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「打放しコンクリートと共に」 その(48)

こんにちはpikayoshi72です。

今回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」のうち,最終回「9.浸透性吸水防止材と水性アクリルの組合わせ」から最終項「12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化」までをご紹介します。

9.浸透吸水防止材と水性アクリルの組合わせ
1975年頃より,水性アクリルクリヤーエマルション(以下,水性アクリルクリヤーと称す)が取扱いの容易なこと,溶剤型に比較して性能でも同等以上であることが評価され,打放し現場に登場したが,造膜型防水材の欠点であるコンクリートの欠損部,ピンホール等に対して連続皮膜が形成出来ず,この点では従来のアクリルクリヤーと全く同様である。
過去の打放しに対する各種防水材の特長の組合わせによる施工以外には,満足すべき打放しの防水方法は不可能であるとの結論に達した。そこで開発されたのが,浸透性吸水防止材と造膜性の水性アクリルクリヤーの組合わせである。
シラン系オリゴマーを主成分とした防水材を下地に含浸塗布したあと水性アクリルクリヤーを塗布する方法である。水性アクリルクリヤーは打放しの意匠性を損なうことがなく,下地の防水材との付着も良好である。これにより打放し表面の微細なピンホールと造膜し得ない箇所の防水が可能となり,単体で打放しの防水を試みた過去の方法による防水方法の弱点は一掃され,この組合わせによって今までに高い防水性と信頼性を手にすることが出来た。この工法は改良型打放しコンクリート表面仕上げシステム(吉田工法)として,多くの実績を有している。(図-2)
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10.超耐候性樹脂の濡れ色とムラ
1985年頃より超耐候性フッ素樹脂が話題となり,既に産業界では焼付けによる次代を背負う塗材としてもてはやされていた。打放し建築の超耐候性付与は関係者の一致した夢であり,何れ近い将来このようなタイプの塗材に取って代るだろうと推測されていた。
関係各社の研究室段階では,既に各種の試験は完了済みと言われていたが,上市されたのはここ数年前からのことである。超耐候性の決定版としてフッ素樹脂が花々しく登場したが,価格面においてもう一息と言うところである。
その隙間を突くような形でアクリルシリコン樹脂が登場した。フッ素樹脂と同様,超耐候性を掲げつ且つ価格面での魅力を前面に,フッ素樹脂に対し総合的には優るとも劣らぬ勢いである。
両樹脂ともフィールドにおける実績は少なく,これから楽しみである。試験データから考えれば,今までにない長期耐候性は理解できるところであるが,実績こそ最も信頼される唯一のものである。
ところでフッ素樹脂とアクリルシリコン樹脂は何れも溶剤型である。過去溶剤型のアクリルクリヤーによる濡れ色とムラによる意匠性を阻害したことに関連して,超耐候性溶剤型アクリルシリコン樹脂(以下アクリルシリコンと称す)をテストした。
前述した通り浸透性吸水防止材を下地としてアクリルシリコンを塗布した。結果は想像した通り濡れ色となり,著しいムラが生じ,寿命短くして消えたかつてのアクリルクリヤーと同様であった。打放しはそのもつ素材の良さを変えないことが基本である以上,超耐候性であっても,こと打放しに関しては用途が限定されることになる。
こうした背景にありながら,打放し建築は衰えることを知らず,最近では商店建築は勿論のこと一般住宅にも普及し止まるところなしの勢いである。打放し建築の耐久性は,極論ではあるが高性能の防水性委ねられている以上,是が非でも超耐候性の防水材を実用化する以外に道はない。
11.超耐候性アクリルシリコンの施工方法の改善
そこで超耐候性アクリルシリコン樹脂防水材塗布により生ずる濡れ,ムラを抑制する技術の確立が,今後の打放し建築に解決されなければならない。最も重要なものとして焦点が絞られた。
シラン系オリゴマーを主成分とした浸透性吸水防止材を下地とし,アクリルシリコン樹脂防水材の組合わせ工法により,防水材と耐久性の確保は可能となったが,残る意匠性の阻害問題をどのように解決するかであった。
繰り返しの組合わせ実験結果,下地に浸透性吸水防止材,次に水性アクリルクリヤーで強固なアクリル樹脂塗膜を形成する。これにより溶剤型アクリルシリコンの浸透を防止することによる濡れ・ムラを防止して塗膜の均一化を図った。しかし水性アクリルクリヤー塗膜の養生不足が原因と思われるが,溶解力の強いアクリルシリコンに溶剤による影響を受け,縮みや溶け出しによる塗膜の破損を引き起こすケースが生じ,十分な養生をする必要性が出た。
この組合わせ工法により,はじめて超耐候性アクリルシリコン防水材が打放し素材を損なうことのない仕上げに漕ぎつけた最初の技術である。この工法はフッ素樹脂においても同様な効果が証明されている。
打放し建築に超耐候性付与と意匠性を損なうことがない防水工法に対し,1990年,第2回中小企業優秀新技術・新製品賞受賞に輝く技術として紹介された。なおこの技術は打放しコンクリートSEFシステム(吉田工法)として全国各地で施工している。(図-3)
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12.水性アクリルシリコンエマルションの実用化
一方人にやさしい環境をテーマに,3Kと称する建築現場で,労働安全衛生上,溶剤型の諸材料は極力水性型に移行しつつあり,社会的な要請でもある。
1970年代の溶剤型アクリルクリヤーから水性アクリルクリヤーに改善したことを想起して,溶剤型アクリルシリコンを水性化することにより,労働安全衛生の改善と溶剤型アクリルシリコンを塗布することで生ずる縮みの問題を一挙に解決出来るものとして,打放しのための最初の水性アクリルシリコン(NY-9090E)を開発,実用化し,1991年10月より施工を開始した。(写真-12)(表-1・表-2)

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過去30年余にわたり試行錯誤と失敗の歴史に終止符が打たれ,打放し建築から早期劣化を阻止し,長期耐久性を期待される新技術である。しかしより良い建築に貢献するためには,単に超耐候性の付与と意匠性を確保するだけでなく,新・旧打放しに存在する欠損部を修復して,生かすための補修という困難なハードルが打放しにはつきものであることを忘れてはいけない。
真に打放しは安全無欠であることは,論を待たないが,必ずしもそのようなことにはならないところに,これからも打放しの盡きることのない技術上の問題がある。

次回は月刊建築仕上げ技術1992年8月号「打放しコンクリートの仕上げ技術」他をご紹介します。

さて、この年1992年の重大ニュース(国外編)、9月12日:アメリカ合衆国NASAが打上げたスペースシャトル「エンデバー」に日本人では初めて毛利衛氏が宇宙に飛び立ち8日間の宇宙飛行をしました。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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by pikayoshi72 | 2008-12-08 07:35 | ブログ


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