修といえども再びコンクリートの色調合から作業を始めなければならず、補修手間より調合手間の方がはるかに時間を要することである。
このようなことを防ぐために打合せ結果を明確にし、着手前に補修するべき箇所をマーキングしておくことがよい。
例えばピンホールは何㎜以上は充填し、その他はそのままとするなど細部の打合せが大切である。工事進行途中の追加補修は一切しないなど最初に約束されていることであっても、実際に仕上がってくると欲が出てスタート時の計画通りに進行されない場合が少なからずある(写⑧)。
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不具合箇所
 補修を要する不具合には、豆板・コールドジョイント・砂すじやピンホールなど多種多様なものがある。コンクリート生地肌の欠損だけでなく、汚れを軽視してはならない。その付着状況によっては単に洗浄で除去できるとは限らず、補修技術をもって対応しなければならないケースが少なくない。
不具合箇所の発生原因とその形状によって、補修方法が異なってくる。次に不具合の種類と発生原因を、大まかであるが整理してみた(写⑨,表1)。
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不具合箇所の取組み
 大きく分けて補修を要する不具合箇所が僅少で、一定部分だけに限られている場合と全面に不具合箇所が発生し補修が全面にわたる重症の場合がある。
前者の場合は問題は少ないが、後者の場合は全面に補修を加えることになるため、打放し表層面の生地肌がかなりの部分隠蔽されてしまうことになりかねず、最終的に仕上げた状態がどのようになるか事前にサンプル施工などで確認し、補修にとりかかるべきである。そのためにも補修工法の一貫性が重要な要素となる。

補修方法
 繰り返し述べてきたことであるが、不具合箇所の補修にとりかかる前、目前の大きな不具合に目を奪われて取り敢えず充填補修に着手する。
現場関係者の心情はよく理解できるところであるが、結果的には二度手間であるばかりでなく、仕上げのための生地肌が確保されていない状態での補修は、補修モルタルの色調合の違いを招くことになり、斫り取り再補修という最も悪い施工となる。
打放し補修は刺身料理と同じで、手を付ければ付けるほど不味くなる。
次に一般的な不具合箇所の補修方法を述べる。

 次回は建築技術1995年10月号、特集「コンクリート工事/困ったときのノウハウ集」、「不具合が発生したときの対処」の内、最終回「補修方法」から「大気汚染対策」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュース、12月8日福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の原子力発電所(高速増殖炉)「もんじゅ」でナトリウム漏れ事故が発生しましたが、事故に対し動燃はうその報告を繰り返し出したため、動燃の体質が大問題になりました。

 それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-05-11 07:24 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(69)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は建築技術1995年10月号、特集「コンクリート工事/困ったときのノウハウ集」、「不具合が発生したときの対処、打放し仕上げの補修」を3回に分けご紹介します。
 今回はその第1回、「現状」から「補修の姿勢」までをご紹介します。
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現 状
 十分な準備と用意周到な計画のもとに打設した打放しコンクリート、過去の経験と教訓を生かしての完全無欠な打放しコンクリートであったはずが、現実は必ずしも期待どおりとは限らない。
 携わって35年、繰り返されている不具合の発生に伴う不測の事態に対応する取組み姿勢は変わらず、出たとこ勝負の前時代的な対応は大きく時代の変遷する今日、打放し建築にいまだ取り残されているものの一つである。
 稀にしか完全無欠な打放しが望めない以上、計画段階で対応策を組み入れておく必要がある。しかし、設計者の立場からはゼネコンの施工技術の問題と不具合は認めず、打放し技術の低下を容認するような補修計画などできない相談と言ったところが一般的な動向である。
 このようなことを背景にして、打放し建築には不具合に対する補修費の計上はなく、仕上工事として清掃費と撥水剤の塗布程度のもので、不具合のための補修予算などなく発生状況如何では思いがけない多額の出費を余儀なくさせるものとなっている(写①,②)。
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調査と材料
 まず打放し全面に散在する不具合箇所を緻密に調査、図面化し明記する。作業量の推定と、施工方法・所要工期・施工技術者の選定など施工計画書を作成する。同時に、使用材料性能試験報告書等第3者機関の証明する信頼に足る補修材であることが前提条件となる。
 少なくとも補修用モルタルの基本物性の中でも、中性化と付着強度および立地環境によっては塩害に対する塩化物の侵入性試験データなどは、生活環境の悪化に伴う対応性能の信頼性のうえで不可欠なものである。

不具合箇所以外のもの
 脱型したままでまったく汚染付着物のない打放しは稀である。型枠より染み出したアク・セメントノロの流下、エフロレッセンスの析出や錆汁の流下など、見方によって不具合箇所と同レベルの汚損である。
 これらの不具合箇所は補修に先立って、各々適合した方法で除去しコンクリートの生地肌を確保しなければならない。除去方法によっては、汚染物の痕跡を残すばかりでなく、損傷を与え新たな不具合箇所を加えることにもなる。このため汚れはクリーニング業者任せでなく、少なくとも打放し仕上げを熟知したものが立会のうえ作業するのが最適である(写③)。
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補修も仕上げ
 汚染物の除去、不具合箇所の補修の後に、最終仕上げとして防水材の塗工がある。この3工程は一連の仕上げ作業として捉えるべきである。
 打放しは表面の生地肌が仕上げであり、意匠性保護の立場からも、各々分割した施工は期待したものとはなりにくい。
 仕上げ全体像を把握したうえで、この3工程の施工をすべきである。打放しの汚染物除去も補修の範疇であり、補修も仕上げの下地づくりである。防水材塗布はこれらをまとめ、打放し生地肌を具現保護する仕上げと言えないだろうか。
 しかし防水材の材質、性状によっては打放し生地肌を濡れ色にし、補修箇所を目立たせてしまうなど取り返しのつかないものとなる。
 打放し生地肌を傷めることなく、それぞれの汚染物を除去し整合性のとれた補修とし、しかも手を加えた跡を見せない打放し生地肌仕上げが本筋である。この意味から、打放し不具合に課せられた補修と言う表現は、仕上げの1工程であってむしろ前後の2工程を含め打放し生地仕上げと位置づけて衣替えする必要がある(写④)。
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補修前に
 脱型して初めて目にする不具合箇所、しかも追い討ちをかけるような打放し生地肌を覆う多種多様な汚れは、打放しの概念とは大きく異なる生地肌を呈している。
 型枠のアク、錆汁の流下、セメントペーストの付着や白華現象と、どれも打放し生地肌にあってはならないものである。
 しかも補修を要する不具合箇所は、その発生原因によって補修方法が異なり、材料も不具合箇所ごとに調合対応しなければならない。
 このような不具合箇所を補修するにあたり、汚染物が付着したまま補修に取りかかることは禁物である。通常、外壁の仕上げは最後にクリーニングを施して工事中の汚れを除去するが、打放しは先に洗浄し汚れや付着物の除去をしなければならない。汚染物を除去した生地肌が打放し仕上げの表面層となる。
 錆汁・セメントペーストやエフロレッセンスは、長時間放置すると除去が困難になる。錆汁はコンクリート表面より毛細管を経由して深く浸透し、セメントペーストやエフロレッセンスは外部作用を受けて、付着が強固となり除去した跡がハッキリと残る。
 このようなことから、打放し生地肌確保のため汚染物は放置することなく、なるべく早期に除去することが大切である。
 その他、施主に無様な不具合箇所を見られないようにと、脱型後十分な乾燥養生をする間もなく補修に取りかかることがある。しかし、コンクリートの生地肌は乾燥するに従い濡れ色から次第に乾燥した色調に変化するため、補修材の色違いが生じ、折角補修した不具合箇所を再度斫り除去して補修し直す結果となり、二重の手間をかけることになりがちである(写⑤)。
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補修の姿勢
 打放しは脱型した生地肌が仕上げで、打放し外壁の美観と意匠性を損なう汚れや不具合箇所はあってはならないものである。それだけに前述のように不具合箇所を、人為的な補修をしたと意識させないような技術と仕上げが要求される。
 躯体コンクリートと異なった材料調合による補修であるため、経時変化による変色、ひび割れ・浮きや剥落などあってはならず、汚染物の付着を含めた多様な劣化損傷に十分耐え得る性能と信頼性が強く求められる。
 安易な補修は、打放し建築の仕上げを著しく傷つけることになりかねず、慎重な対応と環境作用を受けて経時変化する躯体コンクリートに、歩調を合わせた違和感のない補修技術が不可欠である。

 次回は建築技術1995年10月号、特集「コンクリート工事/困ったときのノウハウ集」、「不具合が発生したときの対処」の内第2回「補修のタイミング」から「不具合箇所の取組み」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュース、11月9日、米大リーグドジャーズの野茂英雄投手が大リーグで新人王に輝きました。 力強いフォークボールを武器に三振の山を築いたトルネード投法に全米の野球ファンは熱狂しました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-05-04 07:32 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(68)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は月刊PROOF1995年3月号、特集「打放しコンクリートの保護」、「事例から考える保護工法」を2回に分けご紹介します。
今回は後編「6.打放しの追跡調査と保護の現状」、「7.SEFシステムの登場」までをご紹介します。

6.打放しの追跡調査と保護の現状
 約15年程前から新旧施工物件の追跡調査を実施している。新築の打放しに係る劣化損傷は表層面の防水性の喪失を起因として,汚れの付着,鉄筋のかぶりコンクリートの厚さ不足ヶ所からの水分浸透,鉄筋の錆化と膨張圧によるひび割れやコンクリートの剥落がある。その他多種多様なひび割れとエフロレッセンスの流出固着である。
 経年劣化した打放しの再生工事後に発生する代表的なものにひび割れ補修後のバイパスクラックがある。クラックは再びエフロレッセンスの流出を促し汚損の元凶である。なお現在は動きに追従するひび割れ補修工法(グランドリフォーム)としてバイパスクラックの再発を抑制防止している。(写真3)
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 未だ打放しコンクリート建築の多くは,この様な劣化損傷に対し,長期に亘る保護機能が施されていないばかりでなく,築後1~2年で性能低下する簡易な揆水材による保護対策が現在に至るも主流である。
 仕上保護の重要性が指摘されながらも,その手法や耐久性については,30数年前の打放しコンクリート仕上と変わらず,再び劣化汚揖の繰り返しに無惨な姿へと変身しているのが現状である。
 打放しコンクリートの耐久性付与は,表面からの水分や炭酸ガス等の浸透を阻止することに尽きると言っても過言でない。

7.高耐久性保護工法打放しコンクリートSEFシステム(吉田工法)の登場
 簡単に新旧打放し現場からの劣化損傷とひび割れ補修を述べた。顕在化された各種の事例から学んだ高耐久性保護工法が打放しコンクリートSEF(セフ)システム(吉田工法)である。
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 従来からの保護塗材は一長一短で,特に長期の耐久性については,保証の限りではない。
 最近,超耐久性付与仕上塗材として,フッ素樹脂系やアクリルシリコン樹脂系等があげられるが,打放しコンクリート素材の生命である生地の意匠性と質感を著しく阻害するヌレ・ムラが生ずるため着色して改善しているが,打放しの奏でる風情を変化させることがある。
 この様な意匠性と劣化損傷を抑制阻止し長期にわたり高耐久性を付与することを可能とした仕上工法がSEF(セフ)システム(吉田工法)である。(写真4)
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 打放しコンクリートSEF(セフ)システムの特徴は,打放しコンクリートの素材の質感を生かした高耐久性弾性樹脂仕上げである。今までのヌレ・ムラを追放した画期的な高度技術で,弾性樹脂のトップコートの表層防水と浸透性・弾性塗膜防水の異種3層の強靭な防水システムで構成されている。
 弾性樹脂の塗膜とNY-7090及びAシーラは,それぞれ耐酸・遮塩性能に優れた3重構造で,弾性樹脂の塗膜と弾性NY-7090を組み合わせることによりコンクリートの乾燥収縮によるひび割れに追従し水分や炭酸ガスを遮断,中性化阻止機能を合わせもった性能を有している。
 本工法は経年劣化した打放しコンクリートにも適用可能で,2タイプからなり,ニーズにあった選択ができる。フリーメンテナンスによる高い経済性と一貫した施工システムによる責任施工の多くの実績が工法の信頼性を高いものとしている。
 なお,一連の工法は打放しコンクリート仕上げの優秀な技術と認められ1993年日本建築仕上学会学会賞技術賞,中小企業優秀新技術新製品賞及び特許(9件)で構成されたものである。

次回は建築技術1995年10月号、特集「コンクリート工事/困ったときのノウハウ集」、「不具合が発生したときの対処」、「打放し仕上げの補修」をご紹介します。

さてこの年の重大ニュース、3月20日、東京都千代田区地下鉄霞ヶ関駅付近で猛毒の神経ガス「サリン」がまかれて、死者10人と5000人近い被害者が出ました。のちにオウム真理教の犯行とわかった。これが「サリン事件」です。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-04-27 07:18 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(67)

 今回は月刊PROOF1995年3月号、特集「打放しコンクリートの保護」、「事例から考える保護工法」を2回に分けご紹介します。
 本日は前編「1.はじめに」から「5.経年劣化した打放しの再生」までをご紹介します。
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1.はじめに
 遡ること1950年代,戦後復興より高度経済成長の幕開きと平行して,RC建築は大都市を中心にして全国的に建てられていった。中でも打放しコンクリート建築は,斬新なデザインと重厚感に溢れた構えは人々に驚きと強い関心を呼んだ。半永久的と思われていたコンクリート建築も繰り返しの環境作用を受けて次第に風化し,打放し外壁には付着生成した汚染物で美観は喪失し,点在する露出鉄筋とコンクリートの剥落は建物の価値観を著しく低下させていった。風化し劣化損傷した打放しの履歴を紐解くことによって初めて正しい保護機能のあり方が明確になる。この様な観点から打放しに携わった30数年間の歩みから学んだことを紹介する。

2.打放し補修の幕明け
 モルタル塗り外壁仕上げの時代であった一地方の庁舎建築に,打放しコンクリートが採用された。今迄に知見した事のない作法と脱型した本実型枠の鮮明な木目は奇異の驚ですらあった。(写真1)
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 しかし正面玄関の支柱に生じた巣穴は,打放し仕上げの意匠性を著しく傷付けた。打設したコンクリートと同一配合のコンクリートで充填補修が試みられたが,コールドジョイント同様より傷跡をより著しくした。しかも軀体コンクリートとの接着不良と乾燥収縮によるひび割れは補修としての機能は果たされずダメージを与えるものとなった。
 この様なことを背景にして補修材の接着性の付与やひび割れ防止を目的に酢酸ビニール樹脂が登場した。今迄の補修レベルから比較するとかなりの改善にはなったが水分に対して溶解するという弱点があり,耐水性のある樹脂に転換を余儀なくされた。

3.補修材の一体化
 そこで酢酸ビニール樹脂に変わって登場したもののひとつにアクリル樹脂である。補修材に添加することによって接着性,クラック防止,強度アップや耐水性の向上に著しい結果がもたらされた。しかし欠損部の補修材にもう一つの大きなハードルがあった。軀体コンクリートにマッチした色調合とその調合材の経時変色である。接着性等の物理的な問題は一応解決されたものの,打放しの生命である意匠性を損なう補修材の変色が未解決であった。部分補修材が軀体と一体化ししかも環境作用を受けても変色しにくい技術の開発が不可欠であった。(写真2)
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4.揆水型防水剤の性能
 打放しコンクリートの防水としてシリコン樹脂に代表される揆水型防水剤が30数年前より定着し今日に至っている。初期性能は期待通りであるが長時間続く降雨や強い風雨に曝されると,雨水はコンクリートの毛細管を経由して内部に浸透し,揆水性が喪失したかの様な現象を呈し外観は濡れ色となる。一旦浸透した水分は蒸発が緩慢となり湿潤状態となるため汚染物の付着の原因となりやすい。

5.経年劣化した打放しの再生
 10年から20程経過した打放しコンクリートの表層面はセメント分が流出し砂アバタ状を呈している。吸水性が高く降雨に接する部位は,多様な汚染物を巻き込んで流下汚損している。ひび割れや鉄筋露出等表面化した劣化損傷は,小規模のものでも水分の影響を受けて加速度的にその傷口は拡大する。
 欠損部の早期補修に止まらず,外壁全面に対し根本的な改修工事が基本である。

 次回はPROOF1995年3月号、特集-打放しコンクリートの保護「事例から考える保護工法」後編をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュース、なんといってもこれです!1月17日、午前5時46分、近畿地方を中心に、強烈な地震が襲った。震源は淡路島。マグニチュード7.2の直下型地震で、神戸、洲本は震度6(烈震)を記録。阪神大震災です! この地震で阪神間や淡路島を中心に各地で建物の倒壊や火災が相次いだほか、高速道路の崩壊、高架の落下、道路陥没に加え、JR、私鉄なども多大な被害を受けインフラ機能は完全にマヒし、死者6432人、約51万棟の住宅が全半壊、一部損壊し、都市型基盤をほぼ壊滅状態に。
もう14年も経ちました。絶対に忘れてはいけない大惨事です。


それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-04-20 07:27 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(66)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上げ技術1994年8月号,特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内最終回「再発防止技術と仕上げ」2.打放しコンクリート再生仕上げ および「おわりに」をご紹介します。

再発防止技術と仕上げ
2.打放しコンクリート再生仕上げ
 各々の発生源であるエフロレッセンスの再発防止処理を施した後、中性化した打放しコンクリートの耐久性と新築時の意匠性付与を目的とした再生工法を述べる。

①表面清掃・脆弱層の除去
 コンクリート表面に付着した汚染物や苔などを高圧洗浄(200kgf/cm2)により除去する。鉄筋の錆汁は科学洗浄剤による併用洗浄とする。
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②コンクリート強化剤の含浸
 コンクリート乾燥養生後、無機質浸透強化剤を刷毛またはローラーにて400g/㎡を2回に分けて含浸塗布する。風化したコンクリート表層部分を緻密化し、また耐酸性を向上させることにより中性化の進行を防止する。
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③露出鉄筋箇所の斫り・防錆処理
 鉄筋の腐食が原因となって生じたかぶりコンクリートの剥離・浮き箇所の斫り取り。錆化腐食部分を中心にして腐食鉄筋の裏側に達するよう健全部まで丹念に斫り取る。そしてグラインダー、ワイヤーブラシなどを用いて腐食した部分を十分ケレンし防錆材を塗布する。
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④エラスティックモルタルによるひび割れ部充填補修
 重複するが躯体コンクリートに発生したひび割れでエフロレッセンスの析出していないものも含める。ひび割れでエフロレッセンスの析出していないものも含める。ひび割れの発生原因が鉄筋の腐食によらない場合、従来からエポキシ樹脂の注入が効果的といわれているが、ひび割れは常に振動・温度・湿度の変化や不同沈下等によりコンクリートの伸縮挙動が繰り返されているため、注入した近傍に新たなバイパスクラックが発生する。このようなひび割れに対しては、普通モルタルの10倍以上の引張変形性能をもつエラスティックモルタルを使用することにより、ひび割れの再発防止と防水性を付与することが出来る。
 施工はひび割れをUカットし、底部をウレタンコーキング、次にエラスティックフィラーを塗布し、エラスティックモルタルで仕上面まで充填成形する。
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⑤調合樹脂モルタルの修整
 欠損部の補修は、その都度躯体生地に合わせた調合樹脂モルタルによる修整とする。調合樹脂モルタルは、接着力・色調・強度・耐候性が高く、また打放しコンクリートの表面の色合いを的確に再現出来る優れた調合樹脂モルタルである。なお表面修整モルタルと躯体の一体化は打放しコンクリートの不可欠条件で高度技術を要する。露出鉄筋廻りのコンクリートを斫り取った部分への埋め戻し(パッチング)は、防錆処理のうえ調合樹脂モルタルを用いて強固に一体化させる。この際かぶり厚を確保するため、鉄筋を内側へ押し込むなどの処置が必要である。
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⑥木コン穴の補修
 木コンは新築時にセメントモルタルによる埋め込みが施されている。経年劣化とモルタルの収縮により、木コンは離脱、あるいは浮いていることが多い。これら木コン穴の残滓を取り除き、新たに底部にシーリングを充填し、接着性・無収縮性・耐水性の優れた調合樹脂モルタルの埋め込みを行う。

⑦打放しコンクリート表面の若返り生地調整・型枠模様造成
 耐候性に優れた数種の顔料・調合材によって、打放し全体の生地調整と型枠模様の復元を特殊刷毛によって施工する。コンクリート打放し仕上げの表面には、型枠から転写された木目模様や型枠の目違いなどが存在するため、再生する上でもこれらをリアルに表現することがポイントである。本システムにおいては、施工物件ごとに建物のコンクリートの生地色に合わせた伸長型セメント系エラスティックフィラーを調合後全面に塗布し、専用に開発された造成道具を用いてコンクリートの素肌を再現し、そこに耐候性に優れた無機質系顔料によって木目模様の造成を行う。この伸長型セメント系エラスティックフィラーは下地のコンクリートに発生したひび割れに追従し、また炭酸ガス・塩分を遮断する機能性下地材である。
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⑧若返り打放しコンクリートの超耐候性アクリルシリコン樹脂系仕上げ
 前記工程を施したコンクリート表面に、超耐候性アクリルシリコン樹脂系トップコートを全面に塗布する。これにより若返り諸工程の保護、表面の汚染防止、防水性能の向上と超耐候性が付与される。
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 次回はPROOF1995年3月号、特集-打放しコンクリートの保護「事例から考える保護工法」をご紹介します。

さて、この年最後の重大ニュースとして松本サリン事件、マスコミの誤報です。6月27日夜、長野県松本市北深志の住宅街で、有毒ガスが発生し、7人の死者と580人の重軽傷者が出ました。 捜査本部は28日夜、被害を受けた第一通報者の会社員宅を殺人容疑で家宅捜索しました。 翌日29日、朝刊各紙は会社員が容疑者であるかのように大々的に報じましたが、会社員は事件への関与を全面的に否定。
 7月3日、現場から神経ガスのサリンが発見されたと捜査本部は発表しましたが、会社員宅から押収された薬品と容器類ではサリンを作ることがほとんど不可能と専門家は否定しました。しかし、マスコミの大勢は容疑者扱いの流れを変えず、その後3月20日に地下鉄サリン事件が起こり、一連の事件はオウム真理教の関与が浮かびあがってきた訳ですが、マスコミが「おわび」をだしたのは10ヶ月以上たってからでした。何ともお粗末な話です。


それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-04-13 07:28 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(65)

今回は月刊建築仕上げ技術1994年8月号,特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内第4回「再発防止技術と仕上げ」1.再発防止技術をご紹介します。

再発防止技術と仕上げ
1.再発防止技術
 結論から述べると打放しコンクリート表層面を完全防水する事により再発防止は可能である。しかし、現実には打放しコンクリート自体多様な環境作用を受けていることや、躯体そのものが日常的に挙動が生じていることなどがあり無理な相談とも言える。特にエフロレッセンスの析出要因であるひび割れは補修後に再びバイパスクラックの発生があり在来技術でひび割れの再発防止する方法は極めて限られている。そこで前述したエフロレッセンスの発生源の再発防止と仕上げ方法を述べる。

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①モルタル笠木の浮き
 最近では打放し建築の天端を、防水モルタルによる笠木の設置は稀となったが、既存の打放し建築には未だ相当数ある。その多くは浮きを伴ったひび割れがあり、躯体コンクリートに雨水の浸透を許し劣化損傷の原因ともなっている。
 この様なモルタル笠木をエポキシ樹脂やその他注入材で注入固定化する補修方法があるが、防水対策としては不十分である。モルタル笠木は全て撤去し天端全面を覆う金属笠木に取替えする方法が良好である。
②外壁の天端
 意匠性の一つに打放し建築の天端を笠木に相当するものを一切排除し、雨水対策として精々天端の両面をカットした程度のものがある。天端の平面は予想外に厳しい環境作用を受け、雨水は一旦天端に滞留したあと流下するため、雨水の受皿の働きを余儀なくされている。この様なことから対応策として屋上防水に準じたもので、意匠性を変えることなく防水性能を付与することの出来る工法が望ましい。しかも躯体と一体化したセメント系の塗膜型防水材での施工がベターである。
③屋上スラブの押し出し
 スラブの押出によるひび割れは、外周のパラペットのひび割れに止まらず防水層の破断損傷が考えられるので、当該箇所の室内への漏水の点検補修後、ひび割れ補修を施す。エフロレッセンスの析出源を中心にしてUカットし底部にシーリング材を充填、エラスティックモルタル押えとする。
④一般外壁
 日射の強い南面と西面で柱と柱に挟まれた大壁を縦、横方向や斜めに走るひび割れがある。貫通したと思われる箇所にはエフロレッセンスの析出があり、積層した結晶体となり固着している。この種のひび割れは、繰り返しの外部作用を受け日常的に伸縮運動が反復されているため、ひび割れ追従性、防水性の高いエラスティックモルタルを主体としたひび割れ再発防止工法が漏水とエフロレッセンスの析出を抑制する方法の一つである。

ひび割れ再発防止工法(特許)
(1)ひび割れに沿って電動カッターを用いて巾12mm程度、深さ15mm程度にU字型の溝を設ける。
(2)Uカット溝部に付着している斫り片、粉塵を刷毛等で除去する。
(3)清掃した部分に対してウレタンプライマーを均一に塗布する。
(4)プライマー塗布後、ウレタンコーキングを行う。充填はUカット溝底部から3mm程度とし、充填後はヘラで充分押さえ下地と密着させて表面を平滑に仕上げる。
(5)次にNY―エラスティックフィラーを塗り残しがないように均一に塗布する。
(6)NY-エラスティックモルタルを充填する。 
   注:0.2mm以下のひび割れは、NY-エラステックモルタルによる木ベラでの塗り込みとする。
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⑤開口部8の字形ひび割れ
 RC建築の開口部に付きものの毎くに発生している。打放し建築もご多分に漏れず開口部を8の字形のひび割れが多発している。特に開口部下を8の字に走るひび割れには、エフロレッセンス析出量は多く打放し建築の美観を著しく損なう。このひび割れも挙動が日常的に生じているため前期の様なひび割れ追従形の再発防止工法が効果的である。
⑥打ち継ぎ(コールドジョイント)
 雨水の接する部位にある打ち継ぎで、防水性能が喪失したものにエフロレッセンスの析出がある。打ち継ぎは貫通している場合がありひび割れ再発防止工法に準じた適切な漏水対策が必要で、しかも打放し仕上げの意匠性を阻害しない打ち継ぎ消去工法を兼ねた仕上げとする。
⑦メジ(水平・垂直)
 化粧メジの認識があるため、メジ底を走るひび割れを見落としがちである。特にシーリング材が充填されている場合、シーリング材の劣化状況がポイントとなる。シーリング材の性能低下に起因した箇所から、雨水がシーリング材の裏面に廻りメジ底のひび割れより浸透、エフロレッセンスの析出を促し、シーリング材の浮き箇所を経由して外壁面へ析出する。劣化ひび割れしたシーリング材はすべて撤去し、メジ底に生じたひび割れ補修後シーリング材をメジ底に完全密着した充填が不可欠である。
⑧巣穴(ジャンカ)
 建築時に発生した巣穴を充填したモルタルが、経年劣化で付着性能低下と乾燥収縮によるひび割れで雨水が浸透、エフロレッセンスの析出を引き起こしたものである。既存の補修モルタルは全て斫り取り、付着性能の良い調合樹脂モルタルで再度充填する。打放し躯体に合わせ防水性も付加した充填材でなければならない。
⑨モルタル補修跡
 乾燥収縮によるひび割れと浮きによる雨水の浸透であるため、既存のモルタル補修材は斫り除去し、躯体生地色に調合した樹脂モルタルにて再補修する。
⑩鉄筋錆化
 鉄筋錆化の健全部分まで斫り出し、充分なかぶり厚さを確保するところまで斫り込む。ワイヤーブラシにて錆を完全除去し直ちに防錆剤を塗布する。次に調合樹脂モルタルを充填補修する。
⑪外階段手摺埋め込みコンクリート天端
 手摺の金属アンカーの周囲コンクリートを斫り、錆化部分の錆除去と防錆剤塗布後、金属手摺の周囲にシーリング材を充填、調合樹脂モルタル押さえし、天端の浮き、ひび割れは弾性注入材を充填、ひび割れ再発防止工法による補修とする。
⑫段裏
 階段踊り場と階段に生じたひび割れ補修後、耐摩耗性の高い歩行用防水塗材を全面に塗工防水処理をする。
⑬庇の鼻先
 庇の鼻先の水切りメジが浅く狭いため機能せず、むしろ滞留を促しているケースである。水切り機能を活性化するためのメジの改修をする。
⑭庇上裏
 貫通したひび割れを経由して庇上裏に浸透、エフロレッセンスが析出する。庇の取合箇所はシーリング材で防水処理し、貫通したひび割れは、ひび割れ再発防止工法による補修後、庇表面を防水する。
⑮⑯バルコニーの軒裏と鼻先
 庇のひび割れからの漏水に起因した雨水は、上裏を伝わり鼻先に滞留してエフロレッセンスを析出固着する。固着状況を見定めた上でケレン、ペーパー掛けにより除去する。ひび割れはひび割れ再発防止工法とし、庇生地色に調合した樹脂モルタルでシゴキ塗りする。
⑰残留木片
 残留木片は斫り除去する。周辺に固着したエフロレッセンスは、ケレンとペーパー掛けで除去する。躯体生地色に合わせた調合樹脂モルタルをシゴキ塗りする。
⑱網状ひび割れ
 エフロレッセンスを析出した箇所をケレンとペーパー掛けで除去する。躯体生地色に合わせた調合樹脂モルタルをシゴキ塗りする。
⑲サッシの面台
 サッシと面台の取合箇所のシーリング材の除去再充填とひび割れ再発防止工法による補修とする。
⑳ピンホール
 大小無数に点在したピンホールは、可能な限り躯体生地色に合わせた調合樹脂モルタルをシゴキ塗りする。
○21シーリング材の劣化
 経年劣化によるシーリング材の収縮固化でひび割れ、浮きや剥離が生じ防水機能が喪失しているため、既存のシーリング材は全て除去し再充填する。
○22木根穴
 既存の充填モルタルは全て除去し、木根穴内部の清掃、セパレータの錆除去防錆剤塗布後、底部へシーリング材を充填、仕上げ面より若干下げて樹脂モルタルを充填する。
○23天井スラブ
外部に接した位置にある貫通したひび割れは漏水をもたらすため、ひび割れ再発防止工法による補修後、全面防水処理を施す。防水工事完了後、天井に走るひび割れはエラスティックモルタルによる補修とする。
○24柱 型
 打ち継ぎやひび割れに起因したもので、ひび割れ再発防止工法による補修とし、躯体に合わせた調合樹脂モルタルのシゴキ塗りとする。
 エフロレッセンスの発生源と各々の除去方法並びに再発防止方法を述べたが、これらは下地調整の範疇で、次に打放しコンクリートの仕上げ方法を紹介する。

次回は建築技術1994年8月号、特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内、最終回「再発防止技術と仕上げ」2.打放しコンクリート再生仕上げ および「おわりに」をご紹介します。

さてこの年の重大ニュースとして、京都の二条城がユネスコの世界遺産リストに登録されました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-04-06 07:26 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(64)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は月刊建築仕上げ技術1994年8月号,特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内第3回「エフロレッセンスの除去方法とポイント」をご紹介します。

 本稿は新築時の打放しコンクリートは別に譲るとして、既存の打放しコンクリートに限定して述べる。エフロレッセンス発生部位、発生状況及び発生後の経過年数によって付着の状況が著しく異なることから下記の様に仮にABCの3ランクに分けて除去方法を示す。
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Aランク:積層氷柱状で固着した状態。
Bランク:積層していないが浸透固着している。
Cランク:単なる白化現象。

除去方法
Aランク
 積層氷柱状のエフロレッセンスは手斫りで斫り除去する。この際躯体コンクリートを傷めない様注意して行う。結晶体を斫り除去した後、ペーパー掛けをしてコンクリートの表層面を出し水洗いする。長期にわたり放置固着した結晶体はコンクリートの表層面に食い込んだ状態にあるので、特にピンホール、毛細ひび割れやあばたの部分はこの様な物理的処理では除去不可能である。除去方法は溶解作用による科学洗浄とし、ケミカルエースR(酸性水溶液)を採用する。ケミカルエースRの濃度によってはコンクリートの表層面を傷めることがあるので事前のテスト洗浄を行ってから実施するのが望ましい。

Bランク
 躯体を傷めない様注意してペーパー掛けを行う。Aランクと同様表層面に浸透固着しているので、水湿しを行いブラッシングを併用してケミカルエースRによる科学洗浄とする。

Cランク
 水湿しを行いブラッシングを併用してケミカルエースRによる科学洗浄とする。

 次回は建築技術1994年8月号、特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内、第4回「再発防止技術と仕上げ」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュースとして、大江健三郎氏がノーベル文学賞を受賞しました。過去ノミネートされた人には谷崎潤一郎氏、西脇順三郎氏、井上靖氏、三島由紀夫氏、安部公房氏、遠藤周作氏、村上春樹氏などがいらっしゃいましたが、受賞したのは川端康成氏と大江健三郎氏の2名だけです。

それでは次回をお楽しみに!
打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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# by pikayoshi72 | 2009-03-30 07:16 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(63)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上げ技術1994年8月号,特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内第2回「打放しコンクリートでよく見かけるエフロレッセンス」をご紹介します。

1.エフロレッセンスの発生源となる場所
 打放しコンクリートは建築途次であっても降雨に接することにより、打ち継ぎや巣穴部分へ浸透した水分によってコンクリートの遊離石灰が溶け出し、エフロレッセンスとして表層面を著しく汚染する。打放し建築の形状によって異なるが、身近に見ることが出来るエフロレッセンスの発生原因となる箇所を下記に示す。

2.エフロレッセンスの析出状況
 エフロレッセンスはひび割れに浸透した雨水に起因したものが多数占めるが、発生源によって析出量や汚損現象が異なる。次にエフロレッセンスの発生源と析出状況を述べる。
①モルタル笠木の浮き
 モルタル笠木の浮きは、モルタルの乾燥収縮によるひび割れが生じ躯体コンクリートとの付着が、この作用を受けて浮き剥離するケースである。モルタル笠木は本来打放しの天端と外壁の防水を目的としたものであるが、その意図は満たされず浮き箇所は雨水の浸透で笠木の下地モルタルと躯体コンクリート双方からエフロレッセンスを析出させている。
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②外壁の天端
 打放しのシンプル性を強調したデザインは、天端に笠木に相当するものは設けず、直接雨水に接触するため天端からのエフロレッセンスの析出が外壁を広範囲に白色斑点状に覆う。
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③屋上スラブ保護モルタルの押し出し
 防水層の保護モルタルは環境作用を受けて膨張伸縮し、その膨張圧で周囲の外壁を押出し水平に連続したひび割れを呈す。これらのひび割れは貫通したものが多く、エフロレッセンスの析出は多量でしかも繰り返しのため積層結晶体となっているものが多い。
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④一般外壁
 ひび割れの発生原因は多種多様であるが、降雨に接する部位のひび割れは大小に拘わらずエフロレッセンスの析出が認められる。ひび割れ巾の大きいものは析出量も多く経過年数を重ねる程、積層結晶体となっている。
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⑤開口部の八の字形ひび割れ
 比較的ひび割れ巾の大きなものがあり、中には貫通し漏水は伴っているものがある。逆八の字形ひび割れからはエフロレッセンスの析出量は多く壁面を斜めに流下付着し、打放しコンクリートの意匠性を阻害する。
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⑥打ち継ぎ(コールドジョイント)
 外壁や梁に見かける事が多い打ち継ぎ箇所は、縁切れしている場合漏水することがある。目視で密着しているようであってもエフロレッセンスの析出によって、縁切りしている事を証明している。
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⑦メジ(垂直・水平)
 外壁に垂直・水平に設けられた伸縮メジには、メジ底にひび割れが走っている場合があり、見落としがちである。メジは外壁の表層面よりメジの深さ分だけ、コンクリートの鉄筋かぶり厚さが不足しているため鉄筋の保護能力が低下する。水分の浸透で鉄筋の腐食膨張圧によるかぶりコンクリートの浮き剥離が生じ、同時にひび割れ箇所を含めエフロレッセンスが析出する。
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⑧巣穴(ジャンカ)
 通常新築時にモルタル充填補修されているが、経年劣化による充填モルタルの付着力低下と乾燥収縮のひび割れによって、その殆どの巣穴は水分の繰り返しの浸透が認められ、析出したエフロレッセンスが表層面に付着している。
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⑨モルタル補修跡
 経年劣化と乾燥収縮等で表面にはひび割れが生じ、雨水の繰り返しの浸透で浮き剥離しているものがある。エフロレッセンスは補修モルタルと躯体コンクリート双方から析出している。
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⑩鉄筋錆化
 かぶり厚さの不足した箇所の鉄筋は浸透した雨水によって錆化し、その膨張圧でかぶりコンクリートを浮き剥落させる。そこより雨水は躯体コンクリートへ浸透、エフロレッセンスの析出を促し同時に錆汁を伴い表層面を汚染している。
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⑪外階段手摺埋め込みコンクリート天端
 雨水の接するところに位置した手摺り埋め込み箇所のコンクリートは、金属アンカーの錆化膨張によるひび割れと天端の浮きにより全面にエフロレッセンスの析出が認められる。
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⑫段 裏
 階段の踊り場に滞留した雨水は、ひび割れから段裏に浸透、溜まり水は床面と手摺立コンクリートの取り合い箇所からエフロレッセンスを伴い流出し、段裏を這う様に流下浸透しエフロレッセンスを析出し、氷柱状の結晶体に生成固着している。
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⑬庇の鼻先
 庇表面を流下する雨水は、庇鼻先の水切りが不十分なため滞留を起こし、滞留した雨水がひび割れや鼻先のポーラスなコンクリート表面より浸透湿潤し、エフロレッセンスの析出を招き、鼻先に析出したエフロレッセンスは結晶体となって付着固化する。
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⑭庇上裏
 躯体外壁に位置する庇は取合い箇所からのエフロレッセンスの析出が多い。縁切れしているために生じたもので、庇表面に滞留した雨水が取合い箇所より上裏に這う様に浸透、拡散した雨水がエフロレッセンスの析出を促し付着している。
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⑮⑯バルコニー軒裏と鼻先
 バルコニーは居住空間の一部を構成し、階下は庇としての機能を果たしている。水勾配が不適切なバルコニーは、雨水の滞留を招き貫通しているひび割れからは階下へ漏水する。必然的に上裏は漏水を伴ったエフロレッセンスの析出があり、居住者への不快感を増大させている。庇の場合と同様、鼻先部分の水切り機能が働かずエフロレッセンスの積層固着や氷柱状となっているものがある。
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⑰残留木片
 建築時型枠の中に残留した木屑で表面に露出又はかぶり厚の少ないコンクリートに支えられているものがある。水分の浸透により湿潤状態となった木屑の汁や時には錆汁が加わって周囲を著しく汚染している。
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⑱網状ひび割れ
 部位の特定なく認められるひび割れであるが、雨水に当る部位では量的には多くないが網状に析出したエフロレッセンスが付着している。
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⑲サッシの面台
 雨水の一時滞留箇所で面台ひび割れ箇所からの浸透によるエフロレッセンスの析出。
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⑳ピンホール
 タコつぼ状の形状をしたピンホールは雨水をコンクリート内部へ引き込み、浸透した水分に促されエフロレッセンスを析出分布状に付着している。
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㉑シーリング材の劣化
経年劣化で弾性力を喪失したシーリング材は、収縮固化とひび割れでメジ底より剥離し降雨の度にその裏側に雨水が浸入、接着性の低下で、浮き隙間が生じ雨水が浸透、エフロレッセンスを析出。
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㉒木根穴
充填したモルタルの乾燥収縮と接着性の低下で、浮き隙間が生じ雨水が浸透、エフロレッセンスを析出。
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㉓天井スラブ
 防水層の経年劣化による機能喪失によるものや、スラブのひび割れで雨水の浸透を招き漏水を伴ったエフロレッセンスの析出が、繰り返し雨水の浸透で積層結晶体となって固着している。
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㉔柱 形
 柱を横断した打ち継ぎやひび割れから浸透した雨水が、エフロレッセンスを析出固着している。
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 次回は建築技術1994年8月号、特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内、第3回「エフロレッセンスの除去方法とポイント」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュースとして、7月8日、日本人初の女性宇宙飛行士として向井千秋さんがスペース・シャトルに搭乗、宇宙に出発しました。女性としての連続宇宙滞在時間世界記録を樹立し2週間後、無事地球に帰還しました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-03-23 07:27 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(62)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は月刊建築仕上げ技術1994年8月号,特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内「打放しコンクリートのエフロレッセンスと再生」を5回にわたりご紹介します。本日は第1回「はじめに」、「打放しコンクリートの汚損」をご紹介します。
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はじめに
半永久的と思われていたRC建築、中でも夢を造形に託した打放しコンクリート仕上げは、その意匠性と現代にマッチした飾り気のない質感が若者の心を引きつけている。素材のもつ自然回帰への微笑は人々の忘れかけていた心に潤いを与え和ませる。この尽きることのない素材も取り巻く社会環境の悪化で、劣化が足ばやに進み黒く煤けている。時の流れに項すべくもなくやつれた姿熊は哀れな情感を呼びさます。打放しコンクリートが、かくも早期に汚損するなど新築時には想像すらしなかったところである。

打放しコンクリートの汚損
 築後数年を待たずして最上階より汚染物の付着が始まる。打放しコンクリート表層面の防水性の喪失と並行して、生物、非生物からなる汚染物がそれぞれ又は複合して生成拡大していく。同時にコンクリートに生ずる多種多様なひび割れは、劣化損傷の起因となり、繰り返しの雨水を受けてその周辺に汚染物を呼び込む一方、エフロレッセンスの析出を促し大きなひび割れは漏水を引き起こす。
 この様に打放し仕上げの汚損は、初期現象として表層の防水性能低下とひび割れが主因である。防水性能の低下はコンクリートの吸水性を大きくして、日射を受けない北面などは、湿潤状態となり苔や藻などの繁殖を促している。汚染物も黒、黒緑、赤紫や茶褐色など多様化しているが、この色調で汚染物の分別も大まかではあるが可能である。ひび割れはその長さ幅によって、その損傷程度は異なるが、内在する鉄筋がひび割れから浸透した水分により腐食膨張しその膨張圧によってかぶりコンクリートを押し出し剥落させるなど、居住空間の安全性までも脅かすことになる。
 その他ひび割れは、炭酸ガスや塩化物等の浸透侵入を招き中性化や鉄筋の錆化等劣化因子による打放しコンクリートの汚損を促進拡大させる。
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多種多様な汚損物の付着と外壁に析出したエフロレッセンス

次回は建築技術1994年8月号、特集「エフロレッセンス-そのメカニズムと対処療法」の内、第2回「打放しコンクリートでよく見かけるエフロレッセンス」をご紹介します。

さてこの年の重大ニュースとして、4月26日、台北発の中華航空エアバスが名古屋空港で着陸に失敗し墜落炎上、乗員・乗客271人のうち264人の方がお亡くなりになってしまいました。

それでは次回をお楽しみに!
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# by pikayoshi72 | 2009-03-16 07:22 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(61)

こんにちはpikayoshi72です。

 今週は建築知識1993年10月号、特集=見たい、知りたい、使いたい!![スーパー内外装材 ]大集合●事例に学ぶ「スーパー内外装材」●ALC外壁対応打放しコンクリートフェイス仕上げを読み切りでご紹介します。この特集は、大阪の(株)松村孝建築・都市設計事務所の代表取締役・松村孝様が執筆されたものです。
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吉田工法による外壁の施工
 吉田工法は、ALC板張りの外壁を、コンクリート打放しと同様な質感に仕上げる斬新な工法である。劣化対策として、ALC板にポリマーモルタルをシゴキ塗りすることにより、ALC板の吸水性・脆弱性を改善するとともに、仕上げ層に超耐候性アクリルシリコン樹脂を塗布することで、メンテナンスフリーの外壁を実現している。
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 施工にあたっては、吉田工法による打放し面をよりリアルに表現するため、ALC板(厚100mm)のジョイント部分を消すことにした。外壁は常に振動や日射などの外部作用を受けるため、可とう性のあるモルタルを充填処理することで、ひび割れの発生を抑制・防止。これにより合板型枠の定尺寸法である900×1800mmの板割りに対応し、ALC板のジョイント部分を消すことができ、形状の多様化も容易にした。
 セパレータの割付けに関しては、直径30mmの木コンシールを作成し、事前に墨出ししたセパレータの割付け箇所に張付けた後、ALC板にポリマーモルタル材をシゴキ塗りし、乾燥後、木コンシールを除去した。剥離除去した木コンシール跡は、打放しのPコン穴のように見せる、意匠上のキーポイントとなっている。
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 さらに吉田工法では、専門技術者が顔料入り特殊樹脂と特殊な手工具を用いて、型枠に樹脂塗装合板を使用したときに生ずる表層面特有の模様を造成。この作業によりコンクリートのもつ力強さ、重厚感を表現する型枠模様が外壁に描き出される。そして最後に、高耐候性のアクリルシリコン樹脂(艶消しタイプ)を塗布し、各工程に使用した材料の劣化防止と防水性を付与することで、メンテナンスフリーの外壁が完成する。
 この吉田工法を採用する場合には、コンクリート打放しと同様に、セパレータの割り付け図面を事前に作成すること、ALC板は面取り加工がされているため、コーナー部をピン角にする場合は下地の処理に注意すること、などが肝要となる。なお、吉田工法は外壁に留まらず、間仕切りや内壁などにも適応可能である。

コストについて
 コストは㎡当たり9000円。単純な比較に過ぎないが、吹付け材と比べた場合は若干高めとなるものの、ALC板の下地強化処理を考慮すれば格差は少なくなる。タイル張りと比較した場合、コストはほぼ同等であるが、タイルの剥離などのリスクは皆無となる。
 また、RC造コンクリート打放しと比較してみると、工期の短縮化、軽量化、コスト的な面で有利となる。さらに、地盤状況などにより選択肢が狭められることも少なくなるため、耐久性に対する信頼度が定着すれば、吉田工法は加速度的に普及すると思われる。
 吉田工法を採用してみた結果、当初の設計の目的は十分にたっせい出来たと思う。S造であるにもかかわらず、RC造固有の打放しの表現が可能となったことは、これからの私の建築を大きく変えるかも知れない。

 次回は月刊・建築仕上技術1994年8月号、特集:エフロレッセンス・・・そのメカニズムと対処療法「打放しコンクリートのエフロレッセンスと再生」を、ご紹介します。

 この年の重大ニュースとして1月19日、皇室会議上全員賛成で、皇太子浩宮徳仁(なるひと様)と元外務省職員だった小和田雅子様との婚約が成立し、4月12日に「納采の儀」(結納にあたる儀式)が行われ、6月9日には「結婚の儀」(結婚式)が行われ、皇居から東宮仮御所までパレードで延べ19万人の人達に祝福されました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-03-09 07:25 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(60)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の
最終回、「まごころ込めてすぐ対応」、「平面文化・究極の仕上げ」をご紹介します。

まごころ込めてすぐに対応
地濃◇社訓が、「誠意を持って即実行」と言うことですが。どのような思いからですか。
吉田◇世は心の時代とも言われています。それは、心が乏しい時代であることを反映していることにもとれます。
 私どものお相手はお客様であり、打放しコンクリートです。心を大切にすること、すなわち誠意。誠意があれば、いずれにも手は抜けません。
 そして、先ほど話しましたように、コンクリートの顔色はみな異なります。現場に出向いて初めて本当のことがわかる。このような経験から何事にもまず行動を起こす。まごころ込めてすぐ対応し結果を出すことを重視しているのです。そのような思いからです。
地濃◇私も研究室の学生たちには、まず好奇心を持つこと、そして執念を持つことを論じ、「執念なくして行動なし、行動なくして成果なし、成果なくして幸せなし」と叱咤激励しています。誠意を持って即実行と言う考えとよく似ていますね。
吉田◇人間と自然を相手にする建築においては、とくにそのことが大切だと思いますね。
 私どもの営業では、言葉を多く言うよりも、まず誠意を持って即実行です。
 洋の東西を問わず「空樽はたたけば響く音がする」、「大阪城は一夜にして建つ」と言うような教訓を心しているからです。

平面文化・究極の仕上げ
地濃◇今までの日本は、もっぱら建設ストックの充実期にありましたね。これからは、この膨大な建設ストックをいかに健全に維持していくかが重要な課題になってくると思います。
 このような背景の中、既に打放しコンクリートのメンテナンスを単に材質維持ばかりでなく、美観維持からの面からも優れた技術を開発され、数々の業績をあげられてきたと思うのですが、今後の仕上げ技術についてどうお考えですか。
吉田◇やって見なければ分からないと言うようなこの種の仕事。つまり、勘や経験に頼らざるを得ないこの種の仕上げ技術を分析し、近代的なものに整理しなければならないと思います。
 例えば材料・調合の開発、平面や角を容易に仕上げることのできるコテの開発などもその一つでしょうね。
地濃◇職人稼業的な仕事を、誰でもができるようなものに変革したいと言うことですね。
吉田◇そうです。それには、現在あるものを容認しないと言う考えが必要のように思えます。
地濃◇打放し仕上げ面の理想はどのようなものでしょうか。
吉田◇手を加えたにも関わらず、その痕跡が判別できないような仕上げだと思います。
地濃◇我が国の建築様式は、どちらかと言えば、たいらな面を重視してきたように思うのです。長屋にしろ、街並みにしろ。それは真っすぐにつながり、その壁面はたいら。それゆえに仕上がり面がとても気になる訳ですね。
吉田◇西欧ではレリーフや彫刻物などの立体物がとても多い。西欧を立体的文化とするならば、日本は平面文化と言えそうですね。
地濃◇日本人は平面を尊ぶ。例えば、墨絵は濃淡でさりげなく立体性を表現している。平面美学とでも言えるものですね。打放し仕上げ面も同様に思いますが。
吉田◇打放し仕上げ面に手を加えても、あくまでも強調せずにさりげなく。この作法が大切のように思います。
地濃◇自然流の平面美学ですね。
吉田◇無風状態になれば、揺れ動いていた全ての木の葉はピタリと止まる。風のあたる葉は揺れ動いていても、隣の風のあたらぬ葉は動かない。自然は決して迎合しない。
 自然の摂理に従い、打放し建築が自然界と調和し、人々に安らぎの場を提供して欲しい。そのような思いで、打放し面に取り組んでいるのです。
地濃◇自然と人間の融合・調和。そこに打放しコンクリート面が生き、命がはぐくまれる。そのように結論されます。            (浜松 吉田氏邸にて取材)
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次回は建築知識1993年10月号、特集:スーパー内外装材大集合「ALC外壁対応打放しコンクリートフェイス仕上げ」を、ご紹介します。

この年の重大ニュースとしてパソコン用のOSソフト、MSウインドウズ3.1が新商品として売れました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-03-02 07:17 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(59)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の第4回目、「事なるは困苦の時」をご紹介します。

事なるは困苦の時
地濃◇打放しコンクリート面の再生技術・工法は、この分野での先駆的な技術・工法のように思うのですが、きっかけはどのようなことにあったのですか。
吉田◇今から35年も前のことです。町役場庁舎の新築現場で、打放しコンクリートの柱脚部に発生した欠陥部の巣穴に、偉く困っていた現場監督を目の当たりにしたのです。問い尋ねたところ、熟練職人でもこの種の欠陥部を完全に直せないと言う返事。このことがきっかけでした。
地濃◇それをあえて企業化したことの発想や着眼点はどんなところにあったのですか。
吉田◇左官業界では左官職人のやる仕事ではないとして、手を付けていなかったこと。簡単な補修と甘くみて、その結果が異質な仕上がりになっていること。単価があって無きに等しい仕事であったこと。などから考えて挑戦した訳です。そして、ビジネスとして成功するには、人のできない仕事をすることが基本ですし。
地濃◇要するに、伝統的な左官技術ではなく、方法のいかんを問わず結果がよければ良いと言う発想からですね。
吉田◇そうです。既存の枠にとらわれることなく、「結果がよければ良し」との考えの基に、独自にこれに臨みました。ですから、開発してきた工法は、研究室で実験を繰り返して得たものではなく、あくまでも現場でそのつど、素直に身に付けた技術と知識の積み重ねによって築き上げてきたものなのです。
地濃◇極めて純粋な発想であり着目点のように、私には受けとめられますが。
吉田◇二十歳の若き頃、私は挫折の状況下にありました。どん底に落ちていたような気がします。そのとき、ショー・ペン・ハウエル著の「存在と苦悩」の本に出会いました。
 この書は、氏の人生論を説くもので、虚栄とは愚かな行為。虚栄心は自分を見失っていることだ。世間に対して生きるのではない。自分を飾らず裸になれ。と言うようなものでした。ことのほか、これに共鳴したように思います。
 この人生観が後の生活や創業後の心の糧となったのかも知れません。
地濃◇まさしく、「事なるは困苦の時」。そして、今日の発展に「人の行く道に花なし、行かぬ道に花あり」の言葉が当てはまるようですね。
吉田◇人間は幸福の時は時間に追われ、不幸の時は時間が余る。若き青春の頃でも、私には時間が余るほどでしたからね。困苦の時に出合った一冊の本に支えられ、また、人の行かぬ道に花があったとも言えるのでしょうね。
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次回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の内、「まごころ込めてすぐ対応」をご紹介します。

それでは次回をお楽しみに!

 この年の重大ニュースとして、3月6日、東京地検が金丸元自民党副総裁を脱税容疑で逮捕しました。金丸信・前自民党副総裁と元秘書を脱税容疑で逮捕。ゼネコン各社などから寄せられた献金を税務申告せずに金融割引債を購入したというもの。 13日、起訴となりました。

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# by pikayoshi72 | 2009-02-23 07:22 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(58)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の第3回目、「再生する心は型わくへの供養」をご紹介します。

再生する心は型わくへの供養
地濃◇経年劣化した打放し建築で、型わく模様が消えて砂じまが現れたもの。黒く汚れた壁面。鉄筋が顔を出し錆汁を垂らしているもの。雨水の痕跡が汚れを助長しているものなど、いずれともみすぼらしいものがありますね。
吉田◇型枠模様が消失した表面は、モルタル仕上げと同じようになり、味気ないですね。
 一説には、これが自然と共に朽ちていく打放し建築の姿であり、これも良しとする考えもあるようです。しかし、建築の使命から考えれば首をかしげたくなりますが。
地濃◇建物を健全に維持していくことは社会資本の蓄積でもあると思うのです。また環境保全の立場からも。この種の仕上げ面を補修するとか再生するとかは、極めて重要なこととおもいますね。
吉田◇私どもは再生と言う観点から、打放し仕上げ面の維持・保全に30余年取り組んできまた。
 経年劣化した表層部の素地の調整から最終工程の超耐候性防水仕上げまでの一貫したシステムを確立し、特に型わく模様の復元に思いを込めています。
地濃◇思いを込めていると言いますと?
 先ほど話されていた、いかにしてそこに生命を宿すか。つまり、「生命はある個体に宿るにすぎない。個はやがて滅び死ぬ。しかし、生命は生きながらえて永続する」と言うことですね。
吉田◇そうです。
 脱型後に捨てられた型わく。コンクリートの転写によって命をなくした木。
 型わく模様の復元に思いを込めることは、彼らへの墓参りなのです。型わくへの供養なのです。型わく模様をその思いで一つ一つ描くのです。描いたもの全てが異なるから生命力を持つものになる。それが再生です。私どもの理念は再生することにあるのです。
地濃◇確かにそのように思います。
 工業的な型台でのプリント造形ではパターンが同一ですよね。これでは自然の風味は得られない。型わく模様の復元は、手作りの心で、甦る再生技術と言えますね。それゆえに苦労も多いのでしょうね。
吉田◇型わく模様を一つ描くにしても、それはコンクリートの顔色に合わせたものでなければなりません。ところが、コンクリートの顔色はセメントや砂の違いで全国各地みな異なるのです。顔色は現場に出向いて初めてわかる。適切な調合や技術を要することになる。色彩、質感を変えることなく再生し耐久性を付与することが苦労の一つです。
地濃◇コンクリートを製造する過程で、試し練りと言うのがあります。
 セメントは工業製品ですから、全国各地、どこで用いてもそうは品質が変わるものではありません。ところが、砂、砂利に至っては品質はまちまちです。これらを練混ぜるのですから異なるコンクリートができあがるのは当然。その上、水和反応によって育っていくため、不確定要素が実に多い材料です。
 目的に応じるコンクリートを得るためには、試し塗りによって調合を見出す訳ですから、これと同様、その調合管理や技術のご苦労は手にとるように良くわかります。
吉田◇ところ変われば品変わる。セメントで造りだすものは生き物ですから、生まれ育つ環境に大きく支配される。実に個性あるものですね。
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次回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の内、「事なるは困苦の時」をご紹介します。

この年の重大ニュースとして1月15日、北海道釧路沖で地震発生。そして7月12日、北海道南西沖地震、北海道から東北地方を中心とした「北海道南西沖地震」が発生しました。北海道の奥尻島で津波と大火事があり壊滅状態となり、死者・行方不明者239名を出す大惨事となりました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-02-16 07:31 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(57)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の2回目「型わく模様は生命の移植」をご紹介します。

型わく模様は生命の移植
地濃◇コンクリートは、自然あるいは社会の脅威に雄々しく立ち向かって、その役割を演じてきていると思います。しかしその反面、自然との融合を隔絶させてしまった。そのコンクリートに私どもは関わっているのですが、専門のコンクリート打放し仕上げについて聞かせてください。
吉田◇打放しコンクリートの特徴は、なんと言ってもコンクリート表面に鮮明に残される型枠模様だと思います。
 一つ一つの型枠の模様がコンクリート面に転写される。それは無機質なコンクリートへの生命の移植であると、私は捉えています。自然界で生きながら得てきた杉や檜が、型枠を介してコンクリート表面に宿り、コンクリート表面に自然が取り込まれる。このことが、人々に優しさと潤いを与えていると思うのです。
地濃◇木の命がコンクリート表面に宿ると言うことは、打放し建築も見方によれば、木の文化と
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吉田◇そうだと思います。
 型枠の脱型により、生命の移植を受けた打放し建物が自然の中で調和し、生きている木のように、長く生きながら得て欲しいと望みたいのです。
地濃◇コンクリート自身も生き物です。生まれた時の環境や育ち方によって千差万別。たくましく育つものもあればひ弱いものもあります。特にその違いは表層部に表れやすい。
 型わく模様を鮮やかに転写したいことや、角をきちんと起こしたいために、セメントペースト量の多いコンクリートが供給される場合も多いと思うのです。これでは、ひ弱な表層部になってしまう。
 また、成功か失敗かは全てが一発勝負のコンクリート打放し仕上げ。だからこそ、仕上げ面の意匠性や耐久性に関わる技術が求められることになるのですが。
吉田◇私どもは以前から、その仕上げについてお手伝いしてきました。
 不幸にして生命の移植ができなかったジャンカやコールドジョイントなどの欠陥部に対して、安易な補修を施すのではなく、いかにしてそこに生命を宿すか。自然界の生命あるものに近づけるか。これが、私どもに与えられた使命だと謙虚に受けとめて、このことを根底に、いたわりと真心で、魂を入れるための独自の工法を開発し臨んできた訳です。
地濃◇仕上げ面が長く生きながらえるためには、耐久性と言う観点からの事前対策も必要になってきますね。
吉田◇事前対策を考える場合、表層面からの水分や炭酸ガスなどの浸透をいかに長期間阻止することができるかがポイントのように思います。
地濃◇防水効果をねらって、撥水材を塗布しているケースもあるようですが。
吉田◇簡易な撥水材では数年先にはその効果は低下するようなこともあって近年、フッ素樹脂系やアクリルシリコン樹脂系の耐候性塗材が取り上げられてきました。しかし、打放し面の生命である意匠性と質感を著しく阻害するヌレ・ムラが生じることがあるのです。
 そこで、私どもは研究を重ね、これを解決。打放し面の意匠性を損なうことなく耐久性を付与することに成功したのです。
言えそうですね。
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地濃◇打放し建築の意匠性の保護と耐久性の向上に道が開けたと言える訳ですね。
潤いある美しい肌は健康な肉体に宿る。
いずれにしても、打放しコンクリートの基本はここにあると思うのですが。
吉田◇そうだと思います。
 健全な低スランプのコンクリートを打ち込む。コンクリートを十分つき固め、適切な養生を施す。打放しコンクリートの基本は密実なコンクリートにあるようですね。

 次回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の内、「再生する心は型わくへの供養」をご紹介します。

 この年の重大ニュースとして 1月19日、皇室会議にて全員賛成で、皇太子浩宮徳仁(なるひと)と外務省職員だった小和田雅子さんとの婚約が成立しました。4月12日には「納采の儀」(結納にあたる儀式)が行われ、6月9日に「結婚の儀」とあいなり、皇居から東宮仮御所までパレードが行われ19万人の人出があったそうです。

 それでは次回をお楽しみに!

 打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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# by pikayoshi72 | 2009-02-09 08:30 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(56)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は建築仕上げ技術1993年8月号、日本建築仕上学会・学会賞受賞者対談と銘打って「打放しコンクリート面の生と命」を6回に分けご紹介します。本日はその第1回目「自然との融合・融和」をご紹介します。
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自然との融合・融和
地濃◇一文字瓦の勾配ゆるやかな屋根。その数寄屋づくりのたたずまいに木々の緑が実に良く映えますね。
 丈15mほどの黒マツ・赤マツ、雄大で色鮮やかなもみじ、つくばいに滴る水の音、セミの声、風に揺らぐしだれもみじ、木々の間からの心地よい涼風・・・・。いつしか忘れかけていた自然、それを享受できる。そんな思いがしますが、このような空間づくりをご自宅に求められたことには、何か強い思い入れがあったのでしょうか。
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吉田◇人間も自然界においては、一動物に過ぎないと思います。だから、可能な限り自然環境に溶け込む。朝日を迎え、夕日を送る。自然界から与えられる喜怒哀楽を素直に受けとめる。そこに快適な生活が生まれるのではないかと。したがって、自然環境下の木々の中に生活の場が設けられるのが本来の姿のように私には思えたのです。
 そこに、遠州・三方原台地の自然林のこの地に、これを具現化した訳です。黒マツや赤マツなどは当時からの自然林なのです。
地濃◇アメリカ西海岸のペブルビーチ界隈の別荘地を旅した時、目にした光景は、家や人は自然界のリス程度の大きさでしか見えませんでした。風光明媚な地なのに、家や人はぽつり、ぽつり。なぜなのだろうかと思い、尋ねてみましたところ、自然界の樹木が立枯れしない限り、購入した土地といえども、新築や増築はできないということでした。
 まさしく、自然環境を尊重し、そこに人間が溶け込むべきことの考え方のようです。
吉田◇自然を壊さないで自然の中に建物を造る。すばらしいことですね。ところが、自然を従とするような考え方だと自然破壊、環境破壊が生じてしまう。このようなことを無限に広げていくと、人間らしく生きるための環境を失い、やがては人類が滅亡してしまうと言うことになりますね。
地濃◇その通りだと思います。我が国では国土が狭いと言うこともあってか、自然を従とするような建物づくりが多い。本末転倒なことですね。
吉田◇自然界の草木や鳥類の営みに接していれば、無意識のうちに何かを感受している。その何かが新しい発想を生み出してくれるのではないでしょうか。
 自然環境下に身をゆだねていますと、自分の強さや弱さが見えてくる。そして、自然の勢いが明日への活力を呼んでくれるような気さえします。緑のフレッシュエアーとでも言えるものでしょうか。なにしろ、日常の仕事に没頭している者にとっては、無機質化した精神状態になりがちです。自然との融合はとても大切なことのように思えるのです。
地濃◇日本人は元来、恵み豊かな森林風土の中で、自然と融和することに幸せを実感してきたと思うのです。近くの川で魚を釣り、裏山で山菜を採る。住まいにしても同じことが言えたのでしょう。山の中で呼吸をしてきた生命ある木を、木の持つ性質を損なうことなく活かして、柱や梁と言う形でそれを組み立て、その空間の内と外で人と自然がうまく融合すると言うように。
吉田◇言い換えれば、日本の木の文化と言えるものでしょうね。
地濃◇木が主となることの意味での漢字が柱。柱と柱のあいだが間。そして間という文字からできている言葉に、間取り、間合い、間違い、間引き、間もなく、間に合う、間抜け、間尺、間仕切り・・・・。
 このように、「木」を基点とした言葉がたくさん見受けられます。このことからも木の文化を象徴していることがうかがえますね。
吉田◇確かにそうですね。言葉ひとつにしても、日本人の暮らしの中で、木との関わりが大きいことがよくわかります。
地濃◇それに関連して、「風」からできている言葉もたくさんありますね。風光、風味、風景、風潮、風流、風情・・・・。
吉田◇これも、自然との融合から生まれた言葉でしょうね。風という字からも、自然の尊さやありがたさを教えられるような気がします。
地濃◇ところが今日に至っては、大都市の過密化や地方都市の近代化によって、自然との融合がめっきり減少してきましたね。
吉田◇都市においては、「コンクリートジャングル」とか「グレーの街が色を欲しがっている」とかの言葉が生まれるくらい、木造がコンクリート造の建物に変わってきた訳ですからね。
地濃◇特定な場所に、しかも限られた土地に人々が集中し生活を営むには、横に縦にと重なり合って生活せざるを得ない。このような都市環境下の建物は、必然的に、ものを遮断することのできる材料で構成された建物でなければなりません。
吉田◇それは、外界の熱、音、光、風、水など完全に遮断し、地震や火災などの外敵から身を守ることのできる建物と言う意味からですね。
地濃◇この点、数千年以上の歴史を踏まえてきたコンクリートは、その強さと耐久性のほかに、十分な厚さと広がりの面をもって、火、光、熱、音、水、などを完全に遮断することのできる能力を有しています。
 だから、コンクリートは人々が横に縦にと重なり合って生活する場をしつらえる格好な遮断材料になった。それがコンクリートジャングルを生み出したのではないでしょうか。
吉田◇「火事と喧嘩は江戸の華」というような、のどかな時代は遠くの昔ばなし。
 火に弱い木造では、出火すると急速に延焼拡大し、建物全体に街全体に火がまわる。個人はもとより、都市全体の生命財産をも失うことになる。そこで、コンクリート造でこれを解決した訳ですね。
 自動車騒音にしてもまたしかり。
 これらの結果が、逆に自然と人との融合を隔絶させることになった。そのように言えると思いますね。

 次回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の内、「型わく模様は生命の移植」をご紹介します。

 この年1993年の重大ニュースとして5月15日、Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)が誕生しました。日本のサッカーは新しい時代を迎えました。「チケット不足」にも煽られて日本全国は熱狂的なサッカーブームとなった。当時の選手にはカズ、武田、ラモス、ジーコなどの蒼々たるスター選手がいました 。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-02-02 07:20 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(55)

 今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその最終回「リニューアル物件の分類」をご紹介します。

リニューアル物件の分類
 昭和53年2月より平成4年3月までの14年間小社が施工した打放しリニューアル物件は421件である。これらを打放しリニューアルするまでの築後の経過年数・型枠面積・型枠種別・地域別および発注先をそれぞれ調べてみた。これは、あくまで小社の打放しコンクリート若返りシステム(吉田工法)によるものであることを前提にしてご理解いただきたい。また,依頼から調査・実施までのフローを図6に示す。
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①経過年数
 経過年数の短い5~10年以内でリニューアルを実施した物件の主な背景は
●汚染物の付着が目立ち始めた
●ひび割れによるエフロレッセンスと漏水の発生
●鉄筋の露出と錆汁の付着
●コンクリート欠片の剥落
などである。特に鉄筋のかぶり厚さの不足した箇所は,錆化鉄筋の膨張圧でコンクリートが剥落し,居住空間の安全性が阻害され,同時に美観の低下が著しいことによるものと思われる。

②型枠面積
 リニューアル物件のうち,3000㎡未満が全体の90%以上を占めている。これらの物件は公共建築物や事務所ビルが主で,不特定多数の利用者の安全性確保と劣化汚損による美観の低下によるもの。

③型枠種別
 1950年代より1960年代にかけての打放し建築のほとんどは小幅板型枠で,リニューアル施工物件の93.3%を占めている。当時は,土木構造物を除いて打放しは小幅板型枠が主流であった。合板型枠は1965年頃より参入してきたが,まだ少数派であった。

④地域別
 経済原則に従い,打放し建築物件も関東地域が圧倒的に多い。関西に比較して中部が10%余多い理由は,小社が中部地域を拠点に活動したことによる。

⑤発注先
 全体の50%近いNTT局舎の施工実績は,東京オリンピック当時“1軒に1台の電話架設を”とのキャッチフレーズで全国各地に電話局舎が建てられ,そのリニューアルによるものである。局舎建築にあたっての外壁基本設計が,打放し柱・梁とタイル張り外壁で構成され,その後各局舎とも経年劣化によるリニューアルの必要性が順次到来したものと思われる。

 打放しリニューアルの主流は,原設計に基づいて意匠性の回復である。厳しい外部の環境作用を受けて,往年の打放し建築の面積は疲弊し,表面の一部は劣化損耗し,時の流れと老いを感じさせている。
 一方,この劣化した打放しを補修・改修する機会を利用してイメージチェンジし,意匠性を一新してしまうケースがある。
 しかし,打放し建築の位置する周辺環境によっては,まったくの違和感を与えることになりかねない。縁に包まれ市街地の喧噪を排除した自然環境に,樹木の成長と重なり合って同化したたたずまいは,打放しならではのものではないだろうか。単に打放しだからとこだわるだけでなく,地域の景観に占める価値観も,打放し改修工法の選択肢の主要な条件の1つである。打放し建築は,近代建築をうたう金属外壁やタイル張り仕上げに比較し疲れを感じさせないばかりか,心の安らぎさえも無意識のうちに与えるものがある。
 打放し建築の醸し出す自然回帰の心情と意匠性を守るために,よりリアルにしかも長期にわたり美観と耐久性を付与した技術の向上にいっそう研鑽したい。

 次回は建築仕上技術1993年8月号,学会賞受賞者対談と銘打って「打放しコンクリート面の生と命」をご紹介します。

 この年,最後の重大ニュースとして4月25日,ロック歌手の尾崎豊が東京都足立区の民家の庭で半裸のまま朦朧としているところを発見され、容態が急変し死亡しました。直接の死因は肺腫瘍であったが、体内には致死量を超える覚せい剤が認められたそうです。 追悼式に3万人のファンが参列。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-01-26 07:18 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(54)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその第3回目「打放しリニューアルの仕様と施工」「打放しリニューアルに際しての改善提案」をご紹介します。

打放しリニューアルの仕様と施工
 調査結果報告書に基づき工法選定後,リニューアルの詳細施工方法を特記仕様書にまとめたもののうち,打放し関係箇所を抜粋して記す。(表2)なお,施工要領書は特記仕様書と重複するため割愛した。
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 施工は図2のような順序で行う。施工状況を写真16~21に,リニューアルが完了した外観を写真22,23に示す。また,処理部の詳細を図3,4に示す。
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打放しリニューアルに際しての改善提案
 打放し建築のリニューアル施工物件を経年後に追跡調査し得た改善工法を提案する。
①金属笠木の採用
 打放し建築の最上階の天端仕上げは,当時モルタル笠木が主流となっていた。そのほとんどは浮き・ひび割れが生じている。これらは,改修時にすべて補修され現状回復はされるが,モルタル笠木のままでは天端の防水対策として不十分である。
雨水や汚れ防止対策には,モルタル笠木を金属笠木でカバーリングするのが不可欠である。取付位置は,打放し前面より20mm以上はね出し,雨水の水切りをよくし,打放し面への雨水の垂れ流しを防止するための間隙をもたせて取り付けることである。(図5)
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②手すり・ベランダ腰壁の防水処理
 階段手すりやベランダの腰壁など雨水のあたる箇所の天端は,表面の劣化が著しい。これら表面は調合樹脂モルタルでしごき塗りして下地成形し,打放しに合わせた強靱な防水仕上げを施す必要がある。
③かぶりコンクリート厚さ不足箇所の鉄筋処理
 主に庇上裏で規則的に位置した鉄筋が錆化して,錆のしみ出しがあるが,かぶりコンクリートを剥落させるには至っていない。しかも水分の浸透の形跡がなく,鉄筋の錆化膨張によるひび割れがないため安易な処置ですませる傾向が多い。しかし,これらはすべてはつり出し,しかもかぶり厚さを考慮に入れた深さまで溝はつりして鉄筋を押し込み,少なくともかぶり厚さ10mm以上は確保したい。(図3)
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④ひび割れ処理
 日射温令の繰返し作用を受けて,ひび割れは補修後も継続的に繰返し伸縮している。ひび割れの動きに追従する弾性材質による補修が大切である。エポキシ樹脂やポリマーセメントモルタルなど硬いもので補修した場合,バイパスクラックが生じ再び雨水の浸透を招くことになり,打放しリニューアルの成果が失われることになる。(図4)
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⑤超耐候性防水材の塗布
 防水性能の低下喪失による打放し面の雨水の浸透は,内部鉄筋の腐食を引き起こし,劣化損傷を速めることになる。リニューアルの重点項目として,超耐候性防水材であるフッ素樹脂やアクリルシリコン樹脂を塗布することが望ましい。ただし,フッ素樹脂は汚れが付着しやすいと言われている。

 次回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」最終回「リニューアル物件の分類」をご紹介します。

 この年1992年の重大ニュースとして9月12日、米NASAのスペースシャトル「エンデバー」で毛利衛が飛び立ち、8日間の宇宙飛行をしましたが、その際スペースシャトルから「宇宙授業」が中継されました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-01-19 07:27 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(53)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の内、「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその第2回目「打放しリニューアルの手順」をご紹介します。

打放しリニューアルの手順
某市庁舎ビルの打放しリニューアルをモデルにして,手順を紹介する。この建物は竣工後25年が経過した庁舎で,構造はRC造,地上8階建である。柱・外壁はすべて打放しコンクリートで,外壁面積が12000㎡ある。この建物のリニューアルに至るまでの過程を順に追って記述する。

外壁調査
 まず,市庁舎の打放し外壁の調査診断を行った。この調査診断の目的は,補修・改修の要否の判定と工法の選択で,現況は外部の劣化損傷状態からして安全性が懸念され,早急な対策が求められていた。調査内容は,第1次診断から第3次診断レベルまでをまとめて実施した。調査内容は表1のとおりである。
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調査結果と原因の推定
ひび割れの確認
確認したひび割れの主な発生原因は,温度・湿度の環境変化に伴うコンクリートの乾燥収縮・振動などによる複合作用と推定される。(写真9)
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また,屋上部の壁面はひび割れの補修工事がなされているが,その補修方法が不十分なため再発しているものがある。
露出鉄筋の確認
 確認した露出鉄筋は,いずれもコンクリートのかぶり厚さ不足と防水性能の喪失に起因して発生したものと考えられ,雨水・炭酸ガスなどの浸透により内在鉄筋が腐食膨張し,かぶりコンクリートを押し出し剥落に至り,鉄筋が露出したものと推定される。特に,方立に確認した露出鉄筋は著しい劣化状況である。(写真10)
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モルタル補修跡の確認
 確認した補修跡は,新築当時に発生した不具合箇所をモルタル補修したものである。経年劣化により補修材の強度低下と破損で,部分的に浮いているものと推定される。(写真11)
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コールドジョイント
 確認したコールドジョイントは,下層コンクリートの凝結硬化開始後に上層コンクリートを打設したため(コンクリートの打継ぎ),一体化が阻害され生じたものと推定される。(写真12)
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⑤木屑の確認
 コンクリート打設時に桟木が型枠内部に残っていたものと推定される。(写真13)
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コンクリート圧縮強度の測定
 コンクリートの圧縮強度はシュッミットハンマにより測定した。図1に結果を示す。
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中性化深さ測定
 測定箇所からのコア採取状況と中性化の状況を写真14,15に示す。
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 フェノールフタレイン法による中性化深さ(測定値)は,建物経過年数から算出した平均中性化深さの値を下回っているが,南面・屋上②については平均中性化深さ以上である。

 次回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」第3回「打放しリニューアルの仕様と施工」「打放しリニューアルに際しての改善提案」をご紹介します。

 この年の重大ニュースとして6月15日,PKO協力法案が成立しました。自衛隊のPKO参加が可能になってしまいました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-01-12 07:01 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(52)

こんにちはpikayoshi72です。

 みなさん、あけましておめでとうございます。
 皆々様にとってこの一年がすばらしい年になるよう、心からお祈りします。

 また、今年も一年、私の拙いブログにお付き合い下さい。
 それでは早速ご紹介していきます。
新春第一号はこれだ!!

 今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその第1回「はじめに」から「打放しリニューアルに至るまで」をご紹介します。

はじめに
35年前,打放しコンクリートとタイル貼りで構成されたRC造3階建某庁舎新築工事が,打放しコンクリートと筆者との出会いの最初である。その後,1960年代に入り高度経済成長に支えられ,建築ブームの到来と並行して打放し建築が全国各地において続々と建てられた。小幅板をふんだんに使用しての板目・木目模様のあざやかな打放し建築は,多くの人々に驚きと強い関心を持って迎えられた。
 その打放しも長く厳しい風雪に耐えながら,表面は黒く汚れ,ところどころに鉄筋が露出し,ときおり新たなコンクリートの剥落とともに忍びよる老化にあえいでいる。このような打放しの惨状に,再び元の活力と重厚な意匠性を取り戻すことはできないものか,というニーズに応えて生まれたのが,打放しコンクリート若返りシステム(吉田工法)の始まりである。14年余にわたる試行錯誤と追跡調査による改良技術の積み重ねで,新築時の設計意図を再び活かし,劣化損傷した打放し建築を躯体より強化改修し,次世代への橋渡しを担った復元技術の1つである。

打放しのリニューアルに至るまで
 リニューアルは,頭上よりコンクリートの欠片が落ちてきた,漏水がある,汚れが目立ってきたなどの,安全性と住環境の美観の低下が端諸となる。
打放しは,躯体そのものが仕上げを兼ねているため,外部作用による多様な影響をそのまま受けて劣化へとつながっていく。従来より,打放し外壁の防水対策は撥水材系のものが主流で,打放しの表情を変化させない点が評価されている。しかし「美人薄命」の諺どおりその性能はきわめて短く,防水性の低下で打放し表層面は降雨のたびに吸水コンクリートと化す。浸透した雨水は汚れ・ほこり・カビ・コケを呼び,ひび割れからは漏水やエフロレッセンスを誘発させ,かぶり厚さの不足した鉄筋は錆化していく。このような現象と過程を経て,リニューアルの必要性が生じてくる。いずれの打放し物件も複数の劣化症状を伴い,しかも共通点として,表層面の防水性能がすでに低下しもしくは喪失している事である。
これらの打放し外壁の主な劣化症状を示すと,
①汚れ(写真1),②カビ・コケの付着(写真2),③ひび割れ(写真3),④鉄筋露出(写真4)
⑤浮き・剥離(写真5),⑥欠損(写真6),⑦漏水(写真⑦),⑧木屑(写真8),のようになる。
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 次回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」第2回「打放しリニューアルの手順」をご紹介します。

 さて、この年の重大ニュースとして共和汚職事件があります。北海道のリゾート事業に絡み、鉄骨加工会社「共和」から8千万を受け取ったとして、阿部文男・元北海道開発庁長官が受託収賄罪で起訴されました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2009-01-05 07:20 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(51)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号,特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」を3回にわたりご紹介しています。本日はその最終回「ALC外壁対応/打放しコンクリートフェイス仕上げ」をご紹介します。

はじめに
 ALCは1934年、スウェーデンで開発された珪石とセメントを主成分としたコンクリート製品で,軽量で耐火性・耐久性・遮音性・加工性に優れた建築材料である。わが国では昭和38年頃から導入,建物の外壁・屋根に使用されてきた。しかしALCは吸水性が高く,表面強度が小さく,仕上げ材の選択によっては,その優れた建築材料であるにもかかわらず,耐久性を著しく損なうものとされ,仕上げ材に大きく左右されているのが現状である。
 ALCを外壁に採用した建物の主な目的は,その安価な工事費と工期の短縮化という2点にある。ALCをより耐久性のある外壁とするには,ALC表層面を改質し,吸水性と表面強度のアップが不可欠である。
 劣化原因の多くはALCの内部に侵入した水分によるもので,仕上げ塗材の僅かの故障であっても,吸水膨張の挙動が大きく働き,並行して吸水することによる強度の低下と,寒冷地においては凍結融解による損傷が生じる。そのため,表面の仕上げ塗材だけの防水仕上げでは,対応が困難であり,表層面を改質した耐久性の高いALC外壁が望まれている理由である。

ALC外壁の故障
 ALC外壁に発生した主な劣化損傷は次の通りである。
亀裂・剥離・内部鉄筋の腐食・結露・カビおよび寒冷地での凍害・その他目地シール膨れ・切れである。
これらの劣化原因は,ALCの高い吸水性と仕上げ塗材の損傷に起因したもので,ALCの表層面の耐水機能を強化しなければならない。

新開発技術
 今回開発された打放しコンクリートフェイス仕上げは,ALCに打放しコンクリートの意匠性とコンクリートに近い耐久性を表層面に付与したものでALCの弱点である吸水性を抑制,ポーラスな表面を密実強化して表層面の強化を図った。

打放しフェイス仕上げの特徴
 当工法の特徴は,躯体であるALC表層面そのものを改質し密実強化することにある。通常行われている手法は,仕上げ塗材による外壁の表面保護と化粧仕上げを目的としたもので,当工法の相違点はALC表層面を強弾性力を備えたポリマーモルタルで,多孔質な表面を充填密実にし,躯体と一体化させる点である。

工程の概要
 水分の浸透を阻止するNY-8080シーラーを塗布し,付着性・防水性能の高いNY-エラスティックモルタルをしごき塗りして多孔質面を充填,表層面を柔軟密実にする事により,表層面の強化改質と防水性能を付与させた。このようなALC表層面の強化改質に高い防水性能と,温令・乾湿の環境作用に追従するNY-エラスティックフィラーを塗工することにより,二重の保護機能を与え基盤強化した。次に打放しコンクリート型枠模様を造成して打放しコンクリートの意匠性を表現,トップコートに超耐候性アクリルシリコン樹脂系を塗布し,高耐久性を持たせ打放しコンクリートに近い耐久性を付与した(写-1)。
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ALC表層面の防水性能の向上と改質強化により,外壁の劣化損傷の原因である仕上げ塗材の故障による水分の浸透と吸水膨張による損傷を阻止,型枠模様の意匠造成し打放し仕上げとした。工程の概要を図-1に,フローチャートを図-2に示す。
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おわりに
 ALC外壁の弱点が補強改質され,打放し意匠仕上げが可能となったことにより,従来の限られた外壁仕上げ塗材から脱却し,ALC外壁の仕上げの多様化と選択肢の幅が大きく開かれたと言える。
 打放し仕上げの重厚な雰囲気と自然回帰を思わせる意匠性は,多くの人々の関心の的であり,打放し使用型枠の種別だけでも,樹脂塗装・ベニヤ・本実そしてメタルフォーム等があり楽しみでもある。ALC建築をRC打放し仕上げと同様な意匠性と耐久性の確保により,都市環境にマッチしたALC外壁の新仕上技術として成長を期している。

 次回、来年新春第1弾は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」をご紹介します。

 さて、この年の重大ニュースとして「東京佐川急便」の渡辺広康前社長ら経営陣が、広域暴力団稲川会の石井進元会長らの関係会社などに、巨額の融資・債務を保証し、逮捕されました。捜査の中で、自民党の金丸信元副総裁に5億円渡ったことが発覚、東京地検は政治資金規正法違反にあたるとして略式起訴し、金丸元副総裁は罰金20万円を支払いました。そして10月14日には議員を辞職する事態に、、、、

それでは次回をお楽しみに!

 今年一年私のブログにお付き合い頂き、ありがとうございました。
来年も頑張りますので宜しくお願いいたします。
良いお年をお迎え下さい。

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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# by pikayoshi72 | 2008-12-29 09:46 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(50)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号,特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」を3回にわたりご紹介します。本日はそのうち第2回「劣化したコンクリート打放し仕上げの再生」をご紹介します。

打放しコンクリートの劣化現象として,内在する鉄筋の腐食と,コンクリートのひび割れが代表的なものである。コンクリート中の鉄筋が腐食することにより,その膨張圧でかぶりコンクリートが押し出され剥落するなど,場合によっては人災につながる危険性がある。またコンクリートの乾燥収縮などひび割れが発生すると水分・炭酸ガスなどの劣化因子のコンクリートの侵入を容易にし,劣化の進行を加速させることになる。
打放しは表層の防水性能低下と平行して躯体そのものが仕上げであるため,タイル,仕上塗材などを施したRC建築物に比べ劣化の進行速度は著しく,汚れの付着に始まる劣化は表層の意匠性を損ない,耐久性の低下を招くことになる。以下に紹介する打放しコンクリート若返りシステムは,このような劣化損傷したコンクリート打放し仕上げを,再び躯体より強化することにより建物に耐久性を付与し,失われた意匠性の復元を図る工法である。

①表面清掃・脆弱層の除去
 コンクリート表面に付着した汚染物や苔などを高圧洗浄(200kgf/cm2)により除去する。鉄筋の錆汁は化学洗浄剤による併用洗浄とする。

②コンクリート強化剤の含新
 コンクリート乾燥養生後,珪フッ化物浸透強化剤を刷毛またはローラーにて400g/㎡を2回に分けて含浸塗布する。劣化したコンクリート表層部分を緻密化し,また耐酸性を向上させることにより中性化の進行を防止する。

③露出鉄筋箇所の斫り・防錆処理
 鉄筋の腐食が原因で生じたかぶりコンクリートの浮き・剥離箇所の斫り取り。錆化腐食部分を中心にして,腐食鉄筋の裏側に達するように健全部まで丹念に斫り取る。そしてグラインダー・ワイヤーブラシなどを用いて,腐食した鉄筋を十分ケレンし防錆剤を塗布する。

④NY-エラスティックモルタルによるひび割れ部充填補修
躯体コンクリートに発生したひび割れ補修方法として,ひび割れの発生原因が鉄筋の腐食によらない場合,従来からエポキシ樹脂の注入工法が効果的といわれている。しかし,ひび割れは常に振動・温度・湿度の変化等によるコンクリートの伸縮挙動が繰り返されているため,注入した近傍に新たなバイパスクラックが発生する。このようなひび割れに対しては,普通モルタルの10倍以上の引張変形性能をもつエラスティックモルタルを使用することにより,ひび割れの再発防止と防水性を付与する。

⑤調合樹脂モルタルの修整
 欠損部の補修は,その都度躯体に合わせた調合樹脂モルタルによる修整とする。調合樹脂モルタルは,接着力・色調・強度・耐候性が高く,また打放しコンクリートの表面の色合いを的確に再現できる優れた調合樹脂モルタルである。なお表面修整モルタルと躯体の一体化は打放しコンクリートの不可欠条件である。露出鉄筋のまわりのコンクリートを斫り取った部分への埋め戻し(パッチング)は,防錆処理の上に調合樹脂モルタルを用いて強固に一体化させる。この際,かぶり厚を確保するため鉄筋を内側へ押し込むなどの処置が必要である。

⑥木コン穴の補修
 木コンは新築時に,プレーンモルタルによる埋め込みが施されている。経年劣化とモルタルの収縮により,充填剤は離脱あるいは浮いていることことが多い。これら木コン穴の残滓を取り除き,新たに底部にシーリングを充填し,接着性・無収縮性・耐水性に優れた調合樹脂モルタルの埋め込みを行う。

⑦打放しコンクリート表面の若返り・型枠模様の造成
 耐候性に優れた数種の顔料・調合剤によって,打放し全面の色合わせと型枠模様の復元を特殊刷毛によって施工する。コンクリート打放し仕上げの表面には型枠からの転写された木目模様・型枠の目違いなどを再生復元する。
コンクリートの色に合わせた伸長型セメント系エラスティックフィラーを調合後全面に塗布し,専用に開発された造成道具を用いてコンクリートの素肌を再現し,そこに耐候性に優れた無機質系顔料によって木目模様の造成を行う。この伸長型セメント系エラスティックフィラーは,下地のコンクリートに発生したひび割れに追従し,また炭酸ガス・塩分を遮断する機能性下地材である。
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⑧若返りコンクリートの超耐候性アクリルシリコン樹脂系仕上げ
前記工程を施したコンクリート表面に,超耐候性アクリルシリコン樹脂系トップコートを全面に塗布する。これにより若返り諸工程の保護,表面の汚染防止,防水性能の向上と超耐候性が付与される。工程概要を図-2,フローチャートを図-3に示す。
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打放し仕上げは素材の質感を活かすところに,その意匠性の特徴がある。型枠模様のその素朴な味わいは,ややもすると華麗できらびやかな仕上げに傾きつつある世情に対し,無言の美しさを醸し出し心に落ち着きを与え都市空間に潤いをもたらす比類ない仕上げである。
このような打放しコンクリートも,年月を重ねることにより老いてその姿が変貌する。次世代への文化遺産として刻み込まれた歴史の一齣を,本再生工法で再び蘇らせることにより打放し仕上げを残すこととしたい。

 次回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」の最終回「ALC外壁対応-打放しコンクリートフェイス仕上げ」をご紹介します。

 さて,この年の重大ニュースとして1月22日,脳死臨調は「脳死は人の死である」と結論を出し,「脳死容認」を答申。心臓、肝臓などの臓器移植は,提供者の生前の意思を尊重することを前提に容認。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2008-12-22 07:21 | ブログ

臨時ニュース!!(号外)

Pecha Kucha Night in Hamamatsu !

ご存じですか?! ペチャクチャナイト

2003年、若いデザイナー(主に建築家)、クリエイターの方々がアイディアを分かち合いネットワークを広げる場として始めたイベントが、このPecha Kucha Night です。

 浜松に於いては、今年の8月1日をスタートに第2回目が12月11日、K・MIX Studio に於いて開催され、300人余りの新文化人が集まり19:30PM~22:30PMまで異業種のクリエイター達15人が短い時間の中で自分たちの考えを自由奔放にアピール発表しました。
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 私もその中間に発表の場を頂き、過去50年にわたる新旧打放しコンクリート仕上げに拘わる内容を大型プロジェクター用い、その足跡、エピソードなどを紹介させていただきました。
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ユーモアあふれるその発表内容に会場から拍手喝采を頂き、10年は若返ったとか!!
私も大変良い経験をさせていただきました。
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このPecha Kucha Nightの開催都市も全世界150都市にまで発展し破竹の勢いで伝播されているそうです。

21世紀の新文化といえるのではないでしょうか。

また、本ブログを通じてお招きいただいた主催者、大橋諭アーキテクチュア様およびそのスタッフの方々、K・MIX様に心からお礼申し上げます。
ありがとうございました!
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# by pikayoshi72 | 2008-12-17 11:14 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(49)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上技術1992年8月号,特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」を読み切りもので3回にわたりご紹介します。本日はその第1回「打放しコンクリートの補修実例」をご紹介します。
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はじめに
 打放しコンクリートは,一見荒々しくしかも重厚感にあふれ,四季・天候の変化に応じて,人々の感性に直接訴えるものがある。しかもシンプルで飾り気のない佇まいは,建築の原点に迫る力強さを感じさせる。打放しコンクリート建築は,デザインとしてその地位をもたらしてから80年余の歴史を持つといわれている。
その素材の持つ深さを引き出し,しかも長期にわたり,その姿を変えることのない強靱さと自然環境の影響されることなく,保護・保全することの出来る仕上げが求められている。

打放し仕上げ
 打放しコンクリートは,本来コンクリートの素材を生かすために,表層面は一切手を加えないという手法が基本だとされている。しかし,期せずして生じた欠損部や築後の環境作用によるコンクリートの汚損劣化は,抑制阻止されなくてはならない。最近劣化対策の一つとして,酸性雨問題はその代表的なもので,耐久性付与するための総合的な仕上げ方法と,保護対策を考慮する必要がある。打放しコンクリート表面仕上げシステムは,過去35年間の打放しコンクリートの補修実績と追跡調査結果をもとに,打放しを長期的にその意匠性・耐久性を確保するには,どうあるべきかを経験工学的に捕らえ改良かいはつされたものである。
本システムは,素地の調整から最終工程の超耐候性防水仕上げまで一貫して行う責任施工である。脱型後の仕上技術の一方法として,以下に工程の順序に従って紹介する(図-1)。
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①-素地の調整(付着物の除去)
 錆汁・セメントノロやエフロレッセンス等付着した汚れに対し,それぞれに適合した除去方法を検討し,単なる水洗いでなく,汚染物を除去するための洗剤の選定と施工方法を決定する。表面の汚染物除去結果で,後の補修に大きな影響を与えるため,入念な洗浄作業が必要である。
②-コンクリート表面の強化処理
 表面の素地調整後,コンクリート表層面の保護および耐久性の向上を図るために,珪フッ化物を主成分とするNY-506反応型無機質系浸透強化剤を含浸塗布して,コンクリート表層面を密実強化する。本強化剤はセメントの水和生成物である水酸化カルシウムと反応し,毛細管の空隙を充填することによって,表面強化および耐酸性を向上させるとともに中性化を抑制するものである。
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③-欠損部補修の基本
ジャンカ(巣穴)欠け,ピンホールなどの欠損部は部位のコンクリートの肌色にその都度合わせたNY-調合樹脂モルタルで充填修整する。
この材料は,前述した補修材料としての性能(付着性・強度)を有し,補修箇所の充填モルタルは変色してはならない。充填後変色したモルタルは,斫り除去して再度充填する。次に欠損種別毎に発生原因と個々の補修方法を表-1に示す。
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④-型枠模様の復元
 欠損部を補修した部分は躯体コンンクリートと相似した調合モルタルの修整であっても,型枠模様が喪失しているため不自然で,打放し表面はむしろ欠損部跡を示す結果となる。そこで健全部分に連結して表面を形成する型枠模様を復元することが,必要である。型枠模様と色合わせをその都度各種顔料で調合したNY-カラーコートで造成,一体化させる。

防 水
 打放しコンクリートに使用される防水材は,遮水性能と耐候性に優れ,紫外線や外的要因による変色などはあってはならない。
 溶剤型塗膜防水材には,種類によってコンクリートの表面の色調を変えてしまうなど,打放しが異質の仕上げとなることもある。そのために,塗膜型防水材の改良開発を進め,打放しコンクリートの表面をそのまま生かすことができる高性能の高耐候性防水材NY-7090を採用している。耐久性についてはすでに多くの実績があり経年による防水性能の低下は少なく,また紫外線による黄変もしないなど意匠的にも効果を上げている。フローチャートを図-2に示す。
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おわりに
 打放しコンクリート建築物の多くは,当初の予想を上回る早さで劣化が進行し,コンクリート神話を打ち砕くまでになっている。欠損部の補修跡に起因した劣化損傷の拡大は,補修技術の重要性を物語っている。このような事態を教訓にして,これからの打放しコンクリートの仕上げは意匠性と同じレベルで耐久性を考えるべきではないだろうか。
 新築時の打放しコンクリートに生じた欠損部を,違和感のない補修技術と長期にわたり美しさを長く保つための仕上げ方法をご紹介させていただきたい。
 単に欠損部の補修にとどまらず,建物全体の意匠性と耐久性を付与する打放しの一つの仕上げ技術として考えていただきたい。

 次回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」の第2回「劣化したコンクリート打放し仕上げの再生」をご紹介します。

 さて、この年1992年7月1日,JR東日本で山形新幹線が開業しました。 その名は「つばさ」で在来線の福島~山形間を改軌して新幹線の乗り入れを可能にしたミニ新幹線として実現。 東京-山形間の所要時間は2時間半と日本地図はどんどん小さくなっていきました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2008-12-15 07:27 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(48)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」のうち,最終回「9.浸透性吸水防止材と水性アクリルの組合わせ」から最終項「12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化」までをご紹介します。

9.浸透吸水防止材と水性アクリルの組合わせ
1975年頃より,水性アクリルクリヤーエマルション(以下,水性アクリルクリヤーと称す)が取扱いの容易なこと,溶剤型に比較して性能でも同等以上であることが評価され,打放し現場に登場したが,造膜型防水材の欠点であるコンクリートの欠損部,ピンホール等に対して連続皮膜が形成出来ず,この点では従来のアクリルクリヤーと全く同様である。
過去の打放しに対する各種防水材の特長の組合わせによる施工以外には,満足すべき打放しの防水方法は不可能であるとの結論に達した。そこで開発されたのが,浸透性吸水防止材と造膜性の水性アクリルクリヤーの組合わせである。
シラン系オリゴマーを主成分とした防水材を下地に含浸塗布したあと水性アクリルクリヤーを塗布する方法である。水性アクリルクリヤーは打放しの意匠性を損なうことがなく,下地の防水材との付着も良好である。これにより打放し表面の微細なピンホールと造膜し得ない箇所の防水が可能となり,単体で打放しの防水を試みた過去の方法による防水方法の弱点は一掃され,この組合わせによって今までに高い防水性と信頼性を手にすることが出来た。この工法は改良型打放しコンクリート表面仕上げシステム(吉田工法)として,多くの実績を有している。(図-2)
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10.超耐候性樹脂の濡れ色とムラ
1985年頃より超耐候性フッ素樹脂が話題となり,既に産業界では焼付けによる次代を背負う塗材としてもてはやされていた。打放し建築の超耐候性付与は関係者の一致した夢であり,何れ近い将来このようなタイプの塗材に取って代るだろうと推測されていた。
関係各社の研究室段階では,既に各種の試験は完了済みと言われていたが,上市されたのはここ数年前からのことである。超耐候性の決定版としてフッ素樹脂が花々しく登場したが,価格面においてもう一息と言うところである。
その隙間を突くような形でアクリルシリコン樹脂が登場した。フッ素樹脂と同様,超耐候性を掲げつ且つ価格面での魅力を前面に,フッ素樹脂に対し総合的には優るとも劣らぬ勢いである。
両樹脂ともフィールドにおける実績は少なく,これから楽しみである。試験データから考えれば,今までにない長期耐候性は理解できるところであるが,実績こそ最も信頼される唯一のものである。
ところでフッ素樹脂とアクリルシリコン樹脂は何れも溶剤型である。過去溶剤型のアクリルクリヤーによる濡れ色とムラによる意匠性を阻害したことに関連して,超耐候性溶剤型アクリルシリコン樹脂(以下アクリルシリコンと称す)をテストした。
前述した通り浸透性吸水防止材を下地としてアクリルシリコンを塗布した。結果は想像した通り濡れ色となり,著しいムラが生じ,寿命短くして消えたかつてのアクリルクリヤーと同様であった。打放しはそのもつ素材の良さを変えないことが基本である以上,超耐候性であっても,こと打放しに関しては用途が限定されることになる。
こうした背景にありながら,打放し建築は衰えることを知らず,最近では商店建築は勿論のこと一般住宅にも普及し止まるところなしの勢いである。打放し建築の耐久性は,極論ではあるが高性能の防水性委ねられている以上,是が非でも超耐候性の防水材を実用化する以外に道はない。
11.超耐候性アクリルシリコンの施工方法の改善
そこで超耐候性アクリルシリコン樹脂防水材塗布により生ずる濡れ,ムラを抑制する技術の確立が,今後の打放し建築に解決されなければならない。最も重要なものとして焦点が絞られた。
シラン系オリゴマーを主成分とした浸透性吸水防止材を下地とし,アクリルシリコン樹脂防水材の組合わせ工法により,防水材と耐久性の確保は可能となったが,残る意匠性の阻害問題をどのように解決するかであった。
繰り返しの組合わせ実験結果,下地に浸透性吸水防止材,次に水性アクリルクリヤーで強固なアクリル樹脂塗膜を形成する。これにより溶剤型アクリルシリコンの浸透を防止することによる濡れ・ムラを防止して塗膜の均一化を図った。しかし水性アクリルクリヤー塗膜の養生不足が原因と思われるが,溶解力の強いアクリルシリコンに溶剤による影響を受け,縮みや溶け出しによる塗膜の破損を引き起こすケースが生じ,十分な養生をする必要性が出た。
この組合わせ工法により,はじめて超耐候性アクリルシリコン防水材が打放し素材を損なうことのない仕上げに漕ぎつけた最初の技術である。この工法はフッ素樹脂においても同様な効果が証明されている。
打放し建築に超耐候性付与と意匠性を損なうことがない防水工法に対し,1990年,第2回中小企業優秀新技術・新製品賞受賞に輝く技術として紹介された。なおこの技術は打放しコンクリートSEFシステム(吉田工法)として全国各地で施工している。(図-3)
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12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化
一方人にやさしい環境をテーマに,3Kと称する建築現場で,労働安全衛生上,溶剤型の諸材料は極力水性型に移行しつつあり,社会的な要請でもある。
1970年代の溶剤型アクリルクリヤーから水性アクリルクリヤーに改善したことを想起して,溶剤型アクリルシリコンを水性化することにより,労働安全衛生の改善と溶剤型アクリルシリコンを塗布することで生ずる縮みの問題を一挙に解決出来るものとして,打放しのための最初の水性アクリルシリコン(NY-9090E)を開発,実用化し,1991年10月より施工を開始した。(写真-12)(表-1・表-2)

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過去30年余にわたり試行錯誤と失敗の歴史に終止符が打たれ,打放し建築から早期劣化を阻止し,長期耐久性を期待される新技術である。しかしより良い建築に貢献するためには,単に超耐候性の付与と意匠性を確保するだけでなく,新・旧打放しに存在する欠損部を修復して,生かすための補修という困難なハードルが打放しにはつきものであることを忘れてはいけない。
真に打放しは安全無欠であることは,論を待たないが,必ずしもそのようなことにはならないところに,これからも打放しの盡きることのない技術上の問題がある。

次回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号「打放しコンクリートの仕上げ技術」他をご紹介します。

さて、この年1992年の重大ニュース(国外編)、9月12日:アメリカ合衆国NASAが打上げたスペースシャトル「エンデバー」に日本人では初めて毛利衛氏が宇宙に飛び立ち8日間の宇宙飛行をしました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2008-12-08 07:35 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(47)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」のうち,第2回「5.打放し防水材の変遷」から「7.濡れ色・ムラの追放と失敗」をご紹介します。

5.打放し防水材の変遷
1952年,本格的にスタートした打放し建築は,その殆どが杉板の本実型枠で,鮮明に転写された打放し表面の木目模様は芸術品を思わせる仕上げであった。(写真-7)
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それに歩調を合わせるようにしてシリコン撥水材が登場した。これはシリコン樹脂を有機溶剤に溶解したもので,当時の防水材としては画期的なものとして受け入れられ,打放しにはシリコン撥水材が指定され,当然のようにして塗布されていた。
打放しコンクリートに塗布されたシリコン撥水材(図-1)は,
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浸透して打放し表面の表情は何ら変えることなく水を弾き,水滴となって流下するさまは,先進技術の枠として驚きをもって迎えられたものである。(写真-8)
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しかしシリコン撥水材はその大きな期待をよそに数年を待たずして撥水効果が薄れ,早いものでは1年で消滅したものが出るなど,信頼性は効果と並行して低下していった。その後各種の打放し向けの防水材が登場したが,どれも記憶に留める程のものはなく,相変わらずシリコン撥水材に頼った施工で推移した。

6.アクリルシリコン樹脂系防水材の登場
1965年,モータリゼーションの勃興と共に大気汚染が表面化し,建物の汚染と劣化が次第に進み,表層面の保護に対する関心が高まってきた。むき出しの打放し建築に黒く付着した汚損物と,ひび割れに起因した漏水とエフロレッセンスの流出は,打放し建築の将来を危慎するものとして暗示された。
このようなことを背景として,1970年代に入りシリコン撥水材に代わる耐久性と高い防水材をもった造膜型防水材としてアクリル樹脂クリヤーが花々しく登場,打放し素材を生かしたカラー化をプラスして,打放し建築に新しい息吹を与えるかのようであった。
シリコン樹脂材に期待を裏切られた関係者の多くは,この溶剤型アクリル樹脂クリヤー(以下アクリルクリヤーと称す)に多くの希望を抱いたが,打放しに塗布したアクリルクリヤーを目の当たりにして再び苦汁を飲むことになった。打放しの生命である素材の表情が著しく損なわれる結果となった。防水性の向上は期待通りのものであったが,アクリルクリヤーを塗布することにより濡れ色となり,しかも打放し表面の浸透のバラツキからムラが生じ,欠損箇所の補修モルタルは,その傷口を改めて誇張するかのような仕上げとなった。(写真-9)
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アクリルクリヤーに着色剤を添加して,若干でも濡れ色とムラを隠蔽する手法を試みたが,効果はあがらず意匠性を損なうことのないシリコン撥水材は,耐久性に乏しく,耐久性のあるアクリルクリヤーは意匠性を喪失するという結果となった。

7.濡れ色・ムラの追放と失敗
 このままでは打放し建築は何れ姿を消していく運命をたどることになりかねず,打放し現場に携わるものとして,意匠性を損なうことなくしかも耐久性に富んだ防水材の開発が必要不可欠であること,しかも新築時の打放しだけでなく,経年劣化した打放しにも必要であることには変わりがない。
 当社はこのような実情をふまえ自社開発の必要性を感じ,打放しのための防水材の開発を目指した。
 1970年代に入り従来の溶剤型アクリルクリヤーから水性エマルション(以下水性アクリルクリヤーと称す)の採用で,打放しの素材のイメージを損なうことのない防水材に一歩近づいたものである。
当水性アクリルクリヤーを打放し現場で施工後,降雨時に防水性能を評価のため訪れたところ,打放し全面に点在しているピンホールの廻りは雨水の浸透を示す黒色の輪が歴然とし,ピンホールが集中して存在する部分の1つの塊となって浸透を物語っていた。(写真-10)
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 今までの濡れ色,ムラは解決されていたが,ピンホールへの雨水の浸透には無抵抗であった。造膜型の防水材に共通した欠点であり,重ね塗りして解決出来そうであるが無惨な結果になった。塗装感覚で考えればピンホールをパテで埋めて防水材をかければ良いが,打放しはピンホールも意匠性を支える大切な役目を担っていることを理解しなくてはならない。ピンホールの上に重ね塗りして完全な塗膜を施したとしても,ピンホール内部に存在する空気が,日射による温度上昇によって膨張し,その圧力で塗膜が破れ,雨水が浸透していく。
 この繰り返し作用と,コンクリート毛細管への浸透で雨水は次第に拡大して,塗膜型防水材の性能と施工技術への信頼性が疑われる結果となった。
 このような経緯をたどり,新しい防水材として浸透性吸水防止材が花々しく登場してきた。しかし1950年代の撥水材の苦い経験をもつ筆者は,この非造膜型防水材も短期間で防水性能を喪失した過去の撥水材を想起させるものであった。しかしコンクリートに浸透して撥水性を示す反応による防水効果がある新開発商品であることを期待して採用してみた。
代表的なその1つの浸透性吸水防止材(シラン系オリゴマーを主成分)を現場にて仕様書通りの塗布をして,約3ヶ月後降雨の激しい中,撥水防水状況の調査をした。打放し建築で3階建であるこの打放しの表面は,最上階の外壁は撥水性を示す水滴の断続的な流下は認められず,浸透を示す濡れ色に変化していた。(写真-11)
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 しかし1・2階の外壁は,上層階からの流下した雨水が水玉となって撥水していた。激しい降雨や強い風雨に接する部位の打放し表面は,雨水が浸透して明らかに吸水している状態であった。

 次回は第3回(最終回)「9.浸透性吸水防止材と水性アクリルの組合わせ」から最終項「12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化」までをご紹介します。

 さて、この年1992年の重大ニュース(国内編)、3月14日, 東海道新幹線に最高時速時速270kmで飛ばし東京-大阪を2時間30分で結ぶ「のぞみ号」が登場しました。デビュー当初は,名古屋に停車しない列車があり、「名古屋飛ばし」として地元に強い衝撃を与えたとか!

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2008-12-01 07:25 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(46)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」を3回に分けご紹介します。
本日は第1回「あらまし」から「4.打放しコンクリートのその後」までをご紹介します。
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「あらまし」
 打放しコンクリートの保護仕上材の変遷と,新開発された水性アクリルシリコン樹脂エマルション(以下水性アクリルシリコンと称す)に至るまでの過去30年余の流れと,何故今アクリルシリコンか,そのルーツを辿ってみた。
 最近,コンクリート建築の早期劣化が社会問題化し,建物の資産価値の低下だけでなく,生活環境の安全性までも厳しく指摘されている。コンクリート建築の中でも,ひときわ文化的な香りのする打放し建築は,素材のもつ重厚な雰囲気と意匠性が多くの人々に好まれて来た。打放しコンクリートとはほぼ時を同じくして登場したのがシリコン撥水材で,マジックを思わせる水玉と弾き現象にめずらしさと驚きを与えた。
 当時は打放しの仕上げにシリコン撥水材を塗布することになり,半永久的な防水機能が保持されたものと思われていた。しかし数年またず防水性能は低下し,打放し表面に発生したひび割れからはエフロレッセンスが流出し,その他汚れの付着等で,その撥水効果は大きく期待を裏切る結果となった。
 このような現状に対し,新たな防水材の参入と改良改善されたといわれる新製品が上市されたが,撥水材に取って代わるだけの性能をもった防水材はなかった。
 こうした中で撥水材に代わる造膜型のアクリルクリヤーが,大いに期待され,今までにない耐候性能をもった防水材としてもてはやされた。しかし造膜型アクリルクリヤーが,溶剤型特有の打放し表面の浸透格差から生ずるムラと,コンクリートの色を濡れ色にしてしまうなど,打放しの意匠性を著しく阻害して,多くの期待を背負ったまま失意のうち姿を消した。打放し建築の防水機能の低下喪失と相まって急速に劣化汚損した惨状を間のあたりにして,防水材の果たす役割の重要さが認識された。このようなことを背景として長い間打放しに求められていたのが打放しの意匠性を阻害することのない,しかも長期にわたり防水性の保持が可能な防水材であった。
 本稿は打放し建築の防水材の変遷と,打放しコンクリートにまつわる話題を施工現場を通し駆け足で記述した。

1.打放しコンクリート建築の幕開け
 1952年アントン・レイモンド氏が設計した「リーダーズ・ダイジェスト東京本社ビル」が本格的な打放しコンクリートのスタートだといわれている。その後1960年代に入り東京文化会館,国立国会図書館など規模的に大きいものが登場し,これらがブームの始まりとなり,公共建築に多く採用されるようになった。
 打放し建築が醸し出す素朴な力強さと,剥き出しの素肌に加え環境変化に応じた千変万化の表情は建築デザインの上で,今までにない価値観を生み出したと言われている。タイル張り仕上げや吹付け仕上げとは比較出来ない野性的な打放し建築は,その空間構成を住宅や商業建設にまで拡大して多くの設計技術者の心を奪い,激しい変転と推移の中で孤高の姿を保ち続けている。

2.打放しコンクリートの現場
 打放しコンクリートは,名称の通り1回限りの仕上げを伴った建築である。やり直しがきかない工事で,型枠に囲まれ内部の状況は全く見ることが出来ず,目隠しで物作りをしているのと同じである。型枠を取りはずししてはじめて出来・不出来が確認され,巣穴やコールドジョイント(打ち継ぎの境に出来る傷跡)が発生していれば,その規模によって解体して新規に打ち直しを要求されることすらあると言う。
 また打放しの表面は非常にデリケートで,セメントや骨材も産出地域で変わるため,その都度打上がったコンクリートは色合が異なる。しかも型枠に使用される剥離材によってもその仕上面は変化する。その他表面に点在する気泡や水アバタは打放しコンクリートの耐久性に拘わってくるだけでなく,美観上許される範疇にあるか否か判断を要するものである。
 このような新築時に生ずるいろいろな問題に対し明確な基準はない。それらに対処するための技術手法は,経験による部分が大きく占め,未だ手探りの状況にあると言われている。従って完全無欠の打放し建築は稀で,それだけに一面では永遠のテーマとして今後も高い関心を持ち続けると推測される。その他に打放しコンクリート建築には避けられないものに,乾燥収縮によるひび割れがある。(写真-1)
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 表面から次第に水分の蒸発とともに固化していくコンクリートが,微細で時には漏水を招くひび割れが発生し,対策に苦慮する。仕上げに塗布した防水材もこのひび割れには抵抗出来ず,雨水の浸透によって,エフロレッセンス(白華現象)を流出させて,建築主の不信を買うことになる。(写真-2)
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業界では高強度で高品質の打放しを目指し技術開発に懸命の努力をしているが,効果的に事態の改善が進んだとは言い難い状況である。

3.打放しコンクリートの欠損対策
 完璧な打放し仕上げにならず,各部位に巣穴,コールドジョイント,大小混合した無数のピンホールと色違い,これらは放置するわけにはいかず,出来る限り違和感のない補修をすることになる。デザインは別として打放し建築の表情は千差万別である。モルタル塗りと異なり表面を成形するだけでは仕上げとならず,生じた欠損箇所の周辺のコンクリート肌に,その都度合わせた補修が求められる。
 打放しの地肌は型枠から転写された木目模様や樹脂型枠の雲状模様があり,いずれも型枠1枚ごとにその模様は異なったものとなっている。欠損部の補修は,それを取り巻く周辺のコンクリート肌に合わせた調合材料で修整していくが,曼荼羅模様から成る放しは補修材料の調合の可否で決まる。(写真-3)
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打放し仕上げを左右し,後々の防水塗材による仕上げが成功か失敗かを決定づけるものである。その成形技術として打放しコンクリート表面仕上げシステム(吉田工法)がある。

4.打放しコンクリートのその後
 築後数年で黒く汚れ,各所にひび割れが発生し水滴となって流れ落ちた雨水がコンクリートに浸み込み,まだら模様を描いて濡れ色となる。(写真-4)
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仕上げにたっぷりと含浸されて塗布した撥水材も,建物の上層部ではその効力は消えている。この症状の繰り返しを経て,やがて本格的な劣化症状へと進行していく。打放しの表面は前述のように多様な欠損が存在し,浸透した水分はコンクリートの毛細管現象を通して次第に内部深く浸透して徐々に中性化していく。
コンクリートに内在する鉄筋は錆化し,腐食膨張してやがて被りコンクリートを押出し,剥落させることになる。(写真-5)
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 その他環境作用に影響して発生するコンクリートの破壊因子は躯体にまで及ぶことすらある。打放し建築に共通して現れる劣化症状は,先ず防水材の性能低下による吸水コンクリート化である。(写真-6)
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 特に最上階が著しく,下層階になるに従ってその吸水程度は少なくなる。打放し建築に限ったことではないが,上層階ほど風雨や太陽熱をはなはだしく受ける。日射温令と乾湿繰り返しによってコンクリートは劣化していく。むき出しの打放しは直接影響を受け,防水材の喪失によりコンクリートの中性化は勿論のこと,汚れの付着,内部鉄筋の錆化は加速度的に劣化損傷し拡大していく。
 表面の防水が十分に機能発揮していれば,このような劣化はかなり抑制することが出来る。その意味では打放し建築には高性能で長期耐久性に優れた防水材が必要である。

  次回は第2回「5.打放し防水材の変遷」から「7.濡れ色・ムラの追放と失敗」をご紹介します。

 さて、この年1992年の重大トップニュース(国外編)、第25回バルセロナオリンピック(7月25日~8月9日)がスペインで開催され,日本勢は金3、銀8、銅11のメダルを獲得しました!

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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# by pikayoshi72 | 2008-11-24 08:02 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(45)

 今回は「建築保全」1991年7月号、special edition / 外装の補修・改修例「補修・改修の計画から保全まで」の後編(最終回)「2.改修工法の選定」をご紹介します。

2.改修工法の選定
現在の建物のイメージを失うことなく創建当初の性能に戻し改修後の維持保全が長期間期待できること。施工に関しては日常業務への支障がなく,人命の安全性と周辺環境への悪影響がないことが挙げられた。そのほか工法の材料についての諸条件は次のとおりである。
(1)打放しコンクリートに付着した各種の汚損物質を表面を害することなく洗浄または除去可能である。
(2)修整用モルタルは耐久性があり,鉄筋やコンクリートとの付着が良好で一体化し乾湿・温令や材料自体に
有害な変形がない。
(3)仕上塗材は塩分・水やガスなどの腐食要因を遮断する性能を有している。
(4)長期のフリーメンテナンスが期待できること。
(5)意匠性の復元と超耐候性の付与が可能である。
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1)施工の詳細
(1)素地調整:あらかじめ打放しコンクリート全面にサンドペーパーをかけ,次に高圧洗浄機を用い200kg/cm2の圧力水をかけて全面洗浄した。
(2)NY-606コンクリート強化剤の含浸塗布:洗浄後のコンクリートの乾燥確認のうえ,NY-606コンクリート強化剤をローラー刷毛にて含浸塗布した。2回に分けて,第1回目塗布乾燥後2回目を施した。平均塗布量は400g/㎡であった。
(3)鉄筋露出箇所の処理:鉄筋のかぶりが少ない箇所は,鉄筋周囲の斫りを深くし,かぶり厚を確保し調合樹脂モルタルが10mm以上付け送りが出来ることとした。鉄筋の錆は,ワイヤブラシにより除去し,直ちに特殊防錆材を入念に塗布し,NY-調合樹脂モルタルにより2~3回充填塗り込みをした。
(4)クラックの処理:幅0・2mm以上のものはすべてUカットした。クラック幅により,それぞれ深さ10~30mm程度Uカットし,内部清掃後プライマー塗布,ウレタンコーキングを底部に充填した。ウレタンコーキングの表面に硅砂を散布し,NY-調合エラスティックモルタルを充填塗り込みした(DD-エラスティックシス工法)。
(5)NY-調合樹脂モルタル表面修整:表面劣化部および欠損補修箇所を躯体コンクリートの表面に合わせた調合樹脂モルタルにより,表面修整を施した。
(6)打放しコンクリート面の若返り色合わせ,型枠模様の造成NY-調合樹脂を基材とした打放しコンクリート表面色合わせエラスティックフィラー塗材を2回にわたり施し,乾燥養生後,専門職人により特殊刷毛を用いて型枠模様を復元造成した。
(7)表面防水固定処理:超耐候性付与のためトップコートNY-9090アクリルシリコン樹脂系を2回全面塗布した。

2)施工後の保全状態
 施工後1.2か年経過したが,目視による調査結果は,表面の防水塗膜,ひび割れや汚損は認められず,降雨時の表層トップコートは完璧なまでその防水性能を保持している。特にひび割れ補修後に再発することの多いバイパスクラックもなく,ひび割れ補修材の柔軟追従性能が効果を挙げている。過去施工後の追跡調査では最初に欠陥として表れるものがバイパスクラックであることから1.2か年経過した現在新たなひび割れが発生してないことは耐久性付与の観点から充分期待できるものである。
 アクリルシリコン樹脂系NY-9090の超耐久性を支えるNY-エラスティックフィラーは躯体コンクリートの温令乾湿による挙動伸縮に追従する性能を有し信頼性をより高いものとしている。なお吉田工法では10年間の保証制度と経年劣化および保全状況を把握するため11年前より2~3年ごとに追跡調査を実施している。
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 次回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」をご紹介します。

 さて、この年1991年の重大トップニュース(国外編)1月6日、イラクのフセイン大統領がクウェートからの撤退拒否を表明しました。これを受け15日、国連のデクエヤル事務総長がイラクにクウェート撤退を求める声明を発表しましたが、イラクがこれを拒否したため、米軍54万人を中心とする28カ国からなる多国籍軍がイラク攻撃を開始しイラクも徹底抗戦を表明、湾岸戦争に突入しました。2月27日、多国籍軍はイラクのクウェート解放を確認し攻撃停止。そして3月、イラクは安保理による停戦決議を全面受諾し停戦協定が締結されました。

それでは次回をお楽しみに!

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# by pikayoshi72 | 2008-11-17 07:26 | ブログ