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「打放しコンクリートと共に」 その34

今回は(株)建築知識の月刊「建築知識」1989年7月号、特集:RC打放し監理術、「打放し・補修テクニックとメンテナンス」の最終回、打放しのメンテナンスをどう考えるか をご紹介します。

打放しのメンテナンスをどう考えるか

■メンテナンスはいつからするか
 どのような防水剤であっても経年劣化により性能低下していくことは避けることはできない。打放し仕上げで防水剤の性能低下にはまず汚れが表層に付着することから始まる。通常2~3年経過した頃よりそろそろ建物の最上階から下部に向けて付着し始める。日当たりの良い南面は比較的汚れは少ないが、北面等湿潤状態の長い面では汚れの他に苔やかびが発生している。(写真6.7)
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このような汚れの付着は、防水性能の低下をはっきり示すサインであり、同時にコンクリート内部へ水分が浸透を始めていると考えてよい。計画のたたき台として汚れの付着と損傷の有無が判断基準とされるが、少なくとも通常5~6年ごとに表層の洗浄と防水剤の塗布を勧めたい。
 現在行われているメンテナンスは、汚れの除去等初期のものは少なく、築後10~20年経過したものが多い。そのほとんどが防水性能の低下はおろか鉄筋の錆化膨張によるかぶりコンクリートの剥落が生じ危険な状態にいたって計画実施されている(写真8)。この意味では修繕工事である。
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 最近の打放し仕上げは外壁のコンクリートのかぶり厚が多く取られるようになって、一昔のような鉄筋の錆化膨張による剥落事故は少なくなったが、コンクリート表層についての劣化対策は十分とはいえず、防水性能いかんによるといえる状況にある。少ないケースではあるが、かぶりコンクリートの少ない箇所の鉄筋の錆化膨張による表層の剥離が部位によりみられることがあり、この場合はメンテナンスに修理も加えて考えなければならない。中には7~8年で修理を要するものもあるので、メンテナンスを兼ねて躯体の調査も併せて行うことが望ましい。以上のことから少なくともメンテナンスは汚れが付着し始めた時点から考えておく必要があろう。

■メンテナンスにおける洗浄
 打放し仕上げに付着した汚れは、空気中の炭酸ガスが溶け出した酸性雨、さらに塵埃、錆汁、エフロレッセンス等多種多様なものからなり、洗いを行うに先だって、まずこの汚れの実態を把握することである。油分を含んだ汚れは、油分を分解する洗剤が必要となろうし、錆汁には錆を溶解する性質をもった洗剤を使用すべきである。エフロレッセンスは一種の結晶体なので、簡単に取り除くことはできない。また除去した跡にエフロレッセンスの跡がそのまま残り見苦しいものである。
打放し仕上げの汚れを取るために強力な洗浄圧をかけたり、薬品を使用したりすることは表層面をかえって痛め、劣化を早めてしまうことすらあるので注意しなければならない。

■メンテナンスの手法
 劣化損傷した打放しコンクリートのメンテナンス手法として「打放しコンクリート若返りシステム」がある。新築時より20~30年経過し、表層の汚損に止まらず、鉄筋の利出やコンクリートの剥落に対し補修・補強する工法である。
汚れの除去はもちろんのことであるが、躯体コンクリートの強化付与をベースとした強化再生工法であり、打放し新築時の意匠性を復元させる工法としても知られている。
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補修修正方法は、基本的に躯体と意匠性にポイントがおかれ、露出鉄筋の保護強化も行われる。外部に接した部位の打放し表面の型枠模様は、汚れと劣化によりほとんど消失されており、雨水に当たらない部位のみ模様の痕跡を止めている状況である。
躯体の健全化と意匠性の再現により打放し仕上げの保全維持に十分応えることができる唯一の工法として高い評価を受けている。以下は「打放しコンクリート若返りシステム」の施工手順である。
①表面清掃・脆弱層の除去
表面をジェット洗浄または#60~100のペーパーもしくはワイヤーブラシがけで清掃(写真10)
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鉄筋の赤錆は化学洗浄剤(ケミカルエース-R)にて洗浄。

②コンクリート強化剤の含浸
コンクリートの脆弱層の補強と毛細管空隙充填による表面強度を保つため、NY-606強化剤を全面含浸塗布。
③露出鉄筋箇所の斫り・防錆処理
鉄筋腐食が原因で生じるかぶりコンクリートの剥離・浮き箇所を斫り、
鉄筋も健全な部分まで斫り取り防錆処理を行う。(写真11)
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④調合樹脂モルタルによるUカット・斫り箇所の補修
 ひび割れは、Uカット後雨水、空気流通遮断のためコーキングし(写真12)、
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NY-調合樹脂モルタルで押さえる。毛細ひび割れは、NY-調合樹脂パテで木ベラによる補修(写真13)。
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表面の仕上がりは修整用NY-調合樹脂モルタル(合成樹脂+特殊セメント+特殊硅砂+添加剤)によって表面に合わせた修整を行う。
⑤木コンの補修
 木コン穴の残滓を取り除き、NY-調合樹脂モルタルを埋め込む。
⑥打放しコンクリート表面の若返り色合わせ・型枠模様の造成
 耐候性に優れた数種の顔料・調合剤によって打放し全面の色合わせ。特殊刷毛による型枠模様の復元(写真14)。
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⑦若返りコンクリートの防水処理
 養生と表面の耐候性を保つため高性能防水剤NY-7090を全面に塗布。

さて次回は「月刊リフォーム」1989年8月号、特集:外壁仕上改修工法の材料と工法の「タイル外壁改修工事事例」をご紹介します。

さて、この年1989年の重大トップニュース、国内政治に目を移すと7月23日第15回参議院議員選挙において自民党は大敗北を喫し過半数割れに追い込まれ、 社会党が大躍進しました。これはリクルート事件、消費税導入、宇野首相のスキャンダルが自民党を大敗させた三大要因だったようです。

それでは次回をお楽しみに!
by pikayoshi72 | 2008-09-01 07:23 | ブログ


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