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「打放しコンクリートと共に」 その(71)

こんにちはpikayoshi72です。

 今回は建築技術1995年10月号、特集「コンクリート工事/困ったときのノウハウ集」、「不具合が発生したときの対処、打放し仕上げの補修」を3回に分けご紹介します。
今回は最終回「補修方法」から「大気汚染対策」までをご紹介します。

補修方法
 繰り返し述べてきたことであるが、不具合箇所の補修にとりかかる前、目前の大きな不具合に目を奪われて取り敢えず充填補修に着手する。
現場関係者の心情はよく理解できるところであるが、結果的には二度手間であるばかりでなく、仕上げのための生地肌が確保されていない状態での補修は、補修モルタルの色調合の違いを招くことになり、斫り取り再補修という最も悪い施工となる。
打放し補修は刺身料理と同じで、手を付ければ付けるほど不味くなる。
次に一般的な不具合箇所の補修方法を述べる。

工程タイミング
 補修には躯体に合わせた材料の調合と、施工手順が大切である。不具合箇所に対する十分な知識と経験をもち、それぞれの施工手順に従い施工する。
例えば、調合樹脂モルタル補修後、養生期間を長くおいたため、強度が出過ぎて第2工程である研磨修整ができず、斫り取って再度補修する羽目となる。
そのため環境作用を考慮に入れた補修後の対応処置が、仕上がりの出来不出来に大きく関係してくる。

型枠模様の造成
 補修ポイントは何といっても、不具合箇所補修後の型枠模様の復元であろう。型枠には本実型枠を始めとして樹脂塗装合板型枠、ベニヤ型枠、鋼板型枠やプラスチック型枠などがある。型枠による色調も使用型枠によって異なる。不具合箇所はこの表層模様が失われているため、補修モルタル充填成形後の重要な仕上げとして高度の技術が集中される。
型枠模様造成の色調合には、耐候性の高い数種のカラーコートに合成樹脂を添加し、しかも補修箇所周辺部の型枠模様に連結させ、復元造成し型枠模様を健全部に一体化させることである。

防水材
 打放し表層面の生地肌に防水材を塗布するが、経年後の防水性能の低下によって躯体コンクリートと補修箇所との違いが歴然としてくるケースが多い。これは補修材と躯体コンクリートの吸水性の違いから生じたもので、その防止方法として躯体と補修箇所とは別々に考え、それぞれに防水材の塗布量、塗布回数などを考慮し施工することである。

表情を変えない
 最近は酸性雨が示すように、大気汚染が打放しに対し汚染物の付着と劣化を促進させている。これに合わせて、従来にはない高耐久性の塗材が採用されている。代表的なものに、超耐候性防水材としてフッ素樹脂やアクリルシリコン樹脂などがある。この種のクリアタイプの防水材は、補修箇所を生地肌と一体化させることが困難で、溶剤系のクリア塗膜防水は打放し生地肌を濡れ色にし、しかも補修箇所を歴然とさせ意匠性を著しく損なうため、着色して補修箇所をぼかす方法を試みている。
このため無色透明の浸透性吸水防止材が多く使用されているが、長期性能に乏しくしかも強い風雨には対応し得ず防水性能は低下する。強靱な透明塗膜で、生地肌に変化を与えない超耐候性防水塗膜材による防水性が、打放しには必要不可欠である。
 なお、打放しに採用される型枠はさまざまであるが、本実型枠とベニヤ合板型枠は、仕上げに艶は禁物である。一方樹脂塗装合板型枠と鋼板型枠は艶が特徴となっている。しかし、この艶も型枠脱型後数回の降雨に接するだけで半減する。このため同一建物の降雨に接する外部は、艶が消失し内部と異なった打放し仕上げとなる。
 この対策は、艶が消失しないうちに防水処置をすることである。なお、消失した艶の再生は可能であり、同時に防水性も付与することを付け加えたい。

大気汚染対策
 フッ素樹脂やアクリルシリコン樹脂による打放し仕上げ防水塗材は、超耐候性保護塗材として華々しく登場して以来10年になろうとしている。
浸透性吸水防止材(撥水剤など)にかわる夢の仕上げ防水塗材であったはずであるが、実用化には一部の特許技術による施工を除いては、打放し生地肌を濡れ色にしコンクリートの色合い、質感や意匠性まで損なわれるなどの諸問題が表面化してきた。
また、大気汚染対策の切り札ともされ期待されたフッ素樹脂は、汚染物が付着しやすいというおまけまでついて迷走中という状況である。
コストが安い、施工が簡単という特徴を生かして打放しに浸透性吸水防止材を塗布されているが、最近の大気汚染に伴う酸性雨によって予想を超えるコンクリートの中性化が進み、防水性能の短期喪失は打放しコンクリートの劣化に拍車をかけている。
大気汚染や酸性雨による汚れの付着は、浸透性吸水防止材のもつ撥水性で打放し生地肌の雨水をはじくことにより、汚れの付着を防止できるとされていたが、大気中の汚染物の主役とされる自動車の排ガスなどの油性の雨はむしろ汚れを促している。超耐候性のフッ素樹脂が親油性のため雨水に含まれている油性の汚染物の付着を招いているとも言われている。
 そこで登場したのが親水性高分子防水材で、塗膜表面が親水性(撥油性)であるため、油性の雨水があたっても塗膜表面の汚れを抱いたまま流下して汚れが付着しにくい特徴をもっている。
親水性(撥油性)の防水性能付与した超高耐久性低汚染型エマルションによって打放しコンクリートの美観と耐久性付与が可能となり、これからの打放し建築の保護対策に寄与することが期待される(写⑩)。
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 次回は月刊建築仕上技術1996年10月号、特集「打放しコンクリート仕上げに関する技術体系」をご紹介します。

 さてこの年の重大ニュース、11月1日、東京臨海副都心と都心部を結ぶ新交通システム「ゆりかもめ」が開業しました。新橋-有明間を無人運転する画期的なシステムで、ゆりかもめが開通することにより国際展示場への交通の便が非常に良くなりました。

 それでは次回をお楽しみに!

 打放しコンク リートについてもう少し詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
by pikayoshi72 | 2009-05-18 07:18 | ブログ


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