「打放しコンクリートと共に」 その(55)

 今回は建築技術1992年12月号,特集「RC打放しのデザインとその技術」の「打放しの問題とその対策」を4回にわたりご紹介します。本日はその最終回「リニューアル物件の分類」をご紹介します。

リニューアル物件の分類
 昭和53年2月より平成4年3月までの14年間小社が施工した打放しリニューアル物件は421件である。これらを打放しリニューアルするまでの築後の経過年数・型枠面積・型枠種別・地域別および発注先をそれぞれ調べてみた。これは、あくまで小社の打放しコンクリート若返りシステム(吉田工法)によるものであることを前提にしてご理解いただきたい。また,依頼から調査・実施までのフローを図6に示す。
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①経過年数
 経過年数の短い5~10年以内でリニューアルを実施した物件の主な背景は
●汚染物の付着が目立ち始めた
●ひび割れによるエフロレッセンスと漏水の発生
●鉄筋の露出と錆汁の付着
●コンクリート欠片の剥落
などである。特に鉄筋のかぶり厚さの不足した箇所は,錆化鉄筋の膨張圧でコンクリートが剥落し,居住空間の安全性が阻害され,同時に美観の低下が著しいことによるものと思われる。

②型枠面積
 リニューアル物件のうち,3000㎡未満が全体の90%以上を占めている。これらの物件は公共建築物や事務所ビルが主で,不特定多数の利用者の安全性確保と劣化汚損による美観の低下によるもの。

③型枠種別
 1950年代より1960年代にかけての打放し建築のほとんどは小幅板型枠で,リニューアル施工物件の93.3%を占めている。当時は,土木構造物を除いて打放しは小幅板型枠が主流であった。合板型枠は1965年頃より参入してきたが,まだ少数派であった。

④地域別
 経済原則に従い,打放し建築物件も関東地域が圧倒的に多い。関西に比較して中部が10%余多い理由は,小社が中部地域を拠点に活動したことによる。

⑤発注先
 全体の50%近いNTT局舎の施工実績は,東京オリンピック当時“1軒に1台の電話架設を”とのキャッチフレーズで全国各地に電話局舎が建てられ,そのリニューアルによるものである。局舎建築にあたっての外壁基本設計が,打放し柱・梁とタイル張り外壁で構成され,その後各局舎とも経年劣化によるリニューアルの必要性が順次到来したものと思われる。

 打放しリニューアルの主流は,原設計に基づいて意匠性の回復である。厳しい外部の環境作用を受けて,往年の打放し建築の面積は疲弊し,表面の一部は劣化損耗し,時の流れと老いを感じさせている。
 一方,この劣化した打放しを補修・改修する機会を利用してイメージチェンジし,意匠性を一新してしまうケースがある。
 しかし,打放し建築の位置する周辺環境によっては,まったくの違和感を与えることになりかねない。縁に包まれ市街地の喧噪を排除した自然環境に,樹木の成長と重なり合って同化したたたずまいは,打放しならではのものではないだろうか。単に打放しだからとこだわるだけでなく,地域の景観に占める価値観も,打放し改修工法の選択肢の主要な条件の1つである。打放し建築は,近代建築をうたう金属外壁やタイル張り仕上げに比較し疲れを感じさせないばかりか,心の安らぎさえも無意識のうちに与えるものがある。
 打放し建築の醸し出す自然回帰の心情と意匠性を守るために,よりリアルにしかも長期にわたり美観と耐久性を付与した技術の向上にいっそう研鑽したい。

 次回は建築仕上技術1993年8月号,学会賞受賞者対談と銘打って「打放しコンクリート面の生と命」をご紹介します。

 この年,最後の重大ニュースとして4月25日,ロック歌手の尾崎豊が東京都足立区の民家の庭で半裸のまま朦朧としているところを発見され、容態が急変し死亡しました。直接の死因は肺腫瘍であったが、体内には致死量を超える覚せい剤が認められたそうです。 追悼式に3万人のファンが参列。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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by pikayoshi72 | 2009-01-26 07:18 | ブログ


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