<   2009年 01月 ( 4 )   > この月の画像一覧

「打放しコンクリートと共に」 その(55)

 今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその最終回「リニューアル物件の分類」をご紹介します。

リニューアル物件の分類
 昭和53年2月より平成4年3月までの14年間小社が施工した打放しリニューアル物件は421件である。これらを打放しリニューアルするまでの築後の経過年数・型枠面積・型枠種別・地域別および発注先をそれぞれ調べてみた。これは、あくまで小社の打放しコンクリート若返りシステム(吉田工法)によるものであることを前提にしてご理解いただきたい。また,依頼から調査・実施までのフローを図6に示す。
e0030813_7171729.jpg

①経過年数
 経過年数の短い5~10年以内でリニューアルを実施した物件の主な背景は
●汚染物の付着が目立ち始めた
●ひび割れによるエフロレッセンスと漏水の発生
●鉄筋の露出と錆汁の付着
●コンクリート欠片の剥落
などである。特に鉄筋のかぶり厚さの不足した箇所は,錆化鉄筋の膨張圧でコンクリートが剥落し,居住空間の安全性が阻害され,同時に美観の低下が著しいことによるものと思われる。

②型枠面積
 リニューアル物件のうち,3000㎡未満が全体の90%以上を占めている。これらの物件は公共建築物や事務所ビルが主で,不特定多数の利用者の安全性確保と劣化汚損による美観の低下によるもの。

③型枠種別
 1950年代より1960年代にかけての打放し建築のほとんどは小幅板型枠で,リニューアル施工物件の93.3%を占めている。当時は,土木構造物を除いて打放しは小幅板型枠が主流であった。合板型枠は1965年頃より参入してきたが,まだ少数派であった。

④地域別
 経済原則に従い,打放し建築物件も関東地域が圧倒的に多い。関西に比較して中部が10%余多い理由は,小社が中部地域を拠点に活動したことによる。

⑤発注先
 全体の50%近いNTT局舎の施工実績は,東京オリンピック当時“1軒に1台の電話架設を”とのキャッチフレーズで全国各地に電話局舎が建てられ,そのリニューアルによるものである。局舎建築にあたっての外壁基本設計が,打放し柱・梁とタイル張り外壁で構成され,その後各局舎とも経年劣化によるリニューアルの必要性が順次到来したものと思われる。

 打放しリニューアルの主流は,原設計に基づいて意匠性の回復である。厳しい外部の環境作用を受けて,往年の打放し建築の面積は疲弊し,表面の一部は劣化損耗し,時の流れと老いを感じさせている。
 一方,この劣化した打放しを補修・改修する機会を利用してイメージチェンジし,意匠性を一新してしまうケースがある。
 しかし,打放し建築の位置する周辺環境によっては,まったくの違和感を与えることになりかねない。縁に包まれ市街地の喧噪を排除した自然環境に,樹木の成長と重なり合って同化したたたずまいは,打放しならではのものではないだろうか。単に打放しだからとこだわるだけでなく,地域の景観に占める価値観も,打放し改修工法の選択肢の主要な条件の1つである。打放し建築は,近代建築をうたう金属外壁やタイル張り仕上げに比較し疲れを感じさせないばかりか,心の安らぎさえも無意識のうちに与えるものがある。
 打放し建築の醸し出す自然回帰の心情と意匠性を守るために,よりリアルにしかも長期にわたり美観と耐久性を付与した技術の向上にいっそう研鑽したい。

 次回は建築仕上技術1993年8月号,学会賞受賞者対談と銘打って「打放しコンクリート面の生と命」をご紹介します。

 この年,最後の重大ニュースとして4月25日,ロック歌手の尾崎豊が東京都足立区の民家の庭で半裸のまま朦朧としているところを発見され、容態が急変し死亡しました。直接の死因は肺腫瘍であったが、体内には致死量を超える覚せい剤が認められたそうです。 追悼式に3万人のファンが参列。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
[PR]
by pikayoshi72 | 2009-01-26 07:18 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(54)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその第3回目「打放しリニューアルの仕様と施工」「打放しリニューアルに際しての改善提案」をご紹介します。

打放しリニューアルの仕様と施工
 調査結果報告書に基づき工法選定後,リニューアルの詳細施工方法を特記仕様書にまとめたもののうち,打放し関係箇所を抜粋して記す。(表2)なお,施工要領書は特記仕様書と重複するため割愛した。
e0030813_716171.jpg

 施工は図2のような順序で行う。施工状況を写真16~21に,リニューアルが完了した外観を写真22,23に示す。また,処理部の詳細を図3,4に示す。
e0030813_724258.jpg

e0030813_7161772.jpg
     
打放しリニューアルに際しての改善提案
 打放し建築のリニューアル施工物件を経年後に追跡調査し得た改善工法を提案する。
①金属笠木の採用
 打放し建築の最上階の天端仕上げは,当時モルタル笠木が主流となっていた。そのほとんどは浮き・ひび割れが生じている。これらは,改修時にすべて補修され現状回復はされるが,モルタル笠木のままでは天端の防水対策として不十分である。
雨水や汚れ防止対策には,モルタル笠木を金属笠木でカバーリングするのが不可欠である。取付位置は,打放し前面より20mm以上はね出し,雨水の水切りをよくし,打放し面への雨水の垂れ流しを防止するための間隙をもたせて取り付けることである。(図5)
e0030813_71715.jpg

②手すり・ベランダ腰壁の防水処理
 階段手すりやベランダの腰壁など雨水のあたる箇所の天端は,表面の劣化が著しい。これら表面は調合樹脂モルタルでしごき塗りして下地成形し,打放しに合わせた強靱な防水仕上げを施す必要がある。
③かぶりコンクリート厚さ不足箇所の鉄筋処理
 主に庇上裏で規則的に位置した鉄筋が錆化して,錆のしみ出しがあるが,かぶりコンクリートを剥落させるには至っていない。しかも水分の浸透の形跡がなく,鉄筋の錆化膨張によるひび割れがないため安易な処置ですませる傾向が多い。しかし,これらはすべてはつり出し,しかもかぶり厚さを考慮に入れた深さまで溝はつりして鉄筋を押し込み,少なくともかぶり厚さ10mm以上は確保したい。(図3)
e0030813_7185484.jpg

④ひび割れ処理
 日射温令の繰返し作用を受けて,ひび割れは補修後も継続的に繰返し伸縮している。ひび割れの動きに追従する弾性材質による補修が大切である。エポキシ樹脂やポリマーセメントモルタルなど硬いもので補修した場合,バイパスクラックが生じ再び雨水の浸透を招くことになり,打放しリニューアルの成果が失われることになる。(図4)
e0030813_7225527.jpg

⑤超耐候性防水材の塗布
 防水性能の低下喪失による打放し面の雨水の浸透は,内部鉄筋の腐食を引き起こし,劣化損傷を速めることになる。リニューアルの重点項目として,超耐候性防水材であるフッ素樹脂やアクリルシリコン樹脂を塗布することが望ましい。ただし,フッ素樹脂は汚れが付着しやすいと言われている。

 次回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」最終回「リニューアル物件の分類」をご紹介します。

 この年1992年の重大ニュースとして9月12日、米NASAのスペースシャトル「エンデバー」で毛利衛が飛び立ち、8日間の宇宙飛行をしましたが、その際スペースシャトルから「宇宙授業」が中継されました。

それでは次回をお楽しみに!

 打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
[PR]
by pikayoshi72 | 2009-01-19 07:27 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(53)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の内、「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその第2回目「打放しリニューアルの手順」をご紹介します。

打放しリニューアルの手順
某市庁舎ビルの打放しリニューアルをモデルにして,手順を紹介する。この建物は竣工後25年が経過した庁舎で,構造はRC造,地上8階建である。柱・外壁はすべて打放しコンクリートで,外壁面積が12000㎡ある。この建物のリニューアルに至るまでの過程を順に追って記述する。

外壁調査
 まず,市庁舎の打放し外壁の調査診断を行った。この調査診断の目的は,補修・改修の要否の判定と工法の選択で,現況は外部の劣化損傷状態からして安全性が懸念され,早急な対策が求められていた。調査内容は,第1次診断から第3次診断レベルまでをまとめて実施した。調査内容は表1のとおりである。
e0030813_6551649.jpg

調査結果と原因の推定
ひび割れの確認
確認したひび割れの主な発生原因は,温度・湿度の環境変化に伴うコンクリートの乾燥収縮・振動などによる複合作用と推定される。(写真9)
e0030813_6501794.jpg

また,屋上部の壁面はひび割れの補修工事がなされているが,その補修方法が不十分なため再発しているものがある。
露出鉄筋の確認
 確認した露出鉄筋は,いずれもコンクリートのかぶり厚さ不足と防水性能の喪失に起因して発生したものと考えられ,雨水・炭酸ガスなどの浸透により内在鉄筋が腐食膨張し,かぶりコンクリートを押し出し剥落に至り,鉄筋が露出したものと推定される。特に,方立に確認した露出鉄筋は著しい劣化状況である。(写真10)
e0030813_652150.jpg

モルタル補修跡の確認
 確認した補修跡は,新築当時に発生した不具合箇所をモルタル補修したものである。経年劣化により補修材の強度低下と破損で,部分的に浮いているものと推定される。(写真11)
e0030813_652403.jpg

コールドジョイント
 確認したコールドジョイントは,下層コンクリートの凝結硬化開始後に上層コンクリートを打設したため(コンクリートの打継ぎ),一体化が阻害され生じたものと推定される。(写真12)
e0030813_6531241.jpg

⑤木屑の確認
 コンクリート打設時に桟木が型枠内部に残っていたものと推定される。(写真13)
e0030813_6534356.jpg

コンクリート圧縮強度の測定
 コンクリートの圧縮強度はシュッミットハンマにより測定した。図1に結果を示す。
e0030813_6562658.jpg

中性化深さ測定
 測定箇所からのコア採取状況と中性化の状況を写真14,15に示す。
e0030813_6542523.jpg

e0030813_6582774.jpg

 フェノールフタレイン法による中性化深さ(測定値)は,建物経過年数から算出した平均中性化深さの値を下回っているが,南面・屋上②については平均中性化深さ以上である。

 次回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」第3回「打放しリニューアルの仕様と施工」「打放しリニューアルに際しての改善提案」をご紹介します。

 この年の重大ニュースとして6月15日,PKO協力法案が成立しました。自衛隊のPKO参加が可能になってしまいました。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
[PR]
by pikayoshi72 | 2009-01-12 07:01 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(52)

こんにちはpikayoshi72です。

 みなさん、あけましておめでとうございます。
 皆々様にとってこの一年がすばらしい年になるよう、心からお祈りします。

 また、今年も一年、私の拙いブログにお付き合い下さい。
 それでは早速ご紹介していきます。
新春第一号はこれだ!!

 今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその第1回「はじめに」から「打放しリニューアルに至るまで」をご紹介します。

はじめに
35年前,打放しコンクリートとタイル貼りで構成されたRC造3階建某庁舎新築工事が,打放しコンクリートと筆者との出会いの最初である。その後,1960年代に入り高度経済成長に支えられ,建築ブームの到来と並行して打放し建築が全国各地において続々と建てられた。小幅板をふんだんに使用しての板目・木目模様のあざやかな打放し建築は,多くの人々に驚きと強い関心を持って迎えられた。
 その打放しも長く厳しい風雪に耐えながら,表面は黒く汚れ,ところどころに鉄筋が露出し,ときおり新たなコンクリートの剥落とともに忍びよる老化にあえいでいる。このような打放しの惨状に,再び元の活力と重厚な意匠性を取り戻すことはできないものか,というニーズに応えて生まれたのが,打放しコンクリート若返りシステム(吉田工法)の始まりである。14年余にわたる試行錯誤と追跡調査による改良技術の積み重ねで,新築時の設計意図を再び活かし,劣化損傷した打放し建築を躯体より強化改修し,次世代への橋渡しを担った復元技術の1つである。

打放しのリニューアルに至るまで
 リニューアルは,頭上よりコンクリートの欠片が落ちてきた,漏水がある,汚れが目立ってきたなどの,安全性と住環境の美観の低下が端諸となる。
打放しは,躯体そのものが仕上げを兼ねているため,外部作用による多様な影響をそのまま受けて劣化へとつながっていく。従来より,打放し外壁の防水対策は撥水材系のものが主流で,打放しの表情を変化させない点が評価されている。しかし「美人薄命」の諺どおりその性能はきわめて短く,防水性の低下で打放し表層面は降雨のたびに吸水コンクリートと化す。浸透した雨水は汚れ・ほこり・カビ・コケを呼び,ひび割れからは漏水やエフロレッセンスを誘発させ,かぶり厚さの不足した鉄筋は錆化していく。このような現象と過程を経て,リニューアルの必要性が生じてくる。いずれの打放し物件も複数の劣化症状を伴い,しかも共通点として,表層面の防水性能がすでに低下しもしくは喪失している事である。
これらの打放し外壁の主な劣化症状を示すと,
①汚れ(写真1),②カビ・コケの付着(写真2),③ひび割れ(写真3),④鉄筋露出(写真4)
⑤浮き・剥離(写真5),⑥欠損(写真6),⑦漏水(写真⑦),⑧木屑(写真8),のようになる。
e0030813_7191522.jpg
 
 次回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」第2回「打放しリニューアルの手順」をご紹介します。

 さて、この年の重大ニュースとして共和汚職事件があります。北海道のリゾート事業に絡み、鉄骨加工会社「共和」から8千万を受け取ったとして、阿部文男・元北海道開発庁長官が受託収賄罪で起訴されました。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
[PR]
by pikayoshi72 | 2009-01-05 07:20 | ブログ