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「打放しコンクリートと共に」 その31

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は(株)建築知識の月刊「建築知識」1989年7月号、特集:RC打放し監理術、「打放し・補修テクニックとメンテナンス」の2回目補修に先立ちをご紹介します。
サブタイトル:うまく打てたと思っても
いやに目につくのがコンクリート面の欠損部
メンテナンスも合わせてそのテクニックを取上げる

補修に先立ち
 打放し仕上げは、素材のもつ重厚な雰囲気と化粧のない剥き出しの荒々しさにその魅力があり、しかも仕上げ材として改まった認識ではなく自然環境との調和に驚くほどの資質をもっている。
  煎じ詰めれば自然回帰の潜在的情緒を満たす素材ともいえる。このような素材であるが故に補修についても限りなく自然さが要求される根拠である。したがって、違和感がある補修は絶対避けるべきである。
  打放し仕上げ補修に対して素材の重要性の認識と心構えを携わる者全員が共通のものとしてもち、十分な理解の上に立って取りかかることが望ましい。

■補修で避けなければならないこと
 現場サイドでは欠損部だけ拾って、その箇所のみ補修しようという考え方が主流である。心情として理解できるが、打放しの表面は多種多様な色調と模様に型どられており、その一部に欠損箇所があるわけで、その箇所を躯体と一体化した補修修正をするには取合い周辺との整合上、簡単にできそうで難しいものである。
  短絡的な発想で着手すると消去すべき欠損部がかえって歴然としてしまい、繰り返し手間をかけた割には満足すべき補修にならないのが実態であり、むしろ結果的に失敗することが多い。

■打放し補修の基本
  打放し補修は施工内容からして清掃、塗装、左官、防水など専門職種に分割された作業であるが、それぞれ関連し整理統合した手順でまとめられたものである。しかし、一般的には左官による欠損部の補修と理解されているため、モルタル補修が先行されがちである。打放し以外の外壁は吹付け塗装等を除き、洗い工事を最後に行うことにより仕上げとなる。
 打放しもそのような発想で作業が進められているが、異なることは脱型後の表層面はコンクリート打設時の型枠からノロの流出や鉄筋の錆汁の付着等があり、またその他サッシュの取り付けや内外装等の諸作業に伴って発生する各種の傷み、汚れが仕上げ直前までついてまわることである。したがって打放し補修は、仕上げ工事として位置付けた上で各諸方の工事完了後に施工するのが望ましいが、現実には並行して行われることが多い。結果的に洗浄作業が最後となり、洗浄薬品による表層面の変色と補修材の変質を招き補修箇所を歴然とさせることになる。
 打放し仕上げは、補修着手前に躯体の汚れを除去した表層面にしておくことが肝要である。しかし、現場では脱型した打放し仕上げの表面は、汚れが付着していないと思いがちで、まずこのことがつまずきの第一歩である。

■補修の目標
  打放し仕上げの補修目標は欠損部の補修跡が残らないこと、即ち人為的なものを感じさせない仕上げである。また、経年変化による補修跡の無惨な状況を解決しなければならない。こうしたことが実証されて初めて補修が認知された技術となるのではなかろうか。

■打放しの養生
  打放し補修はコンクリート打設が全部完了し、しかも型枠ばらし後、夏期で2週間程度乾燥養生して、少なくとも表層面の乾燥が確認されるまでは手をつけるべきではない。
 脱型後のコンクリートは多量の水分を含んでいるため表層は黒色に近い色をしている。水分も気温、湿度、通風などの自然条件にによって乾燥度合いが変わるが一般的に含水率8%以下になってから補修に入るのが通常である。乾燥するに従いコンクリートは黒色より灰色やときに白色に近いものとなる。十分な乾燥を待たず補修するのは、湿潤状態の色調に合わせた補修材を調合するため、コンクリートの乾燥に従い色違いが目立ってくる。急ぐあまり湿潤の状態で補修したものはまず失敗するとみてよい。

■補修モルタルとは
  よく知られていることであるが、コンクリートとモルタルとは根本的に異質のもので、親戚ではあるがまったく違った性質をもったものであることを理解しておくことである。
  最近、打放し用の補修モルタルとして各種市販されているが、打放し表層面の色調や型枠模様等の整合性などはこうした材料でクリアーすることはまず不可能である。十分に品質管理された生コンによる打放しであっても色調に限っていえることは、セメントや骨材の産出地域により千差万別でである。これは打放しそのものが異なったものであることを意味している。その上各種多様な添加物や打放し時の施工方法と環境条件においても著しい違いがある。
  このような背景を十分把握しないまま、また確立された手法によらない補修のため期待はずれとなる。設計者の多くは打放しコンクリートは補修できないものとあきらめ、どのような補修をしても合わないし、何年か後には補修モルタルが変質して跡がはっきり出てしまう。また色合わせは地肌を隠蔽してしまうのでやめた方がよいといわれている。一般的に行われている色合わせはセメントノロを刷毛引きして地肌を同一セメント色にしてしまうことである。打放しは地肌そのものが仕上げであり、表層に人為的な補修、隠蔽しないことが必要条件である以上、そのような考え方があることは当然である。これは、20〜30年前の補修結果がそのようになっていることに原因がある。しかし、現在の技術は過去の失敗を教訓として改良を加え改善されてきていることに注目されたい。
  さて、コンクリートとモルタルはまったく異質なものであることから、コンクリートの中性化に伴う表層の劣化や汚れの付着等も異なってくる。例えばコンクリート躯体表面の緻密さ等の違いによる水分の浸透、汚れの付着等は雨天の日に観察するだけで理解できるところである。特記すべきことは、通常使用されているモルタルや補修用モルタル等は水分に接することにより化学変化を呼び起こし変色することである。モルタルの変質を防止するには躯体コンクリートと同様な強度、緻密性など近い性能を付与した補修モルタルを使用する。
  補修用モルタルとして実用化されているものとしては特殊アクリル樹脂系のポリマーディスパージョンを調合した調合樹脂モルタル(NY−調合樹脂モルタル20%)がある。この補修用モルタルは川砂を使用したプレーンモルタルに比して圧縮強度、曲げ強度が大きく、中性化速度、付着強度においても優れており、吸水率も小さい。
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  以上のことから打放し仕上げには次のような性能が求められる。
①補修モルタルは可能な限り、打放しコンクリートの表面の強度、緻密性に近い性能を保持した材料であること。
②コンクリートの表層地肌に相似した調合色が出せる補修材であること。
  しかし、打放しコンクリートは物件毎に型枠やコンクリートの調合も異なっているため、打設されたコンクリート表層地肌がすべて異なっている。そこで補修モルタルは物件ごとにコンクリートの色調に合わせ、その都度色違いが生じないモルタル調合をすることが大切である。まず補修箇所周辺の色調に合わせるため、白色セメントをベースにポルトランドセメント、硅砂、膨張性添加物にカラーコートを少しずつ加えながら躯体との色合わせを行う。色調のベースが定まったところで、合成樹脂エマルションを添加混練する。注意しなければならないことは、調合モルタルはあくまで補修箇所周辺の打放しの表層に合わせる必要があり、別の箇所にはその都度面倒でも再調合する心遣いが大切である。
  打放しコンクリートの補修は、結果的にはベースとなる補修モルタルが前述の性能を具備しているか否かで決まるといえる。過去の補修後追跡調査の結果、付着性、強度、緻密性の低い調合モルタルによる補修は吸水率が高く、早いものでは補修後1週間程度で毛細ひび割れが生じ変色し、エフロレッセンスの流出を招いている。

 今回は長い文章におつき合い頂き、ありがとうございました。区切りよく終わらせるため長くなってしまいました。

 さて次回は「建築知識」1989年7月号、特集:RC打放し監理術、「打放し・補修テクニックとメンテナンス」の3回目「補修のやり直しはきかない」をご紹介します。

 さて、この年1989年の重大トップニュース(2)は、何と言ってもこれでしょう!日本歌謡界の女王「美空ひばり」が6月24日、間質性肺炎による呼吸不全のため死去しました。日本人の心を歌い続け戦後歌謡界を常にリードし、女王と呼ばれるにふさわしい存在でした。享年52歳でした。故美空ひばりの代表作は「悲しき口笛」(1949年)、「リンゴ追分」(1952年)、「柔」(1964年)、「悲しい酒」(1966年)等があります。
ところで八代亜紀が歌っている曲「舟唄」ご存じですか?作詞者である今は亡き阿久悠さん、本当は美空ひばりさんに歌ってほしかった曲だったとか!なるほどうなずけますね!


それでは次回をお楽しみに!
by pikayoshi72 | 2008-08-11 06:52 | ブログ


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