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第十一話 打放しボード作りあれこれ

 小規模の打放しコンクリート、出来上がってみれば極めて簡素で誰でも簡単に出来そうなもの。
ところが出来上がるまでに費やすエネルギーは携わった人でなければ分からないところ。
こんな簡易な造形が、多くの人々の共感を呼びつつもかくされた数々の労苦の成果が未だ正しく評価されないところが摩訶不思議。
この日の目を見ない困苦痢吐(コンクリート)。
この困苦の造形プロセスを気楽プロセスへ、がボード発想の原点!

 本物を醸し出す人造大理石、陶器に勝るプラスチック設備製品など、コストと耐久性など勝るとも劣らないものばかり、これらみな工場生産。
打放しコンクリートもこの発想を拝借ということでスタート。
取り敢えず外装と内装に的を絞り基材のボード選定から開始。
続いて打放しコンクリートの生命である表面の意匠性、30~40年前までは杉板が主流。
その後、時代の変転で台頭してきた廃棄物問題、続いて地球資源の保護へと変転、杉板からベニヤ板へと合成材が主役を、間もなく現在の合成樹脂塗装合板が、打放しコンクリートに最も相応しいものとして君臨、現在の代表的な意匠として馴染まれています。
あ!忘れていました。
鉄道や高速道路の高架、あの梁・柱は鋼製スチール型枠が主流です。
つまり合計四種の意匠となります。

 建物の内外装を打放しコンクリート調にするための条件、先ず基材であるボードをコンクリートと見間違える様なものにすることです。
意匠性は木製型枠としました。
何故かって?言いますと、鉄製の型枠模様は金属特有の冷たさがあるためです。
これでボードの意匠は本実(ほんざね)と塗装合板によるデザインに決まり。

 さて、内外装ボードのうち、内装用についてお話を続けます。
内装では壁・天井などに多く使われています。
しかし、一般的には壁が圧倒的です。
生活空間の中で最も人肌に触れ、しかも室内を冷暖房することで密閉されるため、色々な汚れが壁について目立つようになります。
一番大事なことは、壁についた汚れを簡単に拭き取ることが出来ることです。
次は外装用打放しボード。
40年余り携わった打放しコンクリート建築現場、そこから生まれた仕上げ方法。
その改良生成された仕上げ技術の転用で、打放しボードが生まれました。
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内外装打放しボードをまとめてみますと、

その1、
・基材のボード本体に吸水防水性
・セメントを主体とした無機質+ポリマーをコーティング
・打放しコンクリートと同一サイズと同調意匠
・ 汚れが簡単に拭き取れる(内装用)
・フッ素樹脂防水による超耐久性防水(外装用)
噛み砕いていいますと、ボード表面を覆う色々な材料は打放しコンクリート仕上げで使う材料と同一のものですから、当然、表面はコンクリートそのものといった質感と感触があります。

その2、 打放し意匠の造形。
コンクリートの表面は一見灰色を呈していますが、斑模様が全体に拡がっています。
これが意匠性を醸し出しています。
しかも、その模様には同じものはありません。
言いかえれば自然を最も意識されたデザインと言えましょう。
打放しボード意匠の生成は、手馴れた職人さんの手によって作られます。
何故かって?
機械による意匠生成は、どうしても単一デザインの繰り返しとなりがち。

その3、 打放しコンクリートの意匠性、
その最もたるものが同じ表面を形成する意匠がないことです。
ものの価値は“同じものが世界に二つとない”こんなことを聞いたことがありませんか?
考え方によっては特異な建材といえますね。
忘れていました、このボードの正しい名称は「ノンクリート打放しボード」です。
内外装ボードは、今お話した様な今までにないいくつかの要素を備えた新建材です。

 次回は、打放し新建材についてもう少し詳しくご紹介します。
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by pikayoshi72 | 2005-09-26 07:48 | ブログ

第十話  ノンクリート打放しボードの誕生秘話

 今まで遠い昔話でごめんなさい。
話を現実に引き戻して、このところ“話題沸騰”の打放しコンクリート内外装ボードのお話をします。
 ところで打放しコンクリートがおしゃれなブティック、モダンな店舗や住宅、まさかこんな分野まで浸透するなど全く思ってもみませんでした。
IT技術によって瞬時のうちに世界中に受発信が出来るなど半世紀前には想像も出来なかったことです。
この様な変化のうねりの速さは、生活環境にまで影響を与えることは当然ですよね。

 さて、打放しコンクリート建築は大きくても小さくても、コンクリートが固まるまでの時間は同じ、ところが打放しコンクリートは小さなもの程、手間がかかる。
そんなところが木造建築との違いかなあ。
実例でお話しましょう。
銀座、新橋、新宿と繁華街に展開する某居酒屋さん。
小さな店づくりを短期間での工事、一遍に大勢の職人さんが入り乱れての突貫工事、“時は金なり”を地で行く様な凄まじいもの。
壁面を打放しで!先ず鉄筋、次に型枠の組立、そして生コンの注入、あと固まるまで待つ。
それから型枠のバラシと、手数の掛かることこの上なし。
手数がかかればお金もかかる、しかも例の不具合の有無、あれやこれやで徹夜作業の連続と相成る。

 こんな苦労にさいなまれて木造建築なみのスピードで打放しコンクリート建築が出来ないものかと考えて思いついたのが“ノンクリート打放しボード”この名前は後でつけたもの。
打放しコンクリートと同じ質感をボード上に表現出来れば文句なし!
過去40年余りの打放しコンクリート表面の仕上げ技術を活用すれば全く同じ質感が出来上がることは当たり前のこと。
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 住宅会社は内外装材を工場で作ったボードを使用していることが多いですね。
外壁も内装の壁も金具で留めたり、釘で打ち付けたりで、アッ!と言う間に出来上がり、こんな話や経験をしたことがありませんか。
 新築住宅の超スピード施工、昔は湿式と言って壁を土でこねて塗るなど手間ヒマがかかり大変でした。
その事を思えば何と速いことか、驚くばかり。
しかも、この壁を生コンを使って打放しコンクリートで作る現状は、湿式工法を通り越して、困苦痢吐(コンクリト)そのものですよ(困って苦しみ下痢をして吐く)、とこじつけてみました。一寸例えが強烈だったかなあ!

 こんなことがノンクリート打放しボード誕生のエピソードでした。
次回は、“ボード作りのあれこれ” お楽しみに。
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by pikayoshi72 | 2005-09-20 07:46 | ブログ

第九話  打放しコンクリートの老化について

 ある有名建築家の手になる打放しコンクリート、その容姿は建築自体が美術品として評価されるハイレベルなもの。
その名声は海外まで響くものだった。が、10数年の月日の経過は、その様相を一変させるものとなってしまった。
一説に風化は自然の摂理、逆らうことは無益と。
この様なケースは打放しコンクリート建築には当然のこととされて来たのが、ほぼ20年前位まで。
その原因と様相の変貌ぶりを辿ってみました。

 1960年代の打放しコンクリート建築は、第1、2、3話などで、お伝えした様に、不具合とされる修繕工法が未熟であったこと。
当時のコンクリート保護材料、中でも最も重要な防水材の耐用年数が短かったことと、打放しコンクリートはコンクリートのもつ自然な表情に対して修繕や防水工法はそれを阻害するものとされている一面がありました。
 つまり何等手を加えない、ヤリッ放しコンクリートが、最も大切なこととしていた時代でした。
前にもお話した様に、不具合の修繕技術が、未だ手探りの時代でしたから当然のことでしょう。
当時、自動車や工場から排出される汚染物質の増加で、空からは酸性雨が降りそそぐなど、今思えば自然環境破壊の時代でした。
こんな環境の中、打放しコンクリートは身を削りじっと耐えていた。と、いったところです。

 ご存知のようにコンクリートはアルカリ性です。
このアルカリ性の打放しコンクリートは酸性雨によって中性化して、おまけに汚染物の付着で黒ずんだなど各地で話題となっていました。
コンクリートが中性化すると内蔵されている鉄筋が錆びてしまいます。
しかも鉄筋が錆びると、その体積が7倍位まで膨張し、周りのコンクリートを押し出してしまい、押し出されたコンクリートは下に落ちていきます。
ニュースなどで建物の上からコンクリートの欠片(かけら)が落ちて来たといったことを耳にしたことがあると思いますが、それがそうです。(写真-鉄筋露出)
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それからコンクリートは堅いから水は吸わないと思っているのが普通ですよね、実はコンクリートには吸水性があります。
身近な例で夏暑い時、庭のコンクリートに散水しますね、水を撒くと灰色のコンクリートが瞬時にして黒い色に変わります。
これはコンクリートが水を吸っている証です。

打放しコンクリートの表面に何十年も繰り返し酸性雨にあったら傷んでしまうのはあたりまえですよ。
これでコンクリートの老化する原因が少し理解されたと思います。

 先にお話した様に、老化現象を抑えるには、この吸水性を防止するための防水材が不可欠、当時は「シリコン樹脂」などといって打放しコンクリートを保護する防水材が少なく外国から輸入されたものが主流で、あがめ奉ったものです。

 ところがこの防水材、額面通りの長期の防水性能が無かったことが打放しコンクリートの老化に繋がった原因の一つといえます。

 今お話したような様々な影響を受けて、新築時の灰色の打放しコンクリート、その偉容は汚染物で黒ずみ、ありし日の面影は消え失せ、欠片(かけら)の落下で鉄筋が顔をのぞかせているといった光景、これが正に打放しコンクリートの老化現象と言えましょう。
こんな姿を目の辺りにすると、あの強固で頑丈な打放しコンクリートも何となく頼りない哀れなものにしか思われませんね。

 こんないくつかの打放しコンクリートを保護する技術が当時未成であった為、十分な手当が行き届かず弱点となって多くの人々の夢を破り、その容姿は次第に少なくなっていきました。

 何か、もの悲しい話になりましたが、このようなことを教訓にして改良改善され適切なメンテナンスを施すことで、現在は飛躍的な耐久性が実現されていますのでご安心を。

 次回は、今までの昔話から一服して
目前の「ノンクリート打放しボードの誕生秘話」をご紹介します。
お楽しみに!
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by pikayoshi72 | 2005-09-12 07:48 | ブログ

 第八話 打放しの知識を深める

 神業と人間業の二つを標榜、期待と想定の狭間に揺れる打放しコンクリート。
無垢(ムク)の仕上がりが最終地点。
とは言え目前にした不具合は多種多様な欠陥症状を呈し、各々に適応した方法を考え乍ら進めなければなりません。

 ところで修理を要する不具合にはどんな欠陥症状があるか、遅ればせ乍らご説明します。
いろいろありますが、代表的なものをピックアップしました。

1.豆板(ジャンカともいいます)
 コンクリート表面に砂利が露出して空洞が出来たもの。(下部写真)
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2.気泡(ピンホールともいいます)
 コンクリート表面に空気が残存したために出来た小さな穴。
ピンホールでも大きなものは10㎜内外のものもあります。(下部写真)
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3.表層剥離
 一寸むずかしい名前の不具合ですね。
滑らかな表面が剥離して、ザラザラな表面となってしまったもの。     (下部写真)
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4.コールドジョイント
 いよいよ佳境にせまって来ましたね。
専門用語ですから一般には知られていません。
一例で説明します、コンクリートの壁を想像して下さい。
その壁の中央を横断し、しかも大きな筋や段差がついている状態です。
中にはこのコールドジョイントを境にして上下のコンクリートの色が全く異なったもの、例えば上側が白色で下側が黒色となってしまったものもあります。(下部写真)
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5.ピン角の欠け
 コンクリートの柱で説明します。
最近では柱の四隅を直角にすることが多い様です。
この直角な四隅の角の部分が欠けた状態をいいます。

6.錆汁
 コンクリートには中に鉄筋が入っています。
この鉄筋がコンクリートを打設する前に、 雨に降られたりすると、錆びてしまいます。
その錆が降雨の時錆汁となって、下のコンクリートの 表面に流下していきます。
その時に表面に錆汁が染みこんで付着した状態をいいます。
この錆汁は洗っても取る事は出来ません。(下部写真)
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 打放しコンクリートの不具合の代表例は、ほぼこんなところかと思います。
念のため新築時に見られる修理を要する不具合であることをお忘れなく。

 時、あたかも新幹線の開通(1964年)に引き続き、
東名高速道路の建設が最盛期を迎えていました。
高架の支柱や側壁の不具合に対処する為、参加させていただきました。
土木関係では新幹線の参加に続く快挙と喜んだものです。
新技術として少し認知されたかなあ?と思ったのもこの頃でした。

次回は打放しコンクリートの老化について。

お楽しみに!
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by pikayoshi72 | 2005-09-05 07:52 | ブログ