「打放しコンクリートと共に」 その(79)

 今回は月刊建築仕上技術2000年7月号工文社創立25周年・創立300号記念企画「新・リニューアル市場の創出」、「3.外壁リニューアルのための技術開発動向」を2回に分けご紹介します。
本日は前編「築後の維持保全の現状」から「STEP2」までを』ご紹介します。
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 脱型した打放しコンクリートは、躯体そのものが仕上げであると同時に仕上げ表層面は、直接多様な環境作用を受け次第に劣化へと繋がっていく。
 施工者から所有者への、竣工後の打放しコンクリート仕上げの維持保全に関する具体的なマニュアルなどは用意されていないことがほとんどである。ある日突然頭上よりコンクリート片が剥落したなど、それを切っ掛けに表層面の汚れの付着や漏水などの不具合の顕在化が引き金となって安全性と住環境の美観の低下が認識され、維持保全への関心を目覚めさせ、補修・改修工事の端緒となっている。

1.築後の維持保全の現状
 1978年2月より1999年末までの22年間に小社が改修工事した打放しコンクリート仕上げ物件は588件である。これらの打放しコンクリート仕上げの改修に至るまでの維持保全の経緯及び実状を追ってみた。

2.経緯と実状
 冒頭記述した様に安全性と住環境の低下に起因しての調査依頼が維持保全へのスタートである。調査に先立ち所有者に築後どの様なメンテナンスをしたか聞いたところ、コンクリート片の剥落による人身事故が心配される事態となって、はじめて維持保全の重要性を認識したまでで、築後、現在まで一切手を付けたことがないと言うケースがほとんどであった。いわゆる無関心のフリーメンテナンスである。
 一方、設計者・施工者による維持保全に関する日常的なケアや予測される劣化症状など具体的なアドバイスや改修例などの説明は少なく、その都度、発生した不具合には取り敢えず応急手当程度に留めているのが実状である。所有者の一般的な認識としては“打放しコンクリート仕上げは堅固で劣化損傷など次世代の問題で念頭にない”と言ったところである。どの様な建築物であっても劣化損傷は避けられないもので、定期的な保守点検は不可欠である。この点打放しコンクリート仕上げ特有の表層面の意匠性や耐汚染性など、保護するための健全な維持保全対策は、今日の低成長時代にあってはより重要であり資産価値の点から言っても今後の課題である。

3.経過年数と劣化症状
 築後、経過年数の短いものでは5~7年以内で改修を実施している。その他物件は築後15年~20年経過後が主流を占めている。
改修動機は・汚染物の付着が目立ち始めた(5~7年以内の施工物件)
・ひび割れからのエフロレッセンスの析出と漏水
・鉄筋の露出と錆汁の付着
・コンクリート片の剥落
などが主なものである。かぶり厚さ不足による鉄筋の錆化膨張と、それに伴うコンクリート片の剥落は居住環境の安全性が阻害され、同時に美観の低下が追い打ちをかける。この様な症状の発生は、打放しコンクリート仕上げの劣化を示す徴候で、加速度的に不具合箇所が拡大する前兆でもある。

4.築後の維持保全の前提
 維持保全の前提として考えられるのは、健全な打放しコンクリート仕上げであること。そのためには企画・設計の段階で、関係者による打放しコンクリート仕上げのライフサイクルの設定が求められる。

5.打放しコンクリート仕上げのライフサイクルの提案
 打放しコンクリート仕上げの維持保全の課題を解決する案として次のように提案する。
 美観と耐久性を確保するための表層面の仕上げを設計・施工段階より明確にし、それに対応すべき表層面の仕上げシステムを構築する。即ち打放しコンクリート仕上げのライフサイクルを設計・施工・維持保全に大別し、それに対応すべき仕上げシステムの概要を図1に示す。
 図中に示されるように打放しコンクリート仕上げを企画・設計から竣工まで施されるべき仕上げをSTEP1,築後の経年・改修期に施すべき仕上げをSTEP2とした。
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6.STEP1
 フロチャートを図2に示す、新築時の脱型時点から耐久性向上のための仕上げまで、一貫性をもたせ設計施工段階では予測不可能な不具合、豆板、コールドジョイント、色ムラなどの発生に対して合理的に対応処置するものである。最終工程の仕上げは、美観の長期的維持耐久性の向上を計る。
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7.STEP2
 フロチャートを次項図3に示す。築後の経年劣化の程度に応じて分別する。劣化が軽度の場合には汚染物の除去を主とした素地調製の上仕上げを施し耐久性を付与する。これに対して、中度・重度の場合には珪フッ化物を主成分とした強化剤をコンクリートに塗布含浸して表層面の強化を図り、次いで劣化部を充填材により処理する。重度の場合には、さらに中性化抑制剤を塗布したのちに、型枠模様を復元し、長期的維持と耐久性の向上の観点から表面仕上げを施す。
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 次回は月刊建築仕上技術2000年7月号工文社創立25周年・創立300号記念企画「新・リニューアル市場の創出」、「3.外壁リニューアルのための技術開発動向」の後編「8.築後の経緯と改修の実例」から「12.改修後の維持保全状況」を紹介します。

 さてこの年の重大ニュースは、3月8日午前9時1分頃、営団日比谷線脱線衝突事故が発生しました。帝都高速度交通営団(営団地下鉄、現東京地下鉄)日比谷線において発生した、列車脱線事故である。死者5名、負傷者64名を出した。事故発生の原因として推定されるものは、左右車輪にかかる重量の不均衡(輪重比)が30%に及んでいても放置されていたこと、事故が起こった箇所は半径160mの急カーブであるにも関らず脱線防止ガード(ガードレール)が無かったこと、などが挙げられており、複合的要因により発生した事故だとされている。そのため、いずれか1人に刑事責任を負わせる事はできないとされ、また保線関係者5名が管理限界を超える線路の狂いを放置したとして送検されていたが、不起訴とされた。

それでは次回をお楽しみに!

打放しコンクリートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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by pikayoshi72 | 2009-07-13 07:25 | ブログ


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