こんにちはpikayoshi72です。
今回は「建築技術」1989年11月号、特別企画:建物の修復と再生、「建物の補修・改修システム」の第2回、「3.調査報告」、「4.原因の推定」 をご紹介します。 3.調査報告 1)打放しコンクリート ①ひび割れ パラペット・各段ベランダ鼻先および梁形にひび割れが認められ、また各段ベランダ上裏にもひび割れが認められる。これらひび割れの発生は、北面に比べて南面に多かった。 また、ベランダ上裏のひび割れからは、白色状の流下物(エフロレッセンス)も認められた。 ②露出鉄筋 パラペットおよび各段ベランダ鼻先部に露出鉄筋が多く認められた。また、ベランダ上裏部分にコンクリートかぶり厚の少ないスラブ筋の露出が認められ、当該箇所にはエフロレッセンスも同時に認められた。 そのほか、雨水の当たりにくいベランダ奥の柱形や梁形には、ほとんど露出鉄筋は認められなかった。 ③コールドジョイント パラペットおよび各段ベランダ鼻先にコールドジョイント(新築時のコンクリート打継ぎ)が認められた。当該部分はある程度の肌別れを生じており、ひび割れと同様に内部への雨水の浸透があり漏水していた。 ④モルタル補修跡 各階ベランダ鼻先部分に、新築時の欠損部へのモルタル補修跡が認められた。補修跡は変色し、一部浮きや亀裂が生じていた。 ⑤木屑 上裏の一部に木屑が露出していた。 ⑥補修モルタル欠損部 ベランダ鼻先の一部に、わずかに補修モルタル欠損箇所が認められた。 ⑦ジャンカ ベランダ見付けの一部に新築時のジャンカ(豆板)跡が認められるが、その数はわずかであった。 ⑧木コン跡 新築時の木コン穴の未処理および木コン埋め込みモルタルの欠落により、内部のセパレータが発錆している箇所が認められた。 ⑨その他 全面的に汚れの付着が著しく、特に北面にはコケなどの付着も認められ美観を損ねいていた(写真1,2)。 2)外壁タイル(れんがタイルおよび磁器タイル) ①汚れ れんがタイルは施工箇所かが1階の腰壁であったため、雨水などの飛散によりかなりの汚損状況であった。また、磁器タイル表層面の汚れは軽度であった。 ②ひび割れ いずれのタイルについても、目地・ひび割れからのエフロレッセンス流下を確認した (写真-3)。 ③浮き 妻壁である磁器タイル部分を打診調査したところ、15%程度の浮きを確認した。 ④その他欠損箇所 れんがタイル部の随所で欠損部を確認した。 3)腰壁リシン吹付け部 ①汚れ 教室の外部腰壁がリシン吹き付け仕上げであるが、経年劣化による変化汚損と人為的な汚れなどを確認した。 ②ひびわれ 腰壁の中央部付近にひび割れを確認した。 ③浮き 腰壁面を打診したところ、随所で浮きを確認した。 ④その他欠損箇所 各面に数カ所程度の欠損を確認した。 4.原因の推定 1)打放しコンクリート ①ひび割れ パラペット・各階ベランダ鼻先・梁形およびベランダ上裏のひび割れは、そのほとんどが長手方向に対して垂直に発生している。これらのひび割れが南面に多く発生していることから、原因は温度変化による伸縮挙動によるもので、コンクリートの乾燥収縮や荷重による曲げモーメントにも起因していると考えられる。 これらのひび割れは、その部分からの雨水の浸入により内部鉄筋を腐食させ、その膨張圧によりひび割れ幅をますます大きくさせる。 また、ベランダ上裏のひび割れからエフロレッセンスの流下が認められることから、ベランダの防水性能の低下が考えられる。 ②露出鉄筋 露出鉄筋の発生箇所は、パラペットやベランダ鼻先など雨水にさらされる部位にまで集中している。コンクリートのかぶり厚不足またはひび割れからの雨水の浸入により鉄筋が腐食し、錆の膨張圧によってコンクリートの剥落が生じたものと推定される(写真4)。 ③コールドジョイント 新築時のコールドジョイント(打継ぎ)補修モルタルが劣化し、変色やひび割れ・浮きなどが生じている。 ④モルタル補修跡 新築時の豆板などのモルタル補修跡であり、その表層面にはひび割れが発生していることから、経年劣化により接着力が低下しているものと考えられる。 ⑤木屑 コンクリート打設前に桟木などの切り屑が型枠のなかへ落下したもので、その上からコンクリートを打設したため、型枠脱型後表面に露出したものであると考えられる。 ⑥補修モルタル欠損箇所 新築時の補修用モルタルが、経年劣化により剥落したものである。 ⑦ジャンカ 新築時のジャンカ跡は躯体内部の空隙であり、雨水や炭酸ガスなどの侵入を招き、躯体劣化の進行を加速させる。 ⑧木コン跡 内部セパレータの腐食膨張によりコンクリートの剥落を引き起こす危険性もあり、そのほか木コン跡についても再点検の必要があると思われる。 ⑨調査結果の集計は表1のとおりである。 2)外壁タイル(れんがタイルおよび磁器タイル) ①汚れ 1階のれんがタイルの表面は汚損は、汚泥状の雨水飛散に伴って当箇所のれんがが汚れたものと推定される。また、磁器タイル面にはその表層面が鏡面に近い仕上りとなっており、汚れが付着しにくいため軽度の汚損であったと推定される。 ②ひび割れ 目地に確認したひび割れは、セメントの乾燥収縮によってひび割れが発生しエフロレッセンスの流下になったと推定される。 ③浮き タイルを接着させるために使用したモルタルの乾燥収縮、および目地などのひびわれ部より、雨水などが浸透することによって浮いたものと推定される。 ④その他欠損箇所 外部からの人為的衝撃が加わって発生したものと推定される。 ⑤調査結果の集計は表2のとおりである。 3)腰壁リシン吹付け部 ①汚れ リシン仕上げの表層面が汚れの付着しやすい面を形成しているために汚れたものと推定される。変色については,当材料がセメント系のリシンであるために経年劣化に伴って変色したものと推定される。また人為的なよごれについては、黒板消しの粉チョークなどの汚れである。 ②ひび割れ 腰壁面に塗工されているモルタルの乾燥収縮によりひび割れが発生したものと推定される。 ③浮き ひびわれ部とその周辺に浮きを確認したが、当箇所から雨水などが浸透し浮きを生じたものと推定される。 ④その他欠損箇所 人為的な衝撃により出来たものと推定される。 ⑤調査結果の集計表は表3のとおりである。 さて次回は「建築技術」1989年11月号、、特別企画:建物の修復と再生、「建物の補修・改修システム」の最終回、「5.改修工法の決定」、「6.施工」そして「あとがき」をご紹介します。 さて、この年1989年の重大トップニュース、一連の幼女誘拐殺人で宮崎勤を逮捕 !宮崎努は前年8月から行方不明だった入間市の幼稚園児宅に人骨等のはいった箱を置き、新聞社宛に女性名で犯行声明を送りつけた。89年8月10日、宮崎努を強制わいせつ罪容疑で逮捕。翌11日に野本綾子ちゃん殺しを自供。10月19日、東京地検は宮崎の自供で埼玉県の事件を含む4件の連続幼女殺害事件に終止符(死刑判決)を打った。何とも残虐極まりない事件でした。 それでは次回をお楽しみに!
by pikayoshi72
| 2008-09-29 07:27
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