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「打放しコンクリートと共に」 その(46)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は「塗装と塗料」1992年1月号、「打放しコンクリートから見た仕上材の経緯と超耐候性アクリルシリコンまで」を3回に分けご紹介します。
本日は第1回「あらまし」から「4.打放しコンクリートのその後」までをご紹介します。
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「あらまし」
 打放しコンクリートの保護仕上材の変遷と,新開発された水性アクリルシリコン樹脂エマルション(以下水性アクリルシリコンと称す)に至るまでの過去30年余の流れと,何故今アクリルシリコンか,そのルーツを辿ってみた。
 最近,コンクリート建築の早期劣化が社会問題化し,建物の資産価値の低下だけでなく,生活環境の安全性までも厳しく指摘されている。コンクリート建築の中でも,ひときわ文化的な香りのする打放し建築は,素材のもつ重厚な雰囲気と意匠性が多くの人々に好まれて来た。打放しコンクリートとはほぼ時を同じくして登場したのがシリコン撥水材で,マジックを思わせる水玉と弾き現象にめずらしさと驚きを与えた。
 当時は打放しの仕上げにシリコン撥水材を塗布することになり,半永久的な防水機能が保持されたものと思われていた。しかし数年またず防水性能は低下し,打放し表面に発生したひび割れからはエフロレッセンスが流出し,その他汚れの付着等で,その撥水効果は大きく期待を裏切る結果となった。
 このような現状に対し,新たな防水材の参入と改良改善されたといわれる新製品が上市されたが,撥水材に取って代わるだけの性能をもった防水材はなかった。
 こうした中で撥水材に代わる造膜型のアクリルクリヤーが,大いに期待され,今までにない耐候性能をもった防水材としてもてはやされた。しかし造膜型アクリルクリヤーが,溶剤型特有の打放し表面の浸透格差から生ずるムラと,コンクリートの色を濡れ色にしてしまうなど,打放しの意匠性を著しく阻害して,多くの期待を背負ったまま失意のうち姿を消した。打放し建築の防水機能の低下喪失と相まって急速に劣化汚損した惨状を間のあたりにして,防水材の果たす役割の重要さが認識された。このようなことを背景として長い間打放しに求められていたのが打放しの意匠性を阻害することのない,しかも長期にわたり防水性の保持が可能な防水材であった。
 本稿は打放し建築の防水材の変遷と,打放しコンクリートにまつわる話題を施工現場を通し駆け足で記述した。

1.打放しコンクリート建築の幕開け
 1952年アントン・レイモンド氏が設計した「リーダーズ・ダイジェスト東京本社ビル」が本格的な打放しコンクリートのスタートだといわれている。その後1960年代に入り東京文化会館,国立国会図書館など規模的に大きいものが登場し,これらがブームの始まりとなり,公共建築に多く採用されるようになった。
 打放し建築が醸し出す素朴な力強さと,剥き出しの素肌に加え環境変化に応じた千変万化の表情は建築デザインの上で,今までにない価値観を生み出したと言われている。タイル張り仕上げや吹付け仕上げとは比較出来ない野性的な打放し建築は,その空間構成を住宅や商業建設にまで拡大して多くの設計技術者の心を奪い,激しい変転と推移の中で孤高の姿を保ち続けている。

2.打放しコンクリートの現場
 打放しコンクリートは,名称の通り1回限りの仕上げを伴った建築である。やり直しがきかない工事で,型枠に囲まれ内部の状況は全く見ることが出来ず,目隠しで物作りをしているのと同じである。型枠を取りはずししてはじめて出来・不出来が確認され,巣穴やコールドジョイント(打ち継ぎの境に出来る傷跡)が発生していれば,その規模によって解体して新規に打ち直しを要求されることすらあると言う。
 また打放しの表面は非常にデリケートで,セメントや骨材も産出地域で変わるため,その都度打上がったコンクリートは色合が異なる。しかも型枠に使用される剥離材によってもその仕上面は変化する。その他表面に点在する気泡や水アバタは打放しコンクリートの耐久性に拘わってくるだけでなく,美観上許される範疇にあるか否か判断を要するものである。
 このような新築時に生ずるいろいろな問題に対し明確な基準はない。それらに対処するための技術手法は,経験による部分が大きく占め,未だ手探りの状況にあると言われている。従って完全無欠の打放し建築は稀で,それだけに一面では永遠のテーマとして今後も高い関心を持ち続けると推測される。その他に打放しコンクリート建築には避けられないものに,乾燥収縮によるひび割れがある。(写真-1)
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 表面から次第に水分の蒸発とともに固化していくコンクリートが,微細で時には漏水を招くひび割れが発生し,対策に苦慮する。仕上げに塗布した防水材もこのひび割れには抵抗出来ず,雨水の浸透によって,エフロレッセンス(白華現象)を流出させて,建築主の不信を買うことになる。(写真-2)
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業界では高強度で高品質の打放しを目指し技術開発に懸命の努力をしているが,効果的に事態の改善が進んだとは言い難い状況である。

3.打放しコンクリートの欠損対策
 完璧な打放し仕上げにならず,各部位に巣穴,コールドジョイント,大小混合した無数のピンホールと色違い,これらは放置するわけにはいかず,出来る限り違和感のない補修をすることになる。デザインは別として打放し建築の表情は千差万別である。モルタル塗りと異なり表面を成形するだけでは仕上げとならず,生じた欠損箇所の周辺のコンクリート肌に,その都度合わせた補修が求められる。
 打放しの地肌は型枠から転写された木目模様や樹脂型枠の雲状模様があり,いずれも型枠1枚ごとにその模様は異なったものとなっている。欠損部の補修は,それを取り巻く周辺のコンクリート肌に合わせた調合材料で修整していくが,曼荼羅模様から成る放しは補修材料の調合の可否で決まる。(写真-3)
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打放し仕上げを左右し,後々の防水塗材による仕上げが成功か失敗かを決定づけるものである。その成形技術として打放しコンクリート表面仕上げシステム(吉田工法)がある。

4.打放しコンクリートのその後
 築後数年で黒く汚れ,各所にひび割れが発生し水滴となって流れ落ちた雨水がコンクリートに浸み込み,まだら模様を描いて濡れ色となる。(写真-4)
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仕上げにたっぷりと含浸されて塗布した撥水材も,建物の上層部ではその効力は消えている。この症状の繰り返しを経て,やがて本格的な劣化症状へと進行していく。打放しの表面は前述のように多様な欠損が存在し,浸透した水分はコンクリートの毛細管現象を通して次第に内部深く浸透して徐々に中性化していく。
コンクリートに内在する鉄筋は錆化し,腐食膨張してやがて被りコンクリートを押出し,剥落させることになる。(写真-5)
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 その他環境作用に影響して発生するコンクリートの破壊因子は躯体にまで及ぶことすらある。打放し建築に共通して現れる劣化症状は,先ず防水材の性能低下による吸水コンクリート化である。(写真-6)
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 特に最上階が著しく,下層階になるに従ってその吸水程度は少なくなる。打放し建築に限ったことではないが,上層階ほど風雨や太陽熱をはなはだしく受ける。日射温令と乾湿繰り返しによってコンクリートは劣化していく。むき出しの打放しは直接影響を受け,防水材の喪失によりコンクリートの中性化は勿論のこと,汚れの付着,内部鉄筋の錆化は加速度的に劣化損傷し拡大していく。
 表面の防水が十分に機能発揮していれば,このような劣化はかなり抑制することが出来る。その意味では打放し建築には高性能で長期耐久性に優れた防水材が必要である。

  次回は第2回「5.打放し防水材の変遷」から「7.濡れ色・ムラの追放と失敗」をご紹介します。

 さて、この年1992年の重大トップニュース(国外編)、第25回バルセロナオリンピック(7月25日~8月9日)がスペインで開催され,日本勢は金3、銀8、銅11のメダルを獲得しました!

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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by pikayoshi72 | 2008-11-24 08:02 | ブログ


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