「ほっ」と。キャンペーン

「打放しコンクリートと共に」 その(56)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は建築仕上げ技術1993年8月号、日本建築仕上学会・学会賞受賞者対談と銘打って「打放しコンクリート面の生と命」を6回に分けご紹介します。本日はその第1回目「自然との融合・融和」をご紹介します。
e0030813_7164559.jpg

e0030813_7181059.jpg

自然との融合・融和
地濃◇一文字瓦の勾配ゆるやかな屋根。その数寄屋づくりのたたずまいに木々の緑が実に良く映えますね。
 丈15mほどの黒マツ・赤マツ、雄大で色鮮やかなもみじ、つくばいに滴る水の音、セミの声、風に揺らぐしだれもみじ、木々の間からの心地よい涼風・・・・。いつしか忘れかけていた自然、それを享受できる。そんな思いがしますが、このような空間づくりをご自宅に求められたことには、何か強い思い入れがあったのでしょうか。
e0030813_7183690.jpg

吉田◇人間も自然界においては、一動物に過ぎないと思います。だから、可能な限り自然環境に溶け込む。朝日を迎え、夕日を送る。自然界から与えられる喜怒哀楽を素直に受けとめる。そこに快適な生活が生まれるのではないかと。したがって、自然環境下の木々の中に生活の場が設けられるのが本来の姿のように私には思えたのです。
 そこに、遠州・三方原台地の自然林のこの地に、これを具現化した訳です。黒マツや赤マツなどは当時からの自然林なのです。
地濃◇アメリカ西海岸のペブルビーチ界隈の別荘地を旅した時、目にした光景は、家や人は自然界のリス程度の大きさでしか見えませんでした。風光明媚な地なのに、家や人はぽつり、ぽつり。なぜなのだろうかと思い、尋ねてみましたところ、自然界の樹木が立枯れしない限り、購入した土地といえども、新築や増築はできないということでした。
 まさしく、自然環境を尊重し、そこに人間が溶け込むべきことの考え方のようです。
吉田◇自然を壊さないで自然の中に建物を造る。すばらしいことですね。ところが、自然を従とするような考え方だと自然破壊、環境破壊が生じてしまう。このようなことを無限に広げていくと、人間らしく生きるための環境を失い、やがては人類が滅亡してしまうと言うことになりますね。
地濃◇その通りだと思います。我が国では国土が狭いと言うこともあってか、自然を従とするような建物づくりが多い。本末転倒なことですね。
吉田◇自然界の草木や鳥類の営みに接していれば、無意識のうちに何かを感受している。その何かが新しい発想を生み出してくれるのではないでしょうか。
 自然環境下に身をゆだねていますと、自分の強さや弱さが見えてくる。そして、自然の勢いが明日への活力を呼んでくれるような気さえします。緑のフレッシュエアーとでも言えるものでしょうか。なにしろ、日常の仕事に没頭している者にとっては、無機質化した精神状態になりがちです。自然との融合はとても大切なことのように思えるのです。
地濃◇日本人は元来、恵み豊かな森林風土の中で、自然と融和することに幸せを実感してきたと思うのです。近くの川で魚を釣り、裏山で山菜を採る。住まいにしても同じことが言えたのでしょう。山の中で呼吸をしてきた生命ある木を、木の持つ性質を損なうことなく活かして、柱や梁と言う形でそれを組み立て、その空間の内と外で人と自然がうまく融合すると言うように。
吉田◇言い換えれば、日本の木の文化と言えるものでしょうね。
地濃◇木が主となることの意味での漢字が柱。柱と柱のあいだが間。そして間という文字からできている言葉に、間取り、間合い、間違い、間引き、間もなく、間に合う、間抜け、間尺、間仕切り・・・・。
 このように、「木」を基点とした言葉がたくさん見受けられます。このことからも木の文化を象徴していることがうかがえますね。
吉田◇確かにそうですね。言葉ひとつにしても、日本人の暮らしの中で、木との関わりが大きいことがよくわかります。
地濃◇それに関連して、「風」からできている言葉もたくさんありますね。風光、風味、風景、風潮、風流、風情・・・・。
吉田◇これも、自然との融合から生まれた言葉でしょうね。風という字からも、自然の尊さやありがたさを教えられるような気がします。
地濃◇ところが今日に至っては、大都市の過密化や地方都市の近代化によって、自然との融合がめっきり減少してきましたね。
吉田◇都市においては、「コンクリートジャングル」とか「グレーの街が色を欲しがっている」とかの言葉が生まれるくらい、木造がコンクリート造の建物に変わってきた訳ですからね。
地濃◇特定な場所に、しかも限られた土地に人々が集中し生活を営むには、横に縦にと重なり合って生活せざるを得ない。このような都市環境下の建物は、必然的に、ものを遮断することのできる材料で構成された建物でなければなりません。
吉田◇それは、外界の熱、音、光、風、水など完全に遮断し、地震や火災などの外敵から身を守ることのできる建物と言う意味からですね。
地濃◇この点、数千年以上の歴史を踏まえてきたコンクリートは、その強さと耐久性のほかに、十分な厚さと広がりの面をもって、火、光、熱、音、水、などを完全に遮断することのできる能力を有しています。
 だから、コンクリートは人々が横に縦にと重なり合って生活する場をしつらえる格好な遮断材料になった。それがコンクリートジャングルを生み出したのではないでしょうか。
吉田◇「火事と喧嘩は江戸の華」というような、のどかな時代は遠くの昔ばなし。
 火に弱い木造では、出火すると急速に延焼拡大し、建物全体に街全体に火がまわる。個人はもとより、都市全体の生命財産をも失うことになる。そこで、コンクリート造でこれを解決した訳ですね。
 自動車騒音にしてもまたしかり。
 これらの結果が、逆に自然と人との融合を隔絶させることになった。そのように言えると思いますね。

 次回は建築仕上げ技術1993年8月号、学会賞受賞者対談「打放しコンクリート面の生と命」の内、「型わく模様は生命の移植」をご紹介します。

 この年1993年の重大ニュースとして5月15日、Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)が誕生しました。日本のサッカーは新しい時代を迎えました。「チケット不足」にも煽られて日本全国は熱狂的なサッカーブームとなった。当時の選手にはカズ、武田、ラモス、ジーコなどの蒼々たるスター選手がいました 。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
[PR]
by pikayoshi72 | 2009-02-02 07:20 | ブログ


<< 「打放しコンクリートと共に」 ... 「打放しコンクリートと共に」 ... >>