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「打放しコンクリートと共に」 その(51)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号,特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」を3回にわたりご紹介しています。本日はその最終回「ALC外壁対応/打放しコンクリートフェイス仕上げ」をご紹介します。

はじめに
 ALCは1934年、スウェーデンで開発された珪石とセメントを主成分としたコンクリート製品で,軽量で耐火性・耐久性・遮音性・加工性に優れた建築材料である。わが国では昭和38年頃から導入,建物の外壁・屋根に使用されてきた。しかしALCは吸水性が高く,表面強度が小さく,仕上げ材の選択によっては,その優れた建築材料であるにもかかわらず,耐久性を著しく損なうものとされ,仕上げ材に大きく左右されているのが現状である。
 ALCを外壁に採用した建物の主な目的は,その安価な工事費と工期の短縮化という2点にある。ALCをより耐久性のある外壁とするには,ALC表層面を改質し,吸水性と表面強度のアップが不可欠である。
 劣化原因の多くはALCの内部に侵入した水分によるもので,仕上げ塗材の僅かの故障であっても,吸水膨張の挙動が大きく働き,並行して吸水することによる強度の低下と,寒冷地においては凍結融解による損傷が生じる。そのため,表面の仕上げ塗材だけの防水仕上げでは,対応が困難であり,表層面を改質した耐久性の高いALC外壁が望まれている理由である。

ALC外壁の故障
 ALC外壁に発生した主な劣化損傷は次の通りである。
亀裂・剥離・内部鉄筋の腐食・結露・カビおよび寒冷地での凍害・その他目地シール膨れ・切れである。
これらの劣化原因は,ALCの高い吸水性と仕上げ塗材の損傷に起因したもので,ALCの表層面の耐水機能を強化しなければならない。

新開発技術
 今回開発された打放しコンクリートフェイス仕上げは,ALCに打放しコンクリートの意匠性とコンクリートに近い耐久性を表層面に付与したものでALCの弱点である吸水性を抑制,ポーラスな表面を密実強化して表層面の強化を図った。

打放しフェイス仕上げの特徴
 当工法の特徴は,躯体であるALC表層面そのものを改質し密実強化することにある。通常行われている手法は,仕上げ塗材による外壁の表面保護と化粧仕上げを目的としたもので,当工法の相違点はALC表層面を強弾性力を備えたポリマーモルタルで,多孔質な表面を充填密実にし,躯体と一体化させる点である。

工程の概要
 水分の浸透を阻止するNY-8080シーラーを塗布し,付着性・防水性能の高いNY-エラスティックモルタルをしごき塗りして多孔質面を充填,表層面を柔軟密実にする事により,表層面の強化改質と防水性能を付与させた。このようなALC表層面の強化改質に高い防水性能と,温令・乾湿の環境作用に追従するNY-エラスティックフィラーを塗工することにより,二重の保護機能を与え基盤強化した。次に打放しコンクリート型枠模様を造成して打放しコンクリートの意匠性を表現,トップコートに超耐候性アクリルシリコン樹脂系を塗布し,高耐久性を持たせ打放しコンクリートに近い耐久性を付与した(写-1)。
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ALC表層面の防水性能の向上と改質強化により,外壁の劣化損傷の原因である仕上げ塗材の故障による水分の浸透と吸水膨張による損傷を阻止,型枠模様の意匠造成し打放し仕上げとした。工程の概要を図-1に,フローチャートを図-2に示す。
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おわりに
 ALC外壁の弱点が補強改質され,打放し意匠仕上げが可能となったことにより,従来の限られた外壁仕上げ塗材から脱却し,ALC外壁の仕上げの多様化と選択肢の幅が大きく開かれたと言える。
 打放し仕上げの重厚な雰囲気と自然回帰を思わせる意匠性は,多くの人々の関心の的であり,打放し使用型枠の種別だけでも,樹脂塗装・ベニヤ・本実そしてメタルフォーム等があり楽しみでもある。ALC建築をRC打放し仕上げと同様な意匠性と耐久性の確保により,都市環境にマッチしたALC外壁の新仕上技術として成長を期している。

 次回、来年新春第1弾は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」をご紹介します。

 さて、この年の重大ニュースとして「東京佐川急便」の渡辺広康前社長ら経営陣が、広域暴力団稲川会の石井進元会長らの関係会社などに、巨額の融資・債務を保証し、逮捕されました。捜査の中で、自民党の金丸信元副総裁に5億円渡ったことが発覚、東京地検は政治資金規正法違反にあたるとして略式起訴し、金丸元副総裁は罰金20万円を支払いました。そして10月14日には議員を辞職する事態に、、、、

それでは次回をお楽しみに!

 今年一年私のブログにお付き合い頂き、ありがとうございました。
来年も頑張りますので宜しくお願いいたします。
良いお年をお迎え下さい。

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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by pikayoshi72 | 2008-12-29 09:46 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(50)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号,特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」を3回にわたりご紹介します。本日はそのうち第2回「劣化したコンクリート打放し仕上げの再生」をご紹介します。

打放しコンクリートの劣化現象として,内在する鉄筋の腐食と,コンクリートのひび割れが代表的なものである。コンクリート中の鉄筋が腐食することにより,その膨張圧でかぶりコンクリートが押し出され剥落するなど,場合によっては人災につながる危険性がある。またコンクリートの乾燥収縮などひび割れが発生すると水分・炭酸ガスなどの劣化因子のコンクリートの侵入を容易にし,劣化の進行を加速させることになる。
打放しは表層の防水性能低下と平行して躯体そのものが仕上げであるため,タイル,仕上塗材などを施したRC建築物に比べ劣化の進行速度は著しく,汚れの付着に始まる劣化は表層の意匠性を損ない,耐久性の低下を招くことになる。以下に紹介する打放しコンクリート若返りシステムは,このような劣化損傷したコンクリート打放し仕上げを,再び躯体より強化することにより建物に耐久性を付与し,失われた意匠性の復元を図る工法である。

①表面清掃・脆弱層の除去
 コンクリート表面に付着した汚染物や苔などを高圧洗浄(200kgf/cm2)により除去する。鉄筋の錆汁は化学洗浄剤による併用洗浄とする。

②コンクリート強化剤の含新
 コンクリート乾燥養生後,珪フッ化物浸透強化剤を刷毛またはローラーにて400g/㎡を2回に分けて含浸塗布する。劣化したコンクリート表層部分を緻密化し,また耐酸性を向上させることにより中性化の進行を防止する。

③露出鉄筋箇所の斫り・防錆処理
 鉄筋の腐食が原因で生じたかぶりコンクリートの浮き・剥離箇所の斫り取り。錆化腐食部分を中心にして,腐食鉄筋の裏側に達するように健全部まで丹念に斫り取る。そしてグラインダー・ワイヤーブラシなどを用いて,腐食した鉄筋を十分ケレンし防錆剤を塗布する。

④NY-エラスティックモルタルによるひび割れ部充填補修
躯体コンクリートに発生したひび割れ補修方法として,ひび割れの発生原因が鉄筋の腐食によらない場合,従来からエポキシ樹脂の注入工法が効果的といわれている。しかし,ひび割れは常に振動・温度・湿度の変化等によるコンクリートの伸縮挙動が繰り返されているため,注入した近傍に新たなバイパスクラックが発生する。このようなひび割れに対しては,普通モルタルの10倍以上の引張変形性能をもつエラスティックモルタルを使用することにより,ひび割れの再発防止と防水性を付与する。

⑤調合樹脂モルタルの修整
 欠損部の補修は,その都度躯体に合わせた調合樹脂モルタルによる修整とする。調合樹脂モルタルは,接着力・色調・強度・耐候性が高く,また打放しコンクリートの表面の色合いを的確に再現できる優れた調合樹脂モルタルである。なお表面修整モルタルと躯体の一体化は打放しコンクリートの不可欠条件である。露出鉄筋のまわりのコンクリートを斫り取った部分への埋め戻し(パッチング)は,防錆処理の上に調合樹脂モルタルを用いて強固に一体化させる。この際,かぶり厚を確保するため鉄筋を内側へ押し込むなどの処置が必要である。

⑥木コン穴の補修
 木コンは新築時に,プレーンモルタルによる埋め込みが施されている。経年劣化とモルタルの収縮により,充填剤は離脱あるいは浮いていることことが多い。これら木コン穴の残滓を取り除き,新たに底部にシーリングを充填し,接着性・無収縮性・耐水性に優れた調合樹脂モルタルの埋め込みを行う。

⑦打放しコンクリート表面の若返り・型枠模様の造成
 耐候性に優れた数種の顔料・調合剤によって,打放し全面の色合わせと型枠模様の復元を特殊刷毛によって施工する。コンクリート打放し仕上げの表面には型枠からの転写された木目模様・型枠の目違いなどを再生復元する。
コンクリートの色に合わせた伸長型セメント系エラスティックフィラーを調合後全面に塗布し,専用に開発された造成道具を用いてコンクリートの素肌を再現し,そこに耐候性に優れた無機質系顔料によって木目模様の造成を行う。この伸長型セメント系エラスティックフィラーは,下地のコンクリートに発生したひび割れに追従し,また炭酸ガス・塩分を遮断する機能性下地材である。
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⑧若返りコンクリートの超耐候性アクリルシリコン樹脂系仕上げ
前記工程を施したコンクリート表面に,超耐候性アクリルシリコン樹脂系トップコートを全面に塗布する。これにより若返り諸工程の保護,表面の汚染防止,防水性能の向上と超耐候性が付与される。工程概要を図-2,フローチャートを図-3に示す。
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打放し仕上げは素材の質感を活かすところに,その意匠性の特徴がある。型枠模様のその素朴な味わいは,ややもすると華麗できらびやかな仕上げに傾きつつある世情に対し,無言の美しさを醸し出し心に落ち着きを与え都市空間に潤いをもたらす比類ない仕上げである。
このような打放しコンクリートも,年月を重ねることにより老いてその姿が変貌する。次世代への文化遺産として刻み込まれた歴史の一齣を,本再生工法で再び蘇らせることにより打放し仕上げを残すこととしたい。

 次回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」の最終回「ALC外壁対応-打放しコンクリートフェイス仕上げ」をご紹介します。

 さて,この年の重大ニュースとして1月22日,脳死臨調は「脳死は人の死である」と結論を出し,「脳死容認」を答申。心臓、肝臓などの臓器移植は,提供者の生前の意思を尊重することを前提に容認。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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by pikayoshi72 | 2008-12-22 07:21 | ブログ

臨時ニュース!!(号外)

Pecha Kucha Night in Hamamatsu !

ご存じですか?! ペチャクチャナイト

2003年、若いデザイナー(主に建築家)、クリエイターの方々がアイディアを分かち合いネットワークを広げる場として始めたイベントが、このPecha Kucha Night です。

 浜松に於いては、今年の8月1日をスタートに第2回目が12月11日、K・MIX Studio に於いて開催され、300人余りの新文化人が集まり19:30PM~22:30PMまで異業種のクリエイター達15人が短い時間の中で自分たちの考えを自由奔放にアピール発表しました。
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 私もその中間に発表の場を頂き、過去50年にわたる新旧打放しコンクリート仕上げに拘わる内容を大型プロジェクター用い、その足跡、エピソードなどを紹介させていただきました。
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ユーモアあふれるその発表内容に会場から拍手喝采を頂き、10年は若返ったとか!!
私も大変良い経験をさせていただきました。
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このPecha Kucha Nightの開催都市も全世界150都市にまで発展し破竹の勢いで伝播されているそうです。

21世紀の新文化といえるのではないでしょうか。

また、本ブログを通じてお招きいただいた主催者、大橋諭アーキテクチュア様およびそのスタッフの方々、K・MIX様に心からお礼申し上げます。
ありがとうございました!
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by pikayoshi72 | 2008-12-17 11:14 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(49)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は月刊建築仕上技術1992年8月号,特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」を読み切りもので3回にわたりご紹介します。本日はその第1回「打放しコンクリートの補修実例」をご紹介します。
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はじめに
 打放しコンクリートは,一見荒々しくしかも重厚感にあふれ,四季・天候の変化に応じて,人々の感性に直接訴えるものがある。しかもシンプルで飾り気のない佇まいは,建築の原点に迫る力強さを感じさせる。打放しコンクリート建築は,デザインとしてその地位をもたらしてから80年余の歴史を持つといわれている。
その素材の持つ深さを引き出し,しかも長期にわたり,その姿を変えることのない強靱さと自然環境の影響されることなく,保護・保全することの出来る仕上げが求められている。

打放し仕上げ
 打放しコンクリートは,本来コンクリートの素材を生かすために,表層面は一切手を加えないという手法が基本だとされている。しかし,期せずして生じた欠損部や築後の環境作用によるコンクリートの汚損劣化は,抑制阻止されなくてはならない。最近劣化対策の一つとして,酸性雨問題はその代表的なもので,耐久性付与するための総合的な仕上げ方法と,保護対策を考慮する必要がある。打放しコンクリート表面仕上げシステムは,過去35年間の打放しコンクリートの補修実績と追跡調査結果をもとに,打放しを長期的にその意匠性・耐久性を確保するには,どうあるべきかを経験工学的に捕らえ改良かいはつされたものである。
本システムは,素地の調整から最終工程の超耐候性防水仕上げまで一貫して行う責任施工である。脱型後の仕上技術の一方法として,以下に工程の順序に従って紹介する(図-1)。
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①-素地の調整(付着物の除去)
 錆汁・セメントノロやエフロレッセンス等付着した汚れに対し,それぞれに適合した除去方法を検討し,単なる水洗いでなく,汚染物を除去するための洗剤の選定と施工方法を決定する。表面の汚染物除去結果で,後の補修に大きな影響を与えるため,入念な洗浄作業が必要である。
②-コンクリート表面の強化処理
 表面の素地調整後,コンクリート表層面の保護および耐久性の向上を図るために,珪フッ化物を主成分とするNY-506反応型無機質系浸透強化剤を含浸塗布して,コンクリート表層面を密実強化する。本強化剤はセメントの水和生成物である水酸化カルシウムと反応し,毛細管の空隙を充填することによって,表面強化および耐酸性を向上させるとともに中性化を抑制するものである。
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③-欠損部補修の基本
ジャンカ(巣穴)欠け,ピンホールなどの欠損部は部位のコンクリートの肌色にその都度合わせたNY-調合樹脂モルタルで充填修整する。
この材料は,前述した補修材料としての性能(付着性・強度)を有し,補修箇所の充填モルタルは変色してはならない。充填後変色したモルタルは,斫り除去して再度充填する。次に欠損種別毎に発生原因と個々の補修方法を表-1に示す。
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④-型枠模様の復元
 欠損部を補修した部分は躯体コンンクリートと相似した調合モルタルの修整であっても,型枠模様が喪失しているため不自然で,打放し表面はむしろ欠損部跡を示す結果となる。そこで健全部分に連結して表面を形成する型枠模様を復元することが,必要である。型枠模様と色合わせをその都度各種顔料で調合したNY-カラーコートで造成,一体化させる。

防 水
 打放しコンクリートに使用される防水材は,遮水性能と耐候性に優れ,紫外線や外的要因による変色などはあってはならない。
 溶剤型塗膜防水材には,種類によってコンクリートの表面の色調を変えてしまうなど,打放しが異質の仕上げとなることもある。そのために,塗膜型防水材の改良開発を進め,打放しコンクリートの表面をそのまま生かすことができる高性能の高耐候性防水材NY-7090を採用している。耐久性についてはすでに多くの実績があり経年による防水性能の低下は少なく,また紫外線による黄変もしないなど意匠的にも効果を上げている。フローチャートを図-2に示す。
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おわりに
 打放しコンクリート建築物の多くは,当初の予想を上回る早さで劣化が進行し,コンクリート神話を打ち砕くまでになっている。欠損部の補修跡に起因した劣化損傷の拡大は,補修技術の重要性を物語っている。このような事態を教訓にして,これからの打放しコンクリートの仕上げは意匠性と同じレベルで耐久性を考えるべきではないだろうか。
 新築時の打放しコンクリートに生じた欠損部を,違和感のない補修技術と長期にわたり美しさを長く保つための仕上げ方法をご紹介させていただきたい。
 単に欠損部の補修にとどまらず,建物全体の意匠性と耐久性を付与する打放しの一つの仕上げ技術として考えていただきたい。

 次回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号特集「打放しコンクリートの仕上げ技術」の第2回「劣化したコンクリート打放し仕上げの再生」をご紹介します。

 さて、この年1992年7月1日,JR東日本で山形新幹線が開業しました。 その名は「つばさ」で在来線の福島~山形間を改軌して新幹線の乗り入れを可能にしたミニ新幹線として実現。 東京-山形間の所要時間は2時間半と日本地図はどんどん小さくなっていきました。

それでは次回をお楽しみに!

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by pikayoshi72 | 2008-12-15 07:27 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(48)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」のうち,最終回「9.浸透性吸水防止材と水性アクリルの組合わせ」から最終項「12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化」までをご紹介します。

9.浸透吸水防止材と水性アクリルの組合わせ
1975年頃より,水性アクリルクリヤーエマルション(以下,水性アクリルクリヤーと称す)が取扱いの容易なこと,溶剤型に比較して性能でも同等以上であることが評価され,打放し現場に登場したが,造膜型防水材の欠点であるコンクリートの欠損部,ピンホール等に対して連続皮膜が形成出来ず,この点では従来のアクリルクリヤーと全く同様である。
過去の打放しに対する各種防水材の特長の組合わせによる施工以外には,満足すべき打放しの防水方法は不可能であるとの結論に達した。そこで開発されたのが,浸透性吸水防止材と造膜性の水性アクリルクリヤーの組合わせである。
シラン系オリゴマーを主成分とした防水材を下地に含浸塗布したあと水性アクリルクリヤーを塗布する方法である。水性アクリルクリヤーは打放しの意匠性を損なうことがなく,下地の防水材との付着も良好である。これにより打放し表面の微細なピンホールと造膜し得ない箇所の防水が可能となり,単体で打放しの防水を試みた過去の方法による防水方法の弱点は一掃され,この組合わせによって今までに高い防水性と信頼性を手にすることが出来た。この工法は改良型打放しコンクリート表面仕上げシステム(吉田工法)として,多くの実績を有している。(図-2)
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10.超耐候性樹脂の濡れ色とムラ
1985年頃より超耐候性フッ素樹脂が話題となり,既に産業界では焼付けによる次代を背負う塗材としてもてはやされていた。打放し建築の超耐候性付与は関係者の一致した夢であり,何れ近い将来このようなタイプの塗材に取って代るだろうと推測されていた。
関係各社の研究室段階では,既に各種の試験は完了済みと言われていたが,上市されたのはここ数年前からのことである。超耐候性の決定版としてフッ素樹脂が花々しく登場したが,価格面においてもう一息と言うところである。
その隙間を突くような形でアクリルシリコン樹脂が登場した。フッ素樹脂と同様,超耐候性を掲げつ且つ価格面での魅力を前面に,フッ素樹脂に対し総合的には優るとも劣らぬ勢いである。
両樹脂ともフィールドにおける実績は少なく,これから楽しみである。試験データから考えれば,今までにない長期耐候性は理解できるところであるが,実績こそ最も信頼される唯一のものである。
ところでフッ素樹脂とアクリルシリコン樹脂は何れも溶剤型である。過去溶剤型のアクリルクリヤーによる濡れ色とムラによる意匠性を阻害したことに関連して,超耐候性溶剤型アクリルシリコン樹脂(以下アクリルシリコンと称す)をテストした。
前述した通り浸透性吸水防止材を下地としてアクリルシリコンを塗布した。結果は想像した通り濡れ色となり,著しいムラが生じ,寿命短くして消えたかつてのアクリルクリヤーと同様であった。打放しはそのもつ素材の良さを変えないことが基本である以上,超耐候性であっても,こと打放しに関しては用途が限定されることになる。
こうした背景にありながら,打放し建築は衰えることを知らず,最近では商店建築は勿論のこと一般住宅にも普及し止まるところなしの勢いである。打放し建築の耐久性は,極論ではあるが高性能の防水性委ねられている以上,是が非でも超耐候性の防水材を実用化する以外に道はない。
11.超耐候性アクリルシリコンの施工方法の改善
そこで超耐候性アクリルシリコン樹脂防水材塗布により生ずる濡れ,ムラを抑制する技術の確立が,今後の打放し建築に解決されなければならない。最も重要なものとして焦点が絞られた。
シラン系オリゴマーを主成分とした浸透性吸水防止材を下地とし,アクリルシリコン樹脂防水材の組合わせ工法により,防水材と耐久性の確保は可能となったが,残る意匠性の阻害問題をどのように解決するかであった。
繰り返しの組合わせ実験結果,下地に浸透性吸水防止材,次に水性アクリルクリヤーで強固なアクリル樹脂塗膜を形成する。これにより溶剤型アクリルシリコンの浸透を防止することによる濡れ・ムラを防止して塗膜の均一化を図った。しかし水性アクリルクリヤー塗膜の養生不足が原因と思われるが,溶解力の強いアクリルシリコンに溶剤による影響を受け,縮みや溶け出しによる塗膜の破損を引き起こすケースが生じ,十分な養生をする必要性が出た。
この組合わせ工法により,はじめて超耐候性アクリルシリコン防水材が打放し素材を損なうことのない仕上げに漕ぎつけた最初の技術である。この工法はフッ素樹脂においても同様な効果が証明されている。
打放し建築に超耐候性付与と意匠性を損なうことがない防水工法に対し,1990年,第2回中小企業優秀新技術・新製品賞受賞に輝く技術として紹介された。なおこの技術は打放しコンクリートSEFシステム(吉田工法)として全国各地で施工している。(図-3)
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12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化
一方人にやさしい環境をテーマに,3Kと称する建築現場で,労働安全衛生上,溶剤型の諸材料は極力水性型に移行しつつあり,社会的な要請でもある。
1970年代の溶剤型アクリルクリヤーから水性アクリルクリヤーに改善したことを想起して,溶剤型アクリルシリコンを水性化することにより,労働安全衛生の改善と溶剤型アクリルシリコンを塗布することで生ずる縮みの問題を一挙に解決出来るものとして,打放しのための最初の水性アクリルシリコン(NY-9090E)を開発,実用化し,1991年10月より施工を開始した。(写真-12)(表-1・表-2)

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過去30年余にわたり試行錯誤と失敗の歴史に終止符が打たれ,打放し建築から早期劣化を阻止し,長期耐久性を期待される新技術である。しかしより良い建築に貢献するためには,単に超耐候性の付与と意匠性を確保するだけでなく,新・旧打放しに存在する欠損部を修復して,生かすための補修という困難なハードルが打放しにはつきものであることを忘れてはいけない。
真に打放しは安全無欠であることは,論を待たないが,必ずしもそのようなことにはならないところに,これからも打放しの盡きることのない技術上の問題がある。

次回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号「打放しコンクリートの仕上げ技術」他をご紹介します。

さて、この年1992年の重大ニュース(国外編)、9月12日:アメリカ合衆国NASAが打上げたスペースシャトル「エンデバー」に日本人では初めて毛利衛氏が宇宙に飛び立ち8日間の宇宙飛行をしました。

それでは次回をお楽しみに!

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by pikayoshi72 | 2008-12-08 07:35 | ブログ

「打放しコンクリートと共に」 その(47)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」のうち,第2回「5.打放し防水材の変遷」から「7.濡れ色・ムラの追放と失敗」をご紹介します。

5.打放し防水材の変遷
1952年,本格的にスタートした打放し建築は,その殆どが杉板の本実型枠で,鮮明に転写された打放し表面の木目模様は芸術品を思わせる仕上げであった。(写真-7)
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それに歩調を合わせるようにしてシリコン撥水材が登場した。これはシリコン樹脂を有機溶剤に溶解したもので,当時の防水材としては画期的なものとして受け入れられ,打放しにはシリコン撥水材が指定され,当然のようにして塗布されていた。
打放しコンクリートに塗布されたシリコン撥水材(図-1)は,
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浸透して打放し表面の表情は何ら変えることなく水を弾き,水滴となって流下するさまは,先進技術の枠として驚きをもって迎えられたものである。(写真-8)
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しかしシリコン撥水材はその大きな期待をよそに数年を待たずして撥水効果が薄れ,早いものでは1年で消滅したものが出るなど,信頼性は効果と並行して低下していった。その後各種の打放し向けの防水材が登場したが,どれも記憶に留める程のものはなく,相変わらずシリコン撥水材に頼った施工で推移した。

6.アクリルシリコン樹脂系防水材の登場
1965年,モータリゼーションの勃興と共に大気汚染が表面化し,建物の汚染と劣化が次第に進み,表層面の保護に対する関心が高まってきた。むき出しの打放し建築に黒く付着した汚損物と,ひび割れに起因した漏水とエフロレッセンスの流出は,打放し建築の将来を危慎するものとして暗示された。
このようなことを背景として,1970年代に入りシリコン撥水材に代わる耐久性と高い防水材をもった造膜型防水材としてアクリル樹脂クリヤーが花々しく登場,打放し素材を生かしたカラー化をプラスして,打放し建築に新しい息吹を与えるかのようであった。
シリコン樹脂材に期待を裏切られた関係者の多くは,この溶剤型アクリル樹脂クリヤー(以下アクリルクリヤーと称す)に多くの希望を抱いたが,打放しに塗布したアクリルクリヤーを目の当たりにして再び苦汁を飲むことになった。打放しの生命である素材の表情が著しく損なわれる結果となった。防水性の向上は期待通りのものであったが,アクリルクリヤーを塗布することにより濡れ色となり,しかも打放し表面の浸透のバラツキからムラが生じ,欠損箇所の補修モルタルは,その傷口を改めて誇張するかのような仕上げとなった。(写真-9)
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アクリルクリヤーに着色剤を添加して,若干でも濡れ色とムラを隠蔽する手法を試みたが,効果はあがらず意匠性を損なうことのないシリコン撥水材は,耐久性に乏しく,耐久性のあるアクリルクリヤーは意匠性を喪失するという結果となった。

7.濡れ色・ムラの追放と失敗
 このままでは打放し建築は何れ姿を消していく運命をたどることになりかねず,打放し現場に携わるものとして,意匠性を損なうことなくしかも耐久性に富んだ防水材の開発が必要不可欠であること,しかも新築時の打放しだけでなく,経年劣化した打放しにも必要であることには変わりがない。
 当社はこのような実情をふまえ自社開発の必要性を感じ,打放しのための防水材の開発を目指した。
 1970年代に入り従来の溶剤型アクリルクリヤーから水性エマルション(以下水性アクリルクリヤーと称す)の採用で,打放しの素材のイメージを損なうことのない防水材に一歩近づいたものである。
当水性アクリルクリヤーを打放し現場で施工後,降雨時に防水性能を評価のため訪れたところ,打放し全面に点在しているピンホールの廻りは雨水の浸透を示す黒色の輪が歴然とし,ピンホールが集中して存在する部分の1つの塊となって浸透を物語っていた。(写真-10)
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 今までの濡れ色,ムラは解決されていたが,ピンホールへの雨水の浸透には無抵抗であった。造膜型の防水材に共通した欠点であり,重ね塗りして解決出来そうであるが無惨な結果になった。塗装感覚で考えればピンホールをパテで埋めて防水材をかければ良いが,打放しはピンホールも意匠性を支える大切な役目を担っていることを理解しなくてはならない。ピンホールの上に重ね塗りして完全な塗膜を施したとしても,ピンホール内部に存在する空気が,日射による温度上昇によって膨張し,その圧力で塗膜が破れ,雨水が浸透していく。
 この繰り返し作用と,コンクリート毛細管への浸透で雨水は次第に拡大して,塗膜型防水材の性能と施工技術への信頼性が疑われる結果となった。
 このような経緯をたどり,新しい防水材として浸透性吸水防止材が花々しく登場してきた。しかし1950年代の撥水材の苦い経験をもつ筆者は,この非造膜型防水材も短期間で防水性能を喪失した過去の撥水材を想起させるものであった。しかしコンクリートに浸透して撥水性を示す反応による防水効果がある新開発商品であることを期待して採用してみた。
代表的なその1つの浸透性吸水防止材(シラン系オリゴマーを主成分)を現場にて仕様書通りの塗布をして,約3ヶ月後降雨の激しい中,撥水防水状況の調査をした。打放し建築で3階建であるこの打放しの表面は,最上階の外壁は撥水性を示す水滴の断続的な流下は認められず,浸透を示す濡れ色に変化していた。(写真-11)
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 しかし1・2階の外壁は,上層階からの流下した雨水が水玉となって撥水していた。激しい降雨や強い風雨に接する部位の打放し表面は,雨水が浸透して明らかに吸水している状態であった。

 次回は第3回(最終回)「9.浸透性吸水防止材と水性アクリルの組合わせ」から最終項「12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化」までをご紹介します。

 さて、この年1992年の重大ニュース(国内編)、3月14日, 東海道新幹線に最高時速時速270kmで飛ばし東京-大阪を2時間30分で結ぶ「のぞみ号」が登場しました。デビュー当初は,名古屋に停車しない列車があり、「名古屋飛ばし」として地元に強い衝撃を与えたとか!

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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by pikayoshi72 | 2008-12-01 07:25 | ブログ